2010年08月07日〜08日 ”白馬岳〜不帰ノ嶮〜唐松岳”

憧れの不帰ノ嶮(かえらずのけん)を歩く

5年前の5月、白馬村の「ペンション村どんぐり」から眺めた夕闇迫る不帰キレット(かえらずのキレット)

雪を被った不帰ノ嶮の大迫力に圧倒され、いつかはあの尾根を歩いてみたいと思っていた

(右から、天狗ノ大下り、不帰キレット、不帰T峰、U峰(北峰、南峰)、V峰、唐松岳)

トラックログはイメージ図です
「この地図の作成に当たっては、国土地理院長の承認を得て、同院発行の数値地図50000(地図画像)及び
数値地図50mメッシュ(標高)を使用したものである。」(承認番号 平18総使、第582号)

 
7日 猿倉(5:05)〜大雪渓〜(9:50)白馬岳(10:20)〜白馬鑓温泉分岐(1:00)〜天狗山荘(1:50)   (8時間45分)
8日 天狗山荘(4:00)〜唐松岳(8:00)〜唐松岳山荘〜八方池山荘(11:10)                    (7時間10分)

最近、週末の天気がはっきりしないなぁ、天候に多少の不安も感じながら一路、白馬村へ

混み合わないうちに大雪渓を抜けたいと、午前4時過ぎ猿倉駐車場に着いたら既に満車状態!

他には停められそうに無いので、駐車スペースに張られたテントの撤収を待ち5時前、ようやく駐車

真っ暗だった空も白み、白馬岳が見え出した、まずまずの天気みたい

5時05分 猿倉荘(1230m)を出発

山荘左の樹林を一登りで林道に出て、暫く進むと白馬鑓温泉(しろうまやりおんせん)分岐

白馬岳から小蓮華山への稜線を眺めながら、御殿場と呼ばれる林道終点まで進み

登山道に取り付く、石畳の道になると間もなく白馬尻

5時55分 村営白馬尻荘(しろうまじりそう)、小屋前では団体さんが体操中

キヌガサソウの咲く潅木帯道を抜けると、大きな落石がゴロゴロしている大雪渓末端に出る

雪渓はスプーンカット状態、足元も上方も気をつけながらアイゼン無しで登って行く

青空に向かって雪渓を登り詰める、ヒンヤリとした風が心地良い

落石の事も忘れてのんびり登っていると、突然「ガラガラッ」

雪渓左方を大岩が転がっている、誰かが下に向かって大声で「ラクッー」と叫ぶ

振り返れば、はるか下の方に団体さんの列が続く 「恐っ」

雪渓もそろそろ終わりが近づき出した頃、次第に青空が雲に覆われ出した

雪渓から離れ、クルマユリがよく目立つお花畑を見ながらガレ場をジグザクと登って行く

7時50分 葱平(ねぶかっぴら)

平って名前から想像して、もっと広い所かと思っていたけど、うっかりすると見落しそうな狭い場所だった

8時15分 ガスの中に真新しい緊急用避難小屋が浮かび上がる

あれ、クルマユリの側で咲いているのはタカネバラじゃない?と、ズームしていたら

直ぐ上の水場の側で座り込んでいたパトロールの方が、「頂上まで後2時間よ〜」

「1日中、退屈でしょ」と、暫く四方山話をしながら小休止

シナノキンバイやミヤマキンポウゲの黄色い絨毯が敷き詰められたお花畑を見ながら

急坂を頑張っていると、白馬グリーンパトロールの腕章をつけた方々が

「今花盛りです、十分お楽しみ下さい」と、にこやかに話しかけ下りて行った

日本の高山植物470種のうち250種以上が生育しているという白馬岳は、まさに高山植物の宝庫

文化財保護法で「白馬連山高山植物帯」に指定されている

あれ、トラバースする小雪渓は無かったよねぇ、8月だからもう消えてしまったんだろうか?

「お花畑避難小屋」前には8月5日現在咲いている花の種類が手書きされていた

9時15分 ガスに煙る村営山頂小屋(2730m)の横を過ぎると道が別れている

右折して暫くするとウップソウの群生、残念ながら花期は終わり殆どブラシ状態

(直進、右折、どちらも尾根に出て白馬山頂に行ける)

ガスが薄くなり、目の前に収容人員1500人と世界最大規模の山小屋・白馬山荘が現れた

9時50分 白馬岳山頂(2932m) 折角方位盤があるのに、何も見えません(ガッカリ)

長野県北安曇野郡白馬村と富山県下新川郡朝日町の境界に聳える白馬岳(しろうまだけ)

雪解けの頃山腹に現れる雪形が田圃の代掻き馬に見えたことから白馬と呼ばれ出したとか

文政7年(1824)の古文書に白馬岳の名がすでに書かれているそうだ

白馬山荘前のレストラン・スカイプラザ白馬で、軽く食事をして休憩

相変わらずガスが濃い、展望の無い縦走なんてちょっとつまらんねぇ

大雪渓を下れば、猿倉に2時過ぎには着けそうだし・・・ちょっとピストンも頭に浮かんだけれど

明日の天気に期待しよう!

