2006年10月29日 大峯奥駈”修験の道”を歩く    

奥駈道の雰囲気を味わいながら、大峯山系のアルペン峰”大普賢岳”を歩く

この地図の作成に当たっては、国土地理院長の承認を得て、同院発行の数値地図50000(地図画像)及び

数値地図50mメッシュ(標高)を使用したものである。(承認番号 平18総使、第582号)

 
和佐又山ヒュッテ〜大普賢岳〜弥勒岳〜国見岳〜七曜岳〜
無双洞〜和佐又山のコル〜和佐又山ヒュッテ   (7時間30分)  

大峯山脈の北の端にある桜の名所、吉野山

ここにある修験道の総本山、 金峰山寺から

熊野本宮大社まで100km余に及ぶ奥駈道が続いている

日本最古の修験道である大峯には「大峯七十五靡(なびき)」と呼ばれる 行場があり

この奥駈道は世界遺産に登録されている  

昨秋、金峰山寺から青根ヶ峰まで歩き、修験の道の一端に触れたが

紅葉 する尾根を熊野本宮まで駈けてみた〜い(ちょっと無理か〜) という事で

大普賢岳から七曜岳までの奥駈道をほんの少しだけ歩いてきました

 

大阪で用事を済ませ近畿道に乗ったのが6時頃

橿原辺りからポツポツと雨が 降り始め

和佐又山ヒュッテへの林道に入った頃は大雨

ライトに照らされた目 の前を鹿が横切った時は、ドキッ!としましたが

まもなく、ヒュッテの灯りが見えほっとしました

木の香り のするお風呂で温まり

ブルートレインを思い出す三段ベットで朝までぐっすり。

早朝、空には星が・・・ラッキー♪

和佐又山ヒュッテ 6時10分出発

お世話になったヒュッテのおばさんに「この辺に熊はいないの」と聞くと

「まぁ、会ったら、 こんにちは〜って言うとったらええがね」と笑いながら見送ってくれた

帰りに、行者還岳登山口を通った時に解ったんだけど

車道沿いに「熊によるけが人発生」の看板が・・・知らなくて良かった

大普賢岳を見上げる見返り台地には、行尊大僧正の歌碑や

「笙ノ窟」で修行した名僧、知識人の歌碑が立つ  

歩き出してまもなく、和佐又山のコル (1240m)

コルからは無双洞への道を左に分けて、真っ直ぐ尾根道を進む

ブナやヒメシャラが色づいている原生林を抜けると

全体としては岩肌に張り付いた道が多く、滑落注意の看板がかかる

日本岳中腹(1450m)にある靡き62の行場 「笙ノ窟」  

不動明王が祀られた「笙ノ窟」は役の行者が最初に冬籠りした行場といわれている

指弾ノ窟、朝日窟、鷲ノ窟とともに修験者が参篭修行した

これらの自然洞窟群が 上北山村指定文化財になっている。

  「露もらぬ岩屋も袖はぬれけりと  きかずば いかに怪しからまし」   西行法師  

あら、西行さん。奥千本の西行庵で桜を愛でていたのかと思ったら

こんな嶮しい所 で涙を流しながら修行もしてたんですね

  日本岳の鞍部から見下ろすと、水太谷へと落ちていく沢は紅葉真っ盛り

原生林の黄葉が燃え立つように広がっている

大普賢岳から山上ヶ岳へ縦走するという単独行の方に

「何時もはもっと綺麗なんですよ」 と教えてもらったが、充分満足

急な梯子が続く 

「石ノ鼻」より台高山脈を望む

梯子を登り詰めると展望所「石ノ鼻」に着く

突き出た大岩の上から目指す大普賢岳を 見ると東面は薄っすらガスに包まれ、

振り返えれば、4年前に歩いた大台ケ原のたおやかな 稜線が続いている

展望を楽しんだら、また急登

登山道脇はシャクナゲが目立つが、春に歩くのも楽しいだろうな  

小普賢岳(1640m)のコル  

小普賢岳のピークは踏まずにその肩を越え鞍部に下る

ジグザグに登っていくと大峯主稜 の奥駈道に合流する

ここから左に尾根を進めば小潅木の茂る大普賢岳頂上

念願の大峯奥駈道〜♪  

  役の行者以来、1300年の歴史を持つ山岳古道「奥駈道」

8時25分 大普賢岳頂上(1780m)

爽やかな挨拶を交わした、和歌山高校総体練習?の

高校生も今日は同じコース だそうで心強い

左 稲村ヶ岳(1726m)  右 山上ヶ岳(1719m)

