2008年10月11日〜12日 奥又白池

錦秋の涸沢、ロマン漂う山上池を巡る

「この地図の作成に当たっては、国土地理院長の承認を得て、同院発行の数値地図50000(地図画像)及び
数値地図50mメッシュ(標高)を使用したものである。(承認番号 平18総使、第582号)」

 
11日 上高地(7:40)〜横尾(10:40〜11:10)〜涸沢(14:00)                     (6時間20分)
12日 涸沢(6:10)〜屏風ノコル・屏風ノ耳往復(7:05〜8:05)〜奥又出合・奥又白池往復(9:10〜13:10)
    徳沢(14:20〜14:40)〜明神・明神池往復(15:20〜16:05)〜河童橋(16:40)     (10時間30分)

 

10年程前に、NHK「穂高連峰の四季」という番組の中で見た「奥又白池」

昔は、毎日何十人ものクライマーが訪れていたけれど

今では自然に還り、知る人ぞ知るルートになったと紹介されていた

それ以来、ロマン溢れる池の名前が頭の中にずーと残り、何時かはと思っていた

今年は、涸沢も10年に一度の紅葉情報

この機会を逃しては・・・

 と言う事で、錦秋の涸沢、念願の山上池を巡って来ました

沢渡駐車場でP泊 雨が車を叩く 

今日は涸沢までだからゆっくり準備、7時前のバスに乗る 

上高地バスターミナルで合羽を着、色付き始めたカラマツ林の中を傘をさして歩き始める 

さすがに未だ観光客の姿は見えないが、雨にも関わらず結構登山者は多い

5分程で河童橋、橋の向こうに吊尾根がデーンと・・・ 見えません

でも河童には雨が似合うかな、雨もまた良し

薄く黄葉している岳沢方面を見て、涸沢の色付きに期待が湧いて来る

  明神館でリンゴを食べながら休んでいると、雨が止んで来た 

徳沢に着いた頃は日が差し出し、山にかかっていたガスも飛び出した

氷壁の宿「徳沢園」前のカツラの大木  日に輝いて目にも鮮やかな素晴らしい黄葉

10時40分 横尾着  長〜い行列が出来ていると思ったら、何とトイレ

30分程休憩し横尾大橋を渡ると、やっとこれまでの遊歩道は終わり緩やかな登山道となる  

 迫ってくる屏風岩に圧倒されながら、ダケカンバやブナの見事な黄葉に包まれた道を歩く

12時15分 沢山の登山者で賑わう本谷橋、橋を渡れば道の傾斜も急になる 

時折強く吹く風に、木々の葉っぱが舞う  もう少し頑張って散らないで!

下りて来る人も多く、渋滞気味  皆さん挨拶疲れか 余り声も聞こえない

カールの全貌が見えて来たら、あと少しでヒュッテ

この辺り、夏は雪渓で覆われ、道沿いに可憐な花が咲き目を楽しませてくれる

涸沢直下は紅葉真っ盛り、真っ赤なナナカマドが歓迎

振り返れば、屏風の耳が存在をアピール 明日はあの天辺に立ち、大展望満喫〜  ワクワク

雨に濡れたナナカマドの赤い実は、まるで宝石の様な輝き、綺麗〜

見上げれば、北穂の荒々しい南稜が迫る

  明日歩く予定のパノラマコース分岐を見て、右に行けばヒュッテ

2時 大賑わいの涸沢ヒュッテ着(2309m)

ヒュッテ入口に張り紙 「1枚の布団に3名様程のスペース ご了承下さい」

えっー、1枚に3人! 噂に聞いていたけど、どうやって寝るの?

取り敢えずザックを置きに部屋に入ると、ストーブが焚かれていて温かい

豪華絢爛に装う穂高、これぞまさしく「日本一の錦繍」

あちらこちらから、歓声が上がる

カールの紅葉の見頃は、3日間だとか   どんピッシャリ!

飽かず眺めていたら少し冷えて来たので、ヒュッテ名物おでんを食べて温まる

夕食まで時間もたっぷり有るし、ゆっくり涸沢を散策

ヒュッテ西側の池ノ平に、雪渓が消えた秋にだけ出来る池がある

天気が好ければ、雄大な穂高の姿がこの小さな池の中に見られるんだけど・・・

色とりどりのテントの間を縫って、小高い場所にある涸沢小屋へ向う

涸沢小屋のテラスでコーヒーを飲みながら、カールに咲くテントの花を眺める

いったい何張のテントが張られているんだろう

涸沢に夕暮れが迫ってくる

北穂を背に 涸沢ヒュッテの吹流しが勢いよく流れる

いい風が吹いているのだろう、かなり冷え込んで来た

 明日はひょっとして三段染めかな?

