2009年08月07日〜08日 ”南アの盟主・北 岳”

日本一高い山は知らない人はいない では2番目は?

 槍ヶ岳? 立山? もし登山をしていなかったら、北岳の名前は出てこないかもしれない

富士山は別格として、北岳は3000m級の山々がひしめくアルプスの中で一番高く

 大雪渓、大岩壁、大展望、その上高山植物の宝庫と、全てに魅力がいっぱいの名山中の名山

深田久弥の日本百名山に拠れば「奥ゆかしい山である」と評されている

その昔、TV放映で見て以来

「屹と天を突くような鋭い頭角をあげ、颯爽として軽薄でなく、ピラミッドでありながら俗っぽくない。

惚れ惚れするくらい高等な美しさである。富士山の大通俗に対して、此方は哲人的である」

とのナレーションが耳に残る

その頂上から、間近に大通俗の山を眺めてみたい!、と芦安村へやって来ました

 
1日目 広河原〜大樺沢〜八本歯のコル〜トラバース道〜北岳山荘(泊) (6時間30分)
2日目 北岳山荘〜北岳〜肩ノ小屋〜草スベリ〜白根御池小屋〜広河原 (7時間15分)

 

空模様を気にしながら、バス乗合所に着くと早くも長蛇の列

「失礼します」と、声をかけて後ろに並んだら、何とreikoさんご夫妻!

山で会うのは初めて、それも四国じゃなくて南アだなんて、本当にビックリしました

 芦安発 5時10分のバスに揺られ、広河原に着いた時は本降り

6時50分 傘を差し、楽しくおしゃべりしながら歩き始める

大樺沢雪渓はうっすら見えているが北岳は厚い雲の中、明日の天気に期待しよう (諦めが早い)

野呂川に架けられた吊橋を渡ると、直ぐに広河原山荘に着く

白根御池コース分岐で、reikoさんご夫妻と別れ、沢沿いの緩い道を辿る

昨夜来の雨で水量も増しているようだ

崩壊地手前で右岸に渡り、徐々に高度を上げて行く

左岸に戻り、潅木の間を登って行くと視界が開け、バットレスの岩壁が現れた

雨に洗われた深緑の中、一頭の白い龍が大樺沢を這い上がっている

とっても 綺麗!

9時05分 雪渓の末端に着いた時、ドーンと雪渓が崩れる音が沢に響く、 怖っ!

画面中央右の小高い草付きが大樺沢二俣、トイレが設置されている

此処は左俣コース、右俣コース、白根御池小屋への分岐点、沢山の登山者が休憩中

雪渓を詰め上げた鞍部が八本歯のコル、左の尖ったピークは八本歯ノ頭かな? 

この時期にもなれば 登山道は雪渓から出ていて 左岸に付けられた夏道をグングン高度をかせいで行く

タカネグンナイフウロ越しに振り返れば鳳凰三山、一番左に花崗岩が美しい地蔵岳     

雪渓の下は空洞、ヒンヤリした空気が流れている

右を見上げれば、大樺沢に迫立つ「北岳バットレス」

北岳頂上稜線から大樺沢まで一気に切れ落ちた、標高差600mに及ぶ岩壁は

古くから多くのアルピニストに親しまれて来た、南アルプスを代表する岩場

その長大な岩稜を間近に見上げたかったけど、残念ながら上部はガスの中

バットレスとは建築用語の「控え壁」、つまり壁面をささえる岩稜をバットレスと言うそうだ

雪渓もそろそろ終わりかけた頃、登山道にゴロ岩が増えて来た

この辺りは落石が時々発生する危険地帯、バットレスから転がって来た大岩があちらこちらに目立つ

岩に当たったら大変、大急ぎで通り過ぎなくちゃ

ますます傾斜が急になり二俣を左(八本歯沢)へ、やっと安全地帯で小休止

八本歯沢から右の小尾根に取り付き、ダケカンバとハイマツの間を辿って行く

下りてくる人が「雷鳥が居ましたよ」と声をかけてくれたので

キョロキョロしながら支尾根を登って行ったんだけど・・・でもこのガスじゃあね 

雷鳥どころかバットレスも見えない

只、登山道沿いのキバナノシャクナゲやイワウメが元気を呉れる

12時 数多くのハシゴをクリアして八本歯のコルに着く

折角の展望所なのに辺りは真っ白、残念!

