2010年