2009年06月27日  ”霊峰白山”

白い白山、お池巡り〜

「この地図の作成に当たっては、国土地理院長の承認を得て、同院発行の数値地図50000(地図画像)及び
数値地図50mメッシュ(標高)を使用したものである。」(承認番号 平18総使、第582号)  (イメージ図です)

 

別当出合センター〜砂防新道〜黒ボコ岩〜室堂〜御前峰〜池巡り〜室堂〜黒ボコ岩〜

  砂防新道〜別当出合センター                       (9時間25分)

 

日本人はたいていふるさとの山を持っている 山の大小遠近はあっても

ふるさとの守護神のような山を持っている そしてその山を眺めながら育ち

成人してふるさとを離れても その山の姿は心に残っている

どんなに世相が変わっても その山だけは昔のままで 暖かく帰郷の人を迎えてくれる

                             深田久弥「日本百名山」

         

6月26日の新聞に、白山中腹の「百四丈滝」が掲載された

深緑に囲まれた雪渓に流れ落ちる雪解け水、その涼感溢れる光景に心が躍る

「白い白山」、高山植物の宝庫となるには少し時期が早いけれど

山上池もそろそろ雪渓から現れ始めているだろう

7月1日のお山開きに先駆けて、深田久弥ふるさとの山・白山のお池巡りをして来よう

まだ暗い中、白峰の町を抜け一路登山口の別当出合へ

(ハイシーズンの週末はマイカー規制があり市ノ瀬でシャトルバスに乗り換える)

4時30分 駐車場出発 10分弱で白山国立公園別当出合センター(1260m)

4時45分 別当谷に架かる吊橋を渡って出発

ブナやダケカンバの林の中の快適な道を歩く

まだ標高が低いため、道沿いには大型の高山植物が多い

5時20分 別当出合センターから1,5km地点にある中飯場跡(1550m)

この辺りから可憐な花が目につくようになる

ベニバナイチヤクソウ                      マイヅルソウ

ハクサンチドリ                 豪快に流れ落ちる不動滝を眺めながら石の階段を登る

崩壊が進む谷では大規模な砂防工事が行なわれている 

柳谷にかかる不動滝をズーム

咲き始めたばかりのキヌガサソウ            登山道沿いのあちらこちらで群生するサンカヨウ

お腹が空いて来たので、砂防工事の高飯場跡で食事休憩

                    6時40分 高飯場跡から少し歩くと甚之助避難小屋(1950m)が見えて来た    可愛いイワナシ

7時 南竜分岐 右へ行くと南竜山荘がある南竜ガ馬場

南竜道の途中から弥陀ヶ原へと分かれるエコーラインは、ガイドにお花畑コースと書かれている

チングルマやニッコウキスゲ等が咲き出すと、賑やかになるんだろうな

分岐で少し休み、室堂近道を左上して行く

ミネザクラ越しに観光新道の尾根が見える

別当谷トラバース道は沢山雪渓が残り、ヒンヤリした風が流れる

谷筋に群生するキヌガサソウやサンカヨウの白さが、緑の中に際立つ

雪渓が融け出した斜面には、一面お花畑が広がり、ミヤマキンポウゲやイワカガミが群生している

ミヤマダイコンソウの向こうに別山(2399m)            シナノキンバイ

白妙も いつしか暮て 花の山 (加賀千代女)

黒ボコ岩が見え出したら、三ノ越の急坂「十二曲がり」

つづら折の途中で、冷た〜い「霊峰白山 延命水」を飲み、元気いっぱい!

