2010年05月29日  ”雨飾山”

頚城(くびき)山塊の西端に位置するブナと雪と大展望の名峰

昭文社「山と渓谷地図18」妙高・戸隠・雨飾

 
登山口(6:55)〜(遊歩道)〜登山道入口(7:15)〜荒菅沢(8;40)〜笹平(10:00)〜頂上(10:30〜10:50)
笹平(11:05)〜荒菅沢(12:05)〜登山道入口(13:15)〜(遊歩道)〜登山口(13:35)   (6時間20分)
 

ブナの新緑が綺麗な季節、残雪の中の芽吹きを見てみたい!

信越国境のブナの山、雨飾山(あまかざりやま 1963.2m)なら未だ雪が沢山残っているだろう

天気予報は芳しく無いが好転に期待して、一路小谷村(おたりむら)へ

糸魚川ICを下りて姫川を遡って行くが、低い雲が垂れ込めている

天に若葉を飾る山を期待していたが、これでは雨で飾られる山になってしまいそう

ガスに煙るブナ林もいいもんだ、と弱気になっていたが

小谷温泉を過ぎた辺りから周りの山々から雲が取れ青空が見え始めた、雲海だったんだ

緑の裾模様の奥に少し顔を覗かせているのが目指す雨飾山

6時40分 登山口駐車場に到着、すぐ上は雨飾高原キャンプ場

ごった返しているのかと思っていたが意外と少なく、6台が駐車

いい感じに青空が広がって来ている〜♪

6時55分 さあ出発 登山口が標高1150m、標高差約800m 順調に行けば3時間半位だろう

入り口に「この先、木道浸水により通行危険」の看板、エッー、そんなぁ

浸水場所から引き返して来たという方が「長靴を履いて、5人行きましたが・・・」と思案顔

雪解けで増水しているらしいが迂回路も無さそうだし、ここまで来たのだから泳いででも渡るわ

入り口からはゆっくり下り、河原の湿地帯に出て大海(おおみ)川の右岸を歩く 早速雪解け水の洗礼を受ける

勢いよく水が流れている木道の上をじゃぶじゃぶ歩くが大丈夫、結構防水なんだ

残雪とブナの新緑、足元には水芭蕉おまけに青空とくればまだ何か足りないものある?

モデルはもっと若いほうが・・・すみません

7時15分 ほぼ水平の遊歩道が終わり、いよいよ本格的な登り

登山口から頂上までは4400m、それを11パートに区切って400m毎に標識が立っている

ここは11分の2、登山口から800m歩いた事になる

奥ワセ沢左岸の小尾根に取り付き、ブナ林に吸い込まれるようにジグザグの急坂を上がって行く

ツツジ、オオカメノキが彩りを添え、足元では、カタクリやイワカガミが可愛い

前も後ろも、右も左も緑一色、木々の優しくおだやかな気配が満ち溢れている

時折、静かな緑の回廊に郭公の鳴声が響く

小尾根から分かれトラバース道となり、ブナ平と呼ばれるブナの純林に入って行く

残雪と芽吹いたばかりのブナ、其処には思い描いていたとおりの風景が広がっていた

生まれたばかりの瑞々しい葉っぱの間から差し込んで来る透き通った緑の光が

雪の白さを浮き上がらせ、荘厳な雰囲気が漂っている

ブナの根元には大きな根回り穴

暖かい5月の雨が幹を伝って流れ落ち、ブナの温もりとなって広がっているのだろう

ブナを見ていると、昔読んだ、水上勉の「ブンナよ木から降りて来い」を思い出す

内容は余り覚えていないが、題名がすごく印象的だった

どうしてブナって呼ばれるようになったんだろう?

沢山生えているからブンナ(沢山)=ブナと呼ばれたと、何かで読んだ様な気もするが

ブナ林をわたる風が、梢を揺り動かし、ブーンという音をたてる事からブンナリノキと呼ばれ

それが詰まってブンナノキ、さらにブナノキになったともいわれている

ブナの純林を抜けると雪で押し倒された潅木(ダケカンバ?)が目立ち始めた

浸水箇所で躊躇されていた方が追いついて来て、一緒に登る

ここは沢よね 風が流れている

前日まで寒い寒いと言っていたから、充分な寒さ対策をし、おまけにホッカイロまで持って来たというのに

寒いどころか汗びっしょり、沢を吹き抜ける風が爽やか〜

此処までは木につけられたマークやテープ、雪の上に撒かれたベンガラを辿ってきたが

この辺りは目印を探すのも一苦労 ガスが出たら不安な所だ

地図を出して確認、右の尾根を越えなければと進んでいたら、大きな赤丸が書かれた枯木が見つかる

新緑前線もブナ林限界(1500m辺り)まで到達した

 ちょっと失礼して根回り穴に入ってみる 雪の深さが判りますか?