10時20分 ガスの中を天狗山荘に向けて歩き出す

白馬山荘から下り始めるとガスがさぁーと流れ、前方に雄大な旭岳が浮かび上がる

稜線左側には、村営山頂小屋(収容人員1000人)

丸山でお逢いした名古屋の年配男性の方と話しながら下って行く

昨日、蓮華温泉から朝日岳経由で白馬岳、今日は清水岳(しょうずだけ)に登ってこれから天狗山荘

明日は唐松岳を越え、遠見に下りるそうだ、お元気!

鞍部からジグザグと登り返すと杓子岳分岐が見えて来た、頂上はすっぽりガスに隠れている

おまけにパラパラと通り雨・・・気にならない程度だけど、こんな所で本降りになり雷でも鳴ったら大変

展望の無い杓子岳は、迷わずパス、コマクサの群生に見送られて緩やかに上がって行く

山頂から下りて来る道と合流して、暫くすると白馬鑓ヶ岳の鞍部に出る

此処からは暫くきつい登りが続く、何処まで続くか分からない急坂を一歩一歩

若し、立ちはだかる小鑓ノ頭を見上げれば、きっとため息が出た事だろう

小鑓ノ頭からは緩やかな道が山頂に続いているが、視界30mくらいで殆ど見えない

12時35分 白馬鑓ヶ岳頂上分岐(前鑓)から、岩屑のザクザクした道をゆっくり下って行く

1時 白馬鑓温泉分岐、眼下に高山植物の宝庫・大出原(おおでっぱら)が広がる

やれやれと腰掛けた途端、急に眠気が・・・よく考えたら昨夜は殆ど寝ていないんだ

暫く、ぼーっとしていたらガスが流れ、白馬鑓ヶ岳も薄っすら見え出した

勝手なもんで、青空が見え出すと急に眠気も治まって俄然元気が湧いて来た

地図を見れば天狗山荘まで、あと、20分 頑張ろう!

チシマギキョウ越し、絵に描かれた様な風景画広がる

あっ、雷鳥の親子!四方八方に散らばった7羽の雛は、好き勝手に遊んで元気いっぱい

「クー、クー」と、雛に声をかけながら心配そうに見守るお母さん、嬉しい出会いで完全に眠気は吹っ飛んだわ

1時30分 ヨツバシオガマの向こうに天狗山荘分岐(2750m)、天狗平に建つ山荘が見え出した

足取りも軽くルンルンランランと下り出したのに、お花畑に囲まれてなかなか進みません

雪渓の側で「ようこそ」と、歓迎してくれるミヤマオダマキの群落

1時50分 小屋前の雪渓を横切って、天狗山荘(2730m)

宿泊の手続きを済ませてから山荘周辺を散策

山荘南にある雪渓から流れ出た水で出来た天狗池、雪渓で冷やされたジュース、美味しかった〜

明日、歩く登山道を確認、あそこが天狗ノ頭かな?

すっかり姿を現した白馬鑓ヶ岳に、大感動! 頑張って歩いて来た甲斐があったわ

食事まで時間が有るので一眠り、ヘリコプターの爆音で目覚める

8人部屋に5人なのでゆっくり寝られそうだ、丸山で逢った名古屋の方も同部屋で話が弾む

予報では、明日の天気はあまり期待出来そうに無い・・・午後から雨、夕方は雷だとか

朝起きて若し雨でも降っていたら、鑓温泉分岐まで引き返し猿倉に下山する事にしよう

食事が済むと7時過ぎ、明朝の準備をして皆さん早々とお休み

 

2日目(08月08日)

3時に目覚めて外に出ると、雨ではなくて星が降っている

良かった、午前中はなんとか天気が持ちそうだ

午前4時に山荘を出発、ヘッドランプの明かりを頼りに30分ほどで天狗ノ頭

4時55分 天狗ノ大下り、急坂を300mほど下って行く

夜が明け始めた空に、不帰ノ嶮、八方尾根、唐松岳、五竜岳、鹿島槍ヶ岳が浮かび上がる

天狗ノ大下りの途中、不帰ノ嶮、唐松岳、八方尾根にも朝日が当たり出した

左手に南アの山々、背後にどっしりと構える富士山、大感動!!

昨日までの疲れも吹き飛び、不帰ノ嶮を目前に力が漲って来た

5時30分 感動の夜明けに浸りながら、不帰キレット(2411m)で小休止

不帰キレット付近から不帰沢を見下ろす     不帰T峰ノ頭の途中から不帰キレット、天狗ノ大下りを振り返る

至る所に不帰の冠だらけだけど、不帰(かえらず)ってちょっと恐い表現

這ってでも、帰らなければ!