食事の後、テラスからテン場を見下ろせば沢山のテントに灯が灯り幻想的、まるで夢の世界

部屋に戻れば、寝床確保の現実の世界が待っていた

同部屋で妙な連帯感が生まれ和気藹々、中には一枚に3人を体験したかったと言う変わった人もいたが

あーでもない、こーでもないと、全員横になってみるが絶対に無理! 最低一人は、はみ出してしまう

先程は外の寒さにテントの人に同情したけれど、テントの方が絶対楽よ

部屋をとびだし 乾燥室の片隅にかろうじて寝床を確保したものの

寝返りもうてず、完全に寝不足!

 

2日目

朝3時頃、外に出れば満天の星

北尾根の上にオリオン座が輝く、もう冬が近いんだ

奥穂と北穂の中腹に灯が見える  あらっー、もう登り始めているわ

涸沢の朝は、主稜線のモルゲンロートで明ける

雲が薄桃色になって来ると、テラスを埋め尽くした人々は寒さも忘れて、赤く染まり出した穂高に釘付け

此処での御来光は、全員が一様に西を向く

もう少し陽が高くなるまでこの景色に酔いたいが 今日は伝説の山上池が待っている

6時10分 段々明るくなって来る涸沢に、後ろ髪を惹かれながら出発

ヒュッテの石段を下るとすぐ パノラマコース分岐

入口に 「危険箇所が多いので健脚者のみ」と注意書がある

危なかったらUターン、気を引き締めて念願のパノラマコースへ入って行く

5分程歩いた所にある涸沢のビューポイントで、数人がカメラを構えている

暫く展望を楽しんでいると、朝焼けの色が変わってきた

それにしても、凄い人とテントの数

前穂北尾根の北面をトラバース気味に屏風のコルに向って徐々に高度を上げて行く

岩場にはロープが渡されている所もあるが、ゆるゆるであまり頼りにはならない

こんな所で団体さんとの離合は時間がかかるだろうな

昨夜は冷え込んだので、岩陰にツララが出来ている

涸沢が、段々遠く小さくなって来る

ミヤマダイコンソウの草紅葉に彩られた岩場を歩いて行くと、「屏風ノ耳」が近付いてきた

横尾尾根の後ろから槍ヶ岳がちょこんと顔を出し 「おはよう〜」

林を抜け出すと、前穂北尾根の最低コルに出る 

 遠く甲斐駒の左にどっしりと構えているのは 「あっ、富士山!」 

此処から右に進むと、八峰、七峰・・・・終点は エッーー!前穂頂上! 「行ってみる?(笑)」

7時05分 屏風のコル着 ザックをデポして耳までご挨拶

ダケカンバの林を過ぎると、岩石帯に出て展望抜群!

窪地にある小さな池が凍っている

サイノカワラへの道を右に分け、ハイマツのヤセ尾根を進む

7時25分 屏風ノ耳 (2565,4m) 360度大展望 

ポケットに入れてきた山名ペーパーをケルンの上に置き、記念撮影

どっしりと構える穂高連峰の北には、南岳、稜線を辿れば俊英・槍ヶ岳が聳えている

屏風ノ頭はパスし、此処からコルまで引き返す

8時05分 屏風のコルから梓川を見下ろしながら奥又出合まで下って行く

ふむふむ あれが「慶応尾根」か そういえば屏風の耳から南東に派生する尾根が「早稲田尾根」

あらら、穂高でも早慶戦やってるわ 神宮だけにしてよ

ほんなら、このガレ谷「西高ルンゼ」とでも名付けようかな

下り始めて暫くして、上がってくる人に会う

「早いですね 何時に出られたのですか?」 「徳沢を5時です」

かなり高度を下げた所で前穂東壁を見上げる

奥又白池は、左のこぶの向こう側辺りかな?