7時40分 黒ボコ岩で観光新道(越前禅定道)と合流(2320m)

この変わった岩は、流れ出たマグマがそのまま固まった安山岩で熱雲堆積物と呼ばれている

黒ボコ岩を過ぎると、何処までも広がる弥陀ヶ原が開け

「加賀白山ようござった」、遠くから御前峰の声が聞こえて来るようだ

水屋尻雪渓とハイマツ帯の白と緑コントラストが素晴らしい

右からエコーラインが合わさり、登りにかかる

ゴロ石の続く五葉坂を登りきると、8時20分 室堂(2488m)

収容人員750名の超大型山小屋白山室堂は、嵐の前の静けさ

8時35分 室堂白山比刀iしらやまひめ)神社にお参りして白山最高地点・御前峰を目指す

ナナカマド越しに室堂を見下ろす

高度が上がるにつれ、別山もいよいよその秀麗さを増して来る

咲き始めたばかりの真っ白なナナカマド         感激! 「黒百合は〜恋の花〜♪」

イワウメもチラホラ咲き出している

この青石が天と地の境で此処から上が天上界だとか、下界を見下ろして天女の気分〜♪

神様の遊び場と言われる高天ヶ原、ハイマツ帯が斜面を覆う    

最近、「65年ぶりに白山で雷鳥発見」というニュースがあったけれど、何処かに居ないかな〜?

山頂にある白山比刀iしらやまひめ)神社奥宮

本社は、白山信仰登山華やかなりし頃の加賀馬場にあたる石川県鶴来町にある

美濃馬場にあたる岐阜県白鳥町には、長滝白山神社

また福井県勝山市にある越前馬場の平泉寺も白山神社を名乗り、江戸時代に白山を管理していたそうだ

白山神社はこれら3社だけでなく、大正2年の調査では全国に2716社あったとか

信仰の山・白山たる所以である (馬場とは登拝口の事)

9時20分 白山最高地点・御前峰(2702,2m) 頂上一人占め〜

東を望めばどっしりと雄大な霊峰御嶽山、存在感あるわ

その左に乗鞍、槍穂が並ぶ

「白き峰に神宿る」の一念で、白山を開いたのは越前国麻生津の僧泰澄(たいちょう)だと謂われ

養老元年(717)6月18日、幾多の苦難を乗り越えて白山の頂に立ち

頂上のすぐ下、転法輪(てんぽうりん)の窟で修行を行なったと伝えられている

御前峰より大汝峰(2684m)を眺める

1億5千万年前、白山のあたりには琵琶湖の10倍もある湖があり恐竜が闊歩

それが隆起して白山の土台が出来、その後火山活動が活発になったとか

北側直下が2〜3万年前に噴火した火口で、古文書にその記録が残っている

主峰を構成する御前峰、大汝峰、剣ヶ峰は300年ほど前まで活発な活火山だったそうだ

大展望も十分楽しんだので、お池巡りに出発

天柱石と書かれた標柱を過ぎ、火口原へと下りて行く          雪渓が割れ、姿を現しはじめた「紺屋ガ池」

急坂を下りきった所にある「油ガ池」

咲き始めたアオノツガザクラの原を抜け、「油ガ池」越しに御前峰を振り返る

1042年の噴火で出来た火口「翠ガ池」、右は剣ヶ峰(2677m)の斜面

白山記によれば「ある夜、山頂の方に二人の童子が現れ、土石をなげて室を埋めた。

その時、土石を掘った跡が二ヶ所あり、その一つが翠ガ池である」と書かれている

この辺りが「千蛇ガ池」だろうか?

泰澄が白山を開いた時、悪蛇1000匹を封じ込んだといわれているが

万年雪に覆われているので、恐らく出て来れまい 「ほっ!」

最近の温暖化がちょっと気にかかるけど、でも大丈夫

もし万年雪が融けた時には頭上の御宝庫(おたからこ)が崩れ落ちて池を塞ぐそうだ

ちなみに観光新道にも泰澄が悪蛇1000匹を封じ込んだといわれている蛇塚がある

この辺りで遊歩道は二つに分かれ、下の方が花が多いらしいけどまだまだそんな雰囲気では無い

上の道を歩き室堂へ帰ることにする

大汝峰を振り返る、左に見えるのが七倉山(2557m)だろうか?