緩斜面をほぼ水平に歩き、向こう側に回り込んで少し下れば大展望が広がってくる

目の前には大迫力の岩峰群と、急斜面を覆う白い滑り台

「アイゼンどうする?」 「そんなに固い雪でもないし滑っても30m位やろ、このまま行こか」 

踏み跡が有るような無いような 荒菅沢まで一歩一歩慎重に下りて行く

この辺りに11分の6の標識があるらしいが、勿論深い雪の下

8時40分 荒菅沢(1448m)まで下りて来た 遅くまで雪渓が残る所だ

雪の深さはどの位あるんだろう 3m? 5m? いやもっとかな、見当もつかないわ

見上げればフトンビシ(布団菱)岩峰群が青空に聳える

頂上は主稜線中央の雪渓の左奥、まだまだ遠いなぁ

荒菅沢を過ぎると雨飾山の核心部、笹平への急登が始まる 

まず対岸の樹林帯を頑張り黒沢尾根に乗る 振り返れば高妻山(2352.8m)が一際高い

一緒にルートを探しながらここまで来た方が、ちょっと雪は苦手だと引き返された

かなり高度が上がって来た所で、南尾根のフトンビシ岩峰群を眺める

右から、中央岩峰、左岩峰、トマの左岩峰の3本槍が天を突く

 手前の尾根の向こうに駐車場が見える 右後方は戸隠山だろうか?

すぐ上で、突然ガラガラガラッ  大きな石が谷に転がり落ちて行く 怖っ!

この辺りの急な岩尾根は落石注意箇所、急いで抜けなくっちゃ ロープや梯子を伝って急坂を上がって行く

大きな葉に小さな蕾が沢山、何だろうかと思っていたら一株だけ咲いていた、オノエランかな?

黄色が鮮やかなミヤマキンバイ、急坂途中でちょっと一息 もうここまで来れば笹平は目の前

残雪の山々を背景に得意げなカタクリ、ピンク色が可愛い

10時 やっと主稜線に出た ここは笹平東端のジャンクションピーク(1894m)

 右金山まで320分 左雨飾山頂まで40分の標識が立つ

笹平は名の通り笹に覆われた平坦地、正面の本峰目指してルンルン気分で雲上散歩

笹の根元にはヒメイチゲ、爽やかな風が通り抜け汗がすっと引いて心地よい 

北側の雨飾温泉コース(梶山コース)分岐が近付くと、前方から賑やかな声が聞こえて来た

15人程の高校生の団体と爽やかな挨拶を交わす 静かだった登山道が急に賑やかになった

分岐の窪地から少し上ると、あちらにもこちらにも可愛いハクサンイチゲ、うわっ、もう咲いている〜♪

まだ咲き始めたばかりだけど、 間もなくこの辺りはお花畑になるんだろう

11分の10の標識を過ぎると、頂上がグンと迫って来た

頂上への急坂手前のコルに「ふりかえれば荒スゲ沢」と書かれた看板

高校生たちが、荒菅沢を覗き込みながら「アラスゲー」と興じている

谷を隔てて 左金山(2245m)、右天狗原山(2197.1m) 両山共お花畑が素晴らしいそうだ

頂上手前で東を見れば 右奥に焼山(2400.3m)と火打山(2461.8m)

「さっさと登らんと後ろの方に迷惑だぞ」と先生らしき方が、立ち止まっている生徒に声をかける

「おばさんですから気にしないで下さい、もうしんどくてフラフラです」 「僕はお腹が空いてフラフラです」

コルからひと上り10分程で双耳峰の鞍部に着くと、素晴らしい展望が待っていた

10時30分 雲海の上に立つ 西には後立山連峰の名山が勢ぞろい

遠く、槍穂まで見渡せる 手が届きそうな山々を眺めながら山座同定

鞍部から左へ行けば三角点がある南峰(1963.2m)、右が石仏と祠が置かれている北峰

越後の羅漢上人が石を刻み、それを担ぎ上げたそうだ

高校生に囲まれた石仏を見ながら、黒森山・堂ヶ成の権現さんの事を思い出した

中央が白馬岳(2932.2m)、右端は山名が素敵な雪倉岳(2610.9m)