6時 不帰T峰(頂上標識にはT峰ノ頭と書かれていた)

立山連峰から連なる剱岳、遠く黒部源流の山々が勢揃い

山の花は夏から秋へ、トウヤクリンドウが目立つ

不帰T峰より少し下り、U峰の取り付きまで下ると、いよいよ核心部が迫って来る

でも、何処を歩けばいいんだろうか?

手前に鋭く天を突いているのがU峰前衛ピーク、その後ろにそそり立つ岩壁がU峰北峰

右隅に、U峰南峰が覗く

ほぼ垂直の岩壁、登りは小さな足場や手掛りがあるので、チェーンはあくまで補助

鉄製の梯子の下は絶壁、チェーンの支えが無ければちょっと恐いかな?

信州側に回りこむと、八方尾根がぐんと近付いた感じ、なだらかな丸山ケルン、白く光る八方池が近くに見える

岩壁をへつった細いバンド状を過ぎ、垂直壁を登りきればあと一息で不帰U峰北峰

U峰北峰直下の谷、落ちれば何処まで転げて行くんだろう? 越えて来た不帰ノ嶮の峰々が鋭い様相で突き上げる  

6時55分 不帰U峰北峰から望む立山〜剱岳

不帰キレットから1時間25分、すれ違った方は6人と案外少なくスムーズに歩けたので、ほぼ予定の時間通りだった

緊張から解きほぐされ、不帰U峰南峰に向かっていると、前方から「グランマーさん?」

咄嗟の事で驚いていると、「morimoriです」「えっー!」

四国の山でもお逢いした事無いのに、北アのこんな静かな山域で逢うなんて!

もうびっくりするやら嬉しいやらで、話に華が咲きました

再会を約して、白馬岳へ向かわれる皆さんを見送り、南峰へ向かう

7時15分 不帰U峰南峰 歩いて来た稜線を眺めながら小休止していると

あらら、みるみるガスが湧きあがって来て歩いて来た山々を隠してしまった

不帰U峰南峰からハイマツ帯を下って行く

ガスに包まれた不帰V峰を巻き(多分ピークは踏んでいないと思う)

フーフーゼーゼー言いながら、 8時05分 唐松岳頂上(2696m)

ほっとしたのか、お腹が空いたので山荘で作って貰ったお弁当を広げたけど

昨日の夕食時と同じ、ご飯が私にとってはちょっと固め、おかずだけ食べて、小休止

8時35分 唐松岳頂上山荘(2620m)

おうどんでも食べたいなと思ったが未だ準備中、温かいコーヒーを淹れて貰ってやっと一息

昨夜の登山客を送り出したばかりで、忙しい時に悪かったかな

8時45分 山荘の南で五竜岳の縦走路を見送り、風が吹き荒れる八方尾根を下山

最初は崩れた岩道を下って行くが、次第になだらかな道になる

ハクサンシャジン、クガイソウ、シモツケソウ、ニッコウキスゲ、タカネマツムシソウ、ウメバチソウ

ミヤマアケボノソウ、ミヤマリンドウ、ミヤマアキノキリンソウ、ミヤマアズマギク・・・等々

登山道沿いは夏の花、秋の花が入り混じって咲き乱れ百花繚乱〜

9時15分 丸山ケルン(2420m)

八方尾根からの大展望を期待していたのに、残念ながら不帰ノ嶮は濃いガスの中

花が済み穂が目立つ中、まだまだ秋の花に座は譲れんわと咲き誇るチングルマ

雰囲気の好いダケカンバの道を過ぎると、間もなく八方池と第3ケルン分岐、分岐から八方池(左)へ

10時15分 花々が咲き乱れ、観光客で賑わう八方池

池の端まで行って、飯森神社奥社にお参り

池畔では、若いグループや家族連れが思い思いにお弁当を広げ寛いでいる

白馬三山や不帰ノ嶮が見えれば美味しさも倍増だろうけど・・・まあ、雨が降らないだけでも良しとしなければ

 渋滞気味の木道をのんびり花散策しながら下って来ると、やっと八方池山荘(1830m)が見え出した

11時05分 八方池山荘からリフト2本、ゴンドラを乗り継いで、11時35分八方駅に下り立つ

タクシーで20分(3300円)ほど走れば、猿倉登山口駐車場

 

後立山連峰の北の雄・白馬岳、憧れの不帰ノ嶮を歩けた満足感に浸りながら

帰途、「白馬大橋(道路百選)」より見上げれば白馬岳はガスの中

今回、何が不足かって聞かれれば、そりゃー白馬三山勢揃いが見られなかった事だけど

こればっかりはお天道様次第、天気の好い日にまた来ればいいじゃない

と、言っても、四国から白馬村(はくばむら)まではやっぱり遠いねぇ

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