蔵王権現を祀る修験道本山・大峯山寺の山上本堂がある山上ヶ岳は

今も女人禁制がしかれ、頂上に至る尾根の各所に女人結界門がある

10年ほど前、女性がレンゲ辻の結界門を強行突破したという報道があったが・・・

無理せずに、禁制解除を待って、女人修験道の山・稲村ガ岳で我慢するわ

山上ヶ岳は、テレビ放映で有名な「西の覗き」で

グランパに「奥さん大事にするか?」「ハイッ!」と 荒行してきて貰おうかな

奥駈道を目で追っていくと1546mと標高は高くないが

その峻険さに役の行者も引き返 したという

行者還岳のピークが飛び出ている  

水太覗(みずふとのぞき)より大普賢岳を振り返る

  垂直に切れ落ちた水太谷を覗き込むと、深いV字谷は秋色に彩られてとても綺麗

ミヤコザサとブナの快適な奥駈道  

「ずっと、こんな快適な道だったら修行にならないよね」

「心配するな。もうすぐ難所続きじゃ」なんて変な会話しながら

点在するブナを縫いルンルン気分で駈けていた

弥勒岳 (1690m) 

国見岳(1655m)  

大普賢岳、小普賢岳、日本岳と鋸歯状の稜線が続く  

緩やかにアップダウンを繰り返えすと、難所が現れる

「内侍落し」の岩鼻や、木の根を掴んで滑り下りた「薩摩ころび」等と

物騒な名前が付いているが、昔は嶮しい難所だったんだろうな

でも、今は心配要らないわ

鎖が つけられていて、何とか落ちずに済みました

  鎖場を過ぎると、黄葉に囲まれた小広い稚児泊ノ宿跡へ着く

テン場には丁度よさそうだけど

何処かのHPで、寝ていたら鹿の訪問を受けたと書いていたわ  

苔むす巨岩が点在するしっとりとした日本庭園  

原生林に囲まれた二重山稜の中央が窪地になっている七ツ池

覗き込んだが、池というのに水は無く シダが茂っていた

アラ、また鎖だわ、しかもダブルで・・・

只今修行中とはいえ、今日はこればっかり

そろそろ飽きてきたなぁ

10時20分 七曜岳頂上(1584m)

狭くて見落としそうな七曜岳の絶頂から大普賢岳、小普賢岳、日本岳の鋭鋒を

見ていると何処からか「ヴォ〜〜ヴォ〜」と法螺貝の音が響いてくる。

まさしく修験の道。音響効果抜群だわ

標識が「こっちも歩かない?」と誘っている  

南へ稜線を進み「奥駈道」と書かれた立派な標石の所から

奥駈道と分かれて無双洞へ下る

木の根がはう急峻な尾根

梯子や木の根の尾根道を縫い下って行くと

落ち葉でフカフカの歩き易い道に出る

木の間から大普賢岳を望む  

尾根を左に外れて、急坂を無双洞へ下る

大普賢岳で一緒だった高校生のグループは勢いあまって

よく転んでいたけど、滑って 下ったほうが早そうな急坂だわ

瀬音に混じって話し声が聞こえ出したと思ったら

沢山の人が寛ぐ無双洞が見えて来た

落石に注意しながら、慎重に下る

11時30分 無双洞 (1003m)

無双洞は石灰岩の岩窟で地下水が湧き出ている

瀬音を聞きながら、ヒュッテで作って もらったオニギリを食べ

これからの急登に備えてゆっくり休む  

11時50分。さぁ、登り返しが待っている、重い腰を上げて歩き出す  

滑を這うように流れる天ヶ瀬川  「水廉ノ滝」  

名水の山と言われている大峯山脈

「日本名水百選」に選ばれている洞川温泉の 「ごろごろ水」は有名だが

豊かな降水量が大地に浸透して、至る所に美味しい湧き 水がある

沢を流れる水量も豊富で清々しい

もう、最後の鎖よね〜

アングルや鎖がつらなる岩の斜面を垂直に攀じ登っていくと

途中に「底無井戸」の指標が有る

地面にぽっかり開いた穴を覗いてみたが、恐ろしいくらい深くて底は見えない

それはそうだわ底無井戸」だもの

 「お疲れさん」と母なるブナが迎えてくれる

深い原生林に包まれると、急登の疲れも癒されるわ

大自然の霊気を感じながら、長〜いトラバース道を歩いてやっと和佐又山のコルに着く

後は、朝登ってきた道を下って和佐又山ヒュッテ着 1時40分

 

毎年7月12日から9日間に及ぶ「大峯奥駈修行」は

吉野山の山下蔵王堂を出発し、 熊野へ駈け抜ける

今回は、難コースと言われている稜線をほんの少し歩き

脈々と受 け継がれてきた歴史を感じながら、紅葉と展望を楽しみ

おまけにうんざりするくらいの梯 子や鎖場も楽しみ?変化に富んだ面白い山行でした

  次の修行の山は何処にしようかな?

でも本当は修行しているんやら、遊んでいるんやら・・・  

歩いた道   ホーム