頂上に着くまでに5人の下山者にすれ違ったが皆さん小谷温泉コースの方だ

先程すれ違った方が笹平を歩いているのが見えるが、遠くを見渡しても登って来る人はいないようだ

もう少しのんびりしたいけど、高校生は北側に下りるし、ガスでも出たら不安なので早めに下りようか

「お先に〜」と高校生のグループに声を掛け 10時50分 下山開始

北には海谷山塊の鋸岳(1631m) 日本海は雲海の下

笹平ジャンクションピークから振り返ると、雲海の上に雄大な朝日岳(2418.3m)

足が疲れて来たけど気が抜けない エッジを使って雪の斜面を慎重に下る

咲き始めたシラネアオイ               今が盛りのイワナシ

12時05分 荒菅沢に下り立ち、雪の斜面を上り返す

先行されていたお二人に追い付く なんと、お一人は北海道から来られたそうだ

萌えるブナを見ながら白い道をひたすら下って行く

「山は心を後に残す方がいい、と言った人がいる 一ぺんで登ってしまうよりも、幾度か登り損ねたあげく、

ようやくその山頂を得た方がはるかに味わい深い 私にとって雨飾山がそれである」

と、深田久弥が「日本百名山」の文中で述懐している

1度目はハッキリした道が無く途中撤退、2度目は来る日も来る日も雨で4日間待ったが断念

3度目にしてフトンビシの岩の間を抜けて頂上に立っている

登山道が整備されていない時代と比べようもないけれど、今日は天気も最高

見たいものも全て見られたし、後に残す心は何も無い 時にはこういう山行もなくっちゃね

ブナの若葉が青空に映える

ブナ平の主のような大ブナ、大きいだけでなく放っている気も凄い

とても圧倒的なのに、穏やかで威厳に満ちた気だ

春ならではの風景「雪もみじ」

眩しいばかりの新緑の中、白い雪の上に舞い落ちたブナの殻、まるで紅葉のようだ

大海川の瀬音が聞こえて来た もうすぐ11分の2地点     深山に春を告げるショウジョウバカマ

1時15分 大海川の河原に下り立ち、のんびり登山口に向かう

先程のお二人は、デポしておいた長靴に履き替えている

水没箇所はどうしたのかと聞かれたので、「くノ一忍法・ジャブジャブです(笑)」

木道の側には、水芭蕉の大群落

水芭蕉が注目されだしたのは、昭和25年NHK歌謡として唄われた「夏の思い出」以降

それまでは、厄介な雑草扱いだったなんて! 信じられん

大ヤナギの根元に春の花、イチリンソウ  遊歩道では長靴を履いた方々が花散策を楽しまれていた

雪解け水も落ち着いたら、この湿地帯には色んな花が咲き賑やかになるのだろう

1時35分 登山口に帰って来た

今日は、イメージしていた以上にすばらしい山行だった

残雪の中で萌えるブナ林、雪もみじ、雲海に浮かぶ北アの山々、フトンビシ岩峰群の大迫力、荒菅沢の雪田

河原の湿地帯を埋める水芭蕉、稜線に咲くシラネアオイ、ハクサンイチゲなどの花々

何度も言うけど、まだ何か足りないものある?

残雪と新緑で飾られた雨飾山、はるばる来た甲斐がありました

折角だから、新緑が美しいと言う近くの鎌池へ寄り道

途中、車道から雨飾山を眺める つつましく天に突き上げる姿が、何とも個性的だ

あの天辺に立ったんだと、暫く余韻に浸る

車道沿いの緑も深くなり、季節は少しずつ春から夏へ変わろうとしている

標高1190mにある鎌池、草を刈る鎌の形に似ていることから名付けられたそうだ

池を取り囲むブナやトチの間を縫って、一周2kmの遊歩道が作られている 

遊歩道を少し歩くとイワナシがこぼれる様に咲いている、池畔もこれからお花畑になるんだろうなぁ

鎌池の脇に佇む「鎌池ブナ林亭」、入るといきなり熊の剥製が置かれている

ご主人が言うには、ブナ平手前にクマの道があるとか

 なんとなく居そうな雰囲気だったけど、やっぱり! 遇わなくて良かった

頂いたのは、名物ちゃのこ(蕎麦粉のお焼き)と山の幸いっぱいの「春限定ぶな林定食」 

勿論、今が旬のホタルイカも、美味しかった〜

そうそう、小谷村といえば風情ある山のいで湯も楽しみの一つ

小谷最奥の秘湯「雨飾荘」でほっこりでした

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