奥又出合まではまだまだ高度を下げて行くけど 登り返しが大変そう

まぁ、先の事は考えないで景色を楽しもう

ダケカンバの黄葉が綺麗〜

9時10分 奥又出合(中畠新道分岐)着

腹が減っては何とやら・・・ヒュッテで作って貰ったお弁当を食べ、元気百倍  

9時30分  荷物を纏めたザックを一つデポして、中畠新道を歩き出す 

池まで、標高差約600mの急登 「気合ダー」

ガレ場を5分程登った所から、右の奥又尾根へ取り付く すぐ熊本登高会のレリーフ

尾根の左には松高ルンゼが落ちている (真っ直ぐルンゼ直登も出来る)

尾根を歩いていると、ルンゼ上の方から小石が転がる音が聞こえて来る   

怖っ!  ルンゼ直登はやっぱり気持が悪いわ 

何時もはうっとうしいスズタケも、滑り易い急坂では手がかりとなり有り難い

木の根 岩角 スズタケを掴み 喘ぎながら登る

道はしっかりした一本道、迷う事は無い

 スタイルの良い常念岳を見ながら、一寸一休み

稜線右方の小さな突起は蝶ガ岳三角点かな?

前穂東壁を見上げるガレ場で、二人の登山者が休んでいた

池に寄ってから、前穂五・六のコル(2730m)を越え涸沢へ下りるそうだ

荒々しい四峰、五峰正面が迫ってくる

此処から、潅木帯を抜けると一面お花畑の跡

五・六のコルへの道を右に分け 斜面を左方にトラバースすれば池は近い

11時20分 目の前がパーと開け、念願の奥又白池に飛び出した(2480m)

池畔に落葉まじかのナナカマド、水辺にテントが一張り、遠くに八ヶ岳、 南ア、 富士山 

想像していた通り、此処は別天地の楽園 、桃源郷

大感動!!

峻険な前穂がその姿を写している水面は深く澄み、晩秋の佇まいを漂わせている

小説「氷壁」の中で、魚津と小坂の二人が辿った、北壁、Aフェースは何処だろう

ナイロンザイルが切れたのは、前穂頂上直下のあの辺りだろうか?

一周250m位の小さな池に山岳ロマンが溢れている

上高地の猟師たちが、又四郎岳と呼んでいた前穂

周囲の峰々が穂高連峰と呼ばれ出してから、前穂高岳と呼ばれるようになり

慣れ親しんだマタシロウの呼び名を残したいと、一字縮めて又白谷といわれているそうだ

だから、この池はマタシロウの池とも呼ばれていたとか

前穂の主「又四郎さん」ってどんな人だったんだろう?

立ち去り難い思いで、池畔から北尾根を見上げる

ヒユッテで貰ったルート図にタヌキ岩って名前の岩があったけど・・・どれかしら?

11時55分  感動の景色を目に焼き付けて、池に別れを告げる

下山の途中 上がってきていた年配の男性二人に

「後、どの位かかりますか?」と聞かれ 「1時間弱位です」と答えたら

「池はよっぽどいい所だったんですねぇ 顔を見れば判りますよ」と

どんな顔、しとったんかなぁ?

奥又尾根から見下ろすと、パノラマコースから次々と下りて来ている人が見える

1時10分 奥又出合まで下り、空になったペットボトルに奥又白谷の水を補給し、ゴツゴツした石の道を下って行く

樹林帯に入り遭難碑のケルンを過ぎ 砂防ダム沿いを歩くと 間も無く道が平坦になり、いつしか林道に出る

2時 新村橋を渡る それにしてもこの吊橋はよく揺れる

橋を渡り前穂を振り返る あの辺りが奥又白池かな 「マタシロウさ〜ん さようなら〜」

奥上高地自然探勝路まで帰って来たら、急に人が増えて来た

予定の時間より1時間早く徳沢に着いたので、ソフトクリームを食べながらのんびり寛ぐ

徳沢園の広場にもテントの花が満開   あれ? 何か足りない そうだカツラの木

何と、一日違いなのに葉っぱが全部落ちてしまっている

明神館で信州リンゴ丸ごとのジュースを飲んでから、ちょっと寄り道

穂高神社奥宮にお参りし、明神池を散策

16時40分 河童橋着 長かった〜

吊尾根を見ながら、今回の山行の満足感に浸る

でも一つだけ 稜線に雪が欲しかった (贅沢 贅沢)

河童橋からバスターミナルへ歩き始めると、長い行列が出来ていて 

「沢渡行バス最後尾はここ」と書かれたプラカードを持った係員が立っている 

そりゃそうだ 紅葉たけなわ、快晴の上高地 おまけに3連休の中日だもの

バスに乗るまで1時間、歩きより疲れました

 

小屋もテン場も人で溢れる涸沢、奥深い山中に静かに佇む奥又白池 

「現実」と「ロマン」 穂高の二つの顔に触れ、満足度300%の山行でした

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