コルを左に行けば八本歯ノ頭、ガスの中に長いハシゴが見える

目指す北岳山荘は右へ、こちらも長〜いハシゴを登って行く

マークを辿り大岩だらけの急尾根を頑張ると、北岳山荘へのトラバース道分岐

大パノラマでもあれば足が軽いのだけど、ガスの中おまけに40日ぶりの山行

コルから分岐まで30分程だったけど、かなりしんどかった 

トラバース道は高山植物の宝庫らしいけど、花を見るのも命がけ

ガスでよく見えないが、左は急角度で切れ落ちている

先程まで前後に何人かの人が居たのに誰もいなくなった

どうして? こんなに面白い所なのに 分岐を直登して尾根にでたのかな?

ハシゴ地帯を抜けると、北岳の花を全部集めてきたみたいなお花畑〜♪

富士山が見えないのはちょっと残念だけど、時間も忘れて花々を楽しんでいると

あらら、遂に雨がポツリポツリと降り出した

お花畑の定番 シナノキンバイとハクサンイチゲ

この辺りに、北岳だけに咲くキタダケソウがあるらしいが、たぶんもう花期は終わっているんだろうな

トラバース道は北岳山荘まで続いているが、途中で一旦尾根にでたところ、風雨が強くなり写真どころでなくなった

山荘はまだかと尾根を急ぎ 鐘の立つコブを越えたらガスの中赤い屋根が見えほっと一息

1時20分 山荘に駆け込む

濡れた合羽を乾かす人で山荘はごった返し、外は相変わらず雨、おまけに風も出て来た様だ

中白根山から北岳を眺めたかったんだけど・・・

あわよくば間ノ岳までと考えていたが、こんな天気じゃ諦めるしかないわ

夕食までの長い時間を持て余していたら、なんとこの風雨の中reikoさん御夫妻が山荘に着いた

まだ少し雨がポロポロしていたが、食後外で寛いでいたら西の空が紅くなりだした

みるみるガスが飛び、富士山、北岳、間ノ岳が姿を現して来た

明日も、曇り後雨と期待出来そうにない予報だったけど、もしかしたら・・・

夕日に染まる富士山、大感動!

雲間に甲府盆地の灯りが見え、おまけに茜色の空に大きな虹がかかっている

これぞ小屋泊まりの醍醐味、今日の雨も帳消し、大満足で眠りに着いた

 

2日目(08月08日)

4時前、真っ暗い中出発する人がいる

小屋の外に出てみたがガスが辺りを覆う、やっぱり今日もダメかな

何度か山荘に出たり入ったりしていたが、5時頃になってガスがすーと飛んで行く

北岳のシルエット

右の空が赤く焼け始めている

テント泊の人も起き出し、山荘の周りが賑やかになって来た

 「昨日の予報とは変わり、今日は久し振りに晴れマークが出ました、十分楽しんで下さい」

朝食時、にこやかに話す山荘の主人の言葉に拍手が沸き起こる

日本一の山を間近にみながら、日本一の朝を満喫

最高に贅沢な時間を過ごす自分だけの空間、登山を続けて来て良かった〜♪

たおやかな山容の仙丈ヶ岳(3032.6m)が、朝日を浴びて一際大きく見える

さすが南アルプスの女王、どっしりと落ち着いた美しさだ

中白根山方面を這う雲が綺麗〜♪

reikoさん御夫妻は、間ノ岳、農鳥岳を目指して出発

途中まででも行ってみたいと歩き始めたら、北岳方面にガスがかかりだした

やっぱり最高の北岳山頂を踏むのを優先しようと、引き返す

5時55分 北岳山荘を出発       昨日駆け下った尾根を、花散策しながらゆっくり登って行く

雨に濡れたタカネヤハズハハコ               コケモモ 

トラバース道との分岐から、山荘、間ノ岳へと続く稜線を振り返る

昨日は、ガスで辺り一面真っ白、景色は勿論、山荘も全然見えず、おまけに雨が降り出し

脇目も振らず駆け下ったので意外と遠く感じられたけど、直ぐ其処に赤い屋根

百花繚乱〜♪

朝露がキラキラ輝いて宝石が散りばめられているみたい

天気は悪くないが、時折ガスが湧き上がる

シコタンソウが咲き乱れる岩場を登って行く

山頂手前から、南に延びる稜線を辿れば間ノ岳(3189.3m)、左に農鳥岳(3025.9m) 

間ノ岳右奥南ア主稜線に塩見岳(3052m)、荒川岳(3141m)、赤石岳(3120m)と続く

7時05分 南アの盟主・北岳山頂

(三角点より少し離れた岩盤上に、約80cm高い地点があることを確認した国土地理院が

2004年10月15日、北岳標高を3192mから3193mに改定したそうだ)

しかし なんで名前が単純な北岳なのか? 間ノ岳の北にあるから?