あっ、直ぐそこに池らしきが 「五色池」かな? 手前に「百姓池」があるはずだが、多分雪の下だろう

あれっ? もう一つ 「血ノ池」は?

池巡りの後 道は御前峰の西腹をトラバース気味に室堂へと下って行く

背後に別山が控えているから、室堂が引き立つわ

火山活動が無く堆積岩で出来た別山は、白山主峰群とは異なる雰囲気

ピンクが可愛いハクサンコザクラ、アオノツガザクラも咲き始め〜♪

花の名前に白山の名を冠したものは18種類と断然多く

ゴゼンタチバナなど白山にちなんだ名前も入れると30種類ほどもあるそうだ

ハクサンイチゲが未だ蕾だったのが、一寸残念かな(贅沢贅沢)

大展望を楽しみながら、広大な水屋尻雪渓を横切る

白山が、日本海や太平洋に注ぐ大河の源流だと言うのも納得

10時50分 御前峰お池を一周して、室堂に帰って来た

御前峰を眺めながら、室堂でのんびり休憩

その奥に紺碧の水を湛えた荒々しい旧火口を幾つも抱えているとは思えぬ、なだらかな山容

眺めていてそんなに強烈な印象を与える山では無いけれど

そのたおやかで優しい姿は、霊山の威厳に満ち溢れている

11時20分 室堂を後にする

満足感に浸りながら弥陀ヶ原の木道を下って行く

11時40分 御前峰も此処で見納めと、黒ボコ岩で暫く休憩

気温が上がり結構暑くなって来た

砂防新道から汗ビッショリになった登山者が登って来るが、観光新道の方はさっぱり

やっぱりまだ花の時期じゃないから、歩く人が少ないのかな?

全然人に会わないのも寂しいし、砂防新道を下ろうか

暑さの中、沢筋の雪渓から吹き出す涼風が心地好い

別当谷の雪渓を過ぎるとサンカヨウのお花畑が広がり

その向こうに甚之助避難小屋(1950m)が見え出した、やれやれ

でも未だ700m下らなくちゃ、あぁしんど

別山が視界から消え、ダケカンバやブナ林の森を抜け、谷の音が段々大きくなったと思ったら

別当谷に架かる吊橋、その向こうに別当出合センターの赤屋根が見えて来た

2時10分 吊橋を渡り、別当出合センター着

シーズン前なのでツアー登山の団体には会わなかったけれど、結構沢山の登山者とすれ違った

きっと今頃、室堂は賑わっているだろう

朝はガラガラだった駐車場が満杯になっていた

 

霊峰白山は伝説と花の山、一面に夏の花が咲き乱れるのはもう少し先だけど

それでも咲き始めたばかりの可憐な花々に出会え、感激〜! 

なにより青空の下で雪渓の中のお池巡り、四国では味わえない風景に大感動でした!

今回は、深田久弥ふるさとの山・白山の素晴らしさを満喫すると共に

わが故郷の花の百名山、東赤石山を盟主とする赤石山系への想いを新たにした山行となりました

 

下山後、泰澄が創建したと伝えられる勝山市の平泉寺白山神社へお参り

御拝殿と境内

樹齢700〜800年の杉並木に囲まれた趣のある長い石畳の参道、境内一帯に広がる美しい苔

司馬遼太郎が「京都の苔寺をもしのぐ美しさ」だと絶賛したそうだ 

拝殿側にある説明板に

 天正2年(1574)兵火にかかって焼失する以前は、正面45間という我が国最大の拝殿であった

安政6年(1859)に再建された現在の拝殿は簡素な建物ではあるが

天平時代の風情をよく残しているといわれる

寛政7年(1795)造営の御本社、御祭神は伊弉冊尊(いざなみのみこと)

全国に3000程ある白山神社の中でも由緒ある平泉寺白山神社境内は

白山信仰の中心となっていた事を窺わせる風格が漂う

今は「加賀の白山」と呼ばれているが、「越前の白山」との強い想いが伝わって来た

(参考文献  「白山を歩く」  山と渓谷社)

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