2008年12月13日  石鎚表参道

古の石鎚表参道「黒川道」、「今宮道」を歩く

GPSによるトラックログ(カシミールソフト使用)
「この地図の作成に当たっては、国土地理院長の承認を得て、同院発行の数値地図50000(地図画像)及び
数値地図50mメッシュ(標高)を使用したものである。(承認番号 平18総使、第582号)」

 

河口〜黒川道登山口(虎杖)〜黒川集落跡〜行者堂〜成就社〜今宮集落跡〜今宮道登山口(河口)

                                                   (7時間15分) 

 

1968年に石鎚登山ロープウェイが出来る以前

石鎚山の表参道として賑わったのが、今宮道と黒川道だった

今宮道は、西条方面、大保木(おおふき)からの登山道として前神寺の信者が

また、黒川道は小松方面、大頭から横峰寺の信者が利用したそうだ

二つの参道は常住(成就)で合流する

2年前に今宮道を歩き、何時かは最古の表参道・黒川道もと思っていた

 

加茂川に架かる三碧橋を渡り、道沿いの空きスペースに駐車

橋の袂には「三碧峡」の石碑が建つ

三つの碧とは、渓谷を彩る緑色片岩、流れる水の青、茂る木々の緑だそうで

平成3年3月、「西条市名水・名木50選」に選ばれている

7時28分 今宮道登山口・河口(こうぐち 標高約200m)を出発

横峰寺別院側を通り、黒川道登山口のある虎杖(いたずり)へ向う

河口バス停近くには、その昔は石鎚参拝客で繁盛したであろう旅館が建ち並ぶ

7時40分 黒川道登山口 

「成就まで6,0km(実測5、75km) 遍路道を守る会」の標識が立つ

「この道については数箇所にわたって崩壊しており、危険につき通行を禁止します(西条市)」

の注意書き、危ないようなら引き返す事にして出発

昭和25年には18世帯81人が住んでいたと記録に残っている虎杖集落

ルビがないと絶対「いたずり」とは読めない、イタドリならばタシッポの事だけど

どういう由来なんだろう、気になるなぁ

他に虎の字が付く地名は 今治市壬生川 の虎ケ鼻(とらがはな)

津田町讃岐津田の虎カ鼻(とらがはな)、白鳥町三本松の虎丸山(とらまるやま)

須崎市土佐高岡の虎木岬(とらきみさき) 、佐川町越知の虎杖野(いたどりの)

など四国にあるらしいが・・・虎の話は再来年、鬼が呆れます

8時03分 急斜面をジグザグと進んで行くと「成就社へ5.0km」の標識

此の後も、500m毎に遍路道を守る会の道しるべが立つ

廃屋を過ぎると、苔むした石垣が続く

8時08分 三界地蔵

自然石に不動明王像が彫られ、石鎚山 施主 部落青年会と刻まれている

昭和25年には、黒川集落に26世帯、162人が住んでいたそうだから

道行く人の守り本尊だったのかもしれない

僅かに石畳が残り、古道の雰囲気が漂う

確か此の辺りに小学校跡がある筈だ

この辺りが、上黒川村(現西条市小松町石鎚)だろうか

昔は約20軒ほどの旅館があったと記録にある

横峰寺を経て、黒川道を歩いて来た信者は、この黒川宿で一泊

往時、石鎚山中腹の常住(成就)に旅客は泊まれなかったそうだ

黒川集落跡から登山道は 黒川谷に沿って源流点成就社迄徐々に高度を上げて行く

谷に沿ってという事は展望が無いという事、見えるのは対岸の今宮道がある尾根だけ

黒川谷に流れ込む小さな谷を拾いながら、ロープ箇所を慎重に渡る

谷沿いの道は荒れやすい 保守してくれている方に感謝

9時03分 「成就社へ3km」の標識

谷から滝が流れ落ちる音が響いて来出した所で、やっと半分

此の手前辺りから、崩壊箇所が増えて来る

平成16年の台風21号による大災害の痕なのか、まだ生々しい

道が切れ落ち無くなっているので、谷に一旦下りて、対岸に渡る

水が少なかったので良かったが、もう少し水量が多ければ無理かも

またまた真っ直ぐに進めそうにないので、標識に従って高巻きする

カツラの古木が頑張っている急斜面、滑ればこのまま黒川谷へ

春にはユキワリイチゲやヤマシャクヤクが咲きそうだけど

しんどくて楽しむ余裕はないかもしれない

9時38分 「成就社へ2、5km」の標識

500m進むのに35分もかかっている!

古道ロマンどころでないわ

往時が偲ばれる石積みが残ってもいるけれど、かなり傷んでいる

あらら、完全に道が飛んでしまって無い!