 確かに、間ノ岳は大きくて重量感があり、北岳は間ノ岳からの派生尾根上の小突起に過ぎない

やっぱり白峰三山の中心は間ノ岳なのかな?

いやいや分家が本家の標高を超えているというのも変だし

やっぱり山の魅力、知名度は一に標高、一寸の差で盟主の座を譲って貰って申し訳ない

今回の山行目的、日本一高い所から眺める富士山

最高〜♪

北岳山頂、「日本の山岳標高一覧(1003山)」に記載されている三等三角点「白根岳」(3192m)がある

西には中央アルプス空木岳、木曾駒ケ岳の頭は雲の中 北アルプスはちょっと雲がうるさい

頂上より大樺沢雪渓を見下ろす

大樺沢を辿って行くと(写真上部)、登山口の吊橋や赤い屋根が確認出来る

ずいぶん近くに見えるけど、本当に標高差1700mもあるのかな? 呼んだら聞こえそうだけど

7時40分 下山開始

両俣小屋への道を左に分けゴロ石の道を下りて行く、稜線上に青い屋根の北岳肩ノ小屋

小太郎尾根の向こうに聳えるのは甲斐駒ケ岳(2967m)

「毅然という形容に値する威と品をそなえた山容である」と、深田久弥が讃えている

チョウノスケソウ(ミヤマチングルマともよばれるそうだ)        8時20分 標高3000mに建つ肩ノ小屋

クロユリ                             キタダケソウ

肩ノ小屋のお花畑で、のんびり花散策

もう見られないかなと諦めていたキタダケソウが、数輪咲いていました〜♪

8時45分 名残惜しいけど北岳もガスに隠れ出したし、肩ノ小屋を後にする

花の時期は一瞬、今日、明日も沢山の登山者で小屋は賑わうのだろう

大荷物を下げたヘリが、轟音を響かせながら飛んで来た

分岐点までは歩き易い快適な尾根道が続く

小太郎山分岐からは、ジグザグにお花畑の中を下って行く

ハクサンチドリやイワオウギを見ながら、大樺沢二俣へ出る右俣コースを右に分け、暫くしてダケカンバ帯に入って行く

マルバダケブキ越しに大樺沢の雪渓を覗く

可憐な姿のミヤマハナシノブ              白根御池で寛ぐ登山者

ダケカンバの林の中のジグザグ道を下っていると、真下に白根御池が見え出した

花いっぱいの草スベリ、尻セードをすれば池まで一直線だわ

途中、大きなザックを担いだ35人程の高校生の掛け声が、凹状の草地に響き渡る  

   池が見え出してから結構時間がかかったけど

鳳凰三山を水面に写す(ちよっと濁っていますが)白根御池まで、やっと下りて来た

草スベリの急坂を振り返れば、先程の高校生たちが見える

 小屋前の高台から、御池、北岳を振り返る

池から右上に延びる緑の絨毯が草スベリ 

 10時25分 真新しい白根御池小屋

コーヒーを飲んでいると、次第にガスが晴れて来て見送ってくれるかのように北岳が姿を現す

北岳を見ながら山荘で作って貰ったお弁当を食べ、のんびりする

11時15分 重い腰をあげ広河原を目指す

小屋から20分ほどはウラジロモミやコメツガの原生林の中の水平道

やがて水平道が終わると、樹林帯を急下降する

木の根が這う急坂を下り、汗ビッショリになって大樺沢分岐までやっと下りて来た

ここからは昨日歩いた道、カツラやブナの林の中瀬音を聞きながらのんびり歩く

登る人、下る人で急に賑やかになる

1時 広河原山荘 、吊橋から振り返れば今日も北岳は雲の中  1時10分 バス停に帰って来ました

タクシーの出発を待つ間、次々と北沢峠から沢山の登山者を乗せたバスが着く

広河原は南アルプス北部の登山基地、夜叉神峠登山口にも沢山の車

タクシーに揺られて1時間弱、小雨が降る中、芦安の駐車場に帰って来た

 

生憎の天気の初日、展望の無い尾根歩きはつまらんわと、間ノ岳往復は中止

2日目、北岳山頂からは大展望!

間近に富士山が見えたので今回の山行は十分満足でした

大通俗とは言え、眺めるだけで富士山ほど感動を与えてくれる山って無いよねぇ

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