直ぐ向こうに登山道が見えているんだけど・・・また、高巻きしなくちゃ

此処の迂回が、手掛かり、足掛りが無くて一番しんどかった所

上からストックで引っ張り上げて貰って何とかクリアーしたが

こんな道、よくスイスイ歩けるもんだわ

「あなたとは違うんです!」

10時09分 大岩が現れ、やっと行者堂跡に着いた

竈もひび割れ、廃材が散らばっていたが、石鎚大権現像は往時のままの姿だった

小さな滝が水音を響かせて、幾つも落ちている

巡拝の道者は、此処でも垢離取をし石鎚山へ向ったのであろうか

黒川谷遡行も大詰め、すり鉢の底の様な場所に突き当たる

周りは岩の壁、大きな滝を見ながら急坂を登ると渡渉点

ステンレスの橋?が流され、其のままになっている

取水堰を越え、踏み跡を辿って行くと、もう一つの取水堰に出て行き止まり

アララ

引き返して、一休み あーぁ、10分程ロスしたわ

急にお腹が空き、もう力が出ない

滑り落ちる滝を見ながら 参道でハムサンドのコーヒータイム

10時51分 滝から引き返すと、直ぐに広い作業道に出会う

此処から先は、もう崩壊場所は無さそうね

11時10分 リフトに突き当たる

黒川道はリフトを潜って真っ直ぐ成就社に向っているが

取り付きに、「数ケ所にわたり崩壊しており、危険につき通行を禁止します」の看板

「もう崩壊地はイヤ!行きたければ一人で行って!」

と、作業道を前神寺奥之院へ向う

石鎚スキー場は未だオープンしていない

こう暖かくては雪を作るのも大変だろう

鳥居越しに、凛と静まり返った佇まいの石鎚山が聳える

石鎚を見ると、弥山まで行きたくなるが今日は成就まで

11時36分 成就社着 (標高1400m)

雪も無ければ、人気も無い!こんな静かな成就は初めて

勿論、登山者は皆頂上に立っている時間 

今日は天気が好いから頂上は大展望だろうな、目的地が成就なんて変な山行

白石旅館でうどんを食べながら、誰にも会わなかったと話すと

「黒川道は、年に数人しか歩きませんよ」ですって!

喉が渇いていたのでお茶を何杯も飲んでいたら、みかんをサービスしてくれた

12時09分に成就社を出発、参道を下り前神寺奥之院で左折

黒川道と分かれ、もう一つの表参道、今宮道を下る、河口まで6kmの表示

少し登り返すと目の前に広々としたスキー場が広がる

向かいに聳える瓶ヶ森、氷見二千石原に全然雪が見えないなんて!

ゲレンデを少し下り指標に従い左へ、リフトの下を過ぎると広い道

黒川道に比べたらこちらは高速道路

12時33分 「石鎚山三十六王子社 第十七番・女人返王子社」

王子社とは神仏混淆の時代に王子の姿で現れた神を祀った社という意味だそうだ

落ち葉の絨毯を蹴飛ばしながら歩く、いい気持〜♪

12時48分 「第十五番・矢倉王子社」

側に建物の残骸が残る、ひょっとして茶店だったのだろうか?

此の辺りから、自然林から植林に変わってくる

いい雰囲気の石畳が続く

1時24分 今宮の大杉

「乳杉」とも呼ばれている樹齢800年の大杉は、今にも枯れそうな気配

伐り出されたスギが積まれているのを見ながら下りて来ると

あれ、こんな所まで林道が延びて来ている

2度目の林道を横切って下って来ると、立派な石垣の上に廃屋が残る

ちょっと上って行ってみると、2年前と少しも変わっていない様子

祠には、真新しいハナシバ?が供えられていた

3度目の林道に当たると、くろもじさんの「宮の森」を見ながら、暫く林道歩き

1時52分 河口への道標があり、川向に、二ノ嶽目鼻石の大岩が霞む

山主さんは留守の様だけど、勝手にお邪魔する

斜面をほんの少し駆け上がると、今宮道が現れた

参道を歩いて「宮の森」に入って行くと

雰囲気のある大岩が現れ、谷にはコンクリート橋が架かる

林道を造る時に、参道の取り付きが削られもう歩けなくなっているけど

歴史ある表参道が埋もれてしまうのは、なんだか勿体ないような気がする

道端に座って、りんごを食べながら休憩

2時13分 重い腰を上げ、再び今宮道を下って行く

2時29分 御堂

御堂の後ろに、「第七番・今宮王子社」、「第八番・黒川王子社」があり

突き出た大岩まで進むと展望が開け、下には黒川谷が見える

ひょっとして、覗きの行場だったんだろうか

大岩から引き返し、黙々と参道を下って行く

河口までは、後少し〜

2時43分 今宮道登山口着

古の石鎚表参道、行きも帰りも誰にも会わず

標高差約1200m、ピークを踏まない7時間強の山行でした

 

霊峰石鎚への2本の参拝道

初めて歩いた黒川道は、瀬音を聞きながら自然林の多い渓谷沿いの道

今回は冬枯れだったが、新緑や紅葉の時期に何本もの滝を見ながら歩いたら素晴らしいんだろうな

2年前に歩いた今宮道、やっぱり植林の多い道でした

どちらの参道も、宿場跡や石畳等、参拝道の面影を色濃く残し好い雰囲気

でも 又歩いてみる? と言われたら

集落跡から上の道が厳しい黒川道、道は良いけど単調すぎる今宮道

ウ〜ン、当分両方共パ〜ス

 

(参考文献 「愛媛面影」紀行 今村賢司著、 「生活のなかの行道」 西海賢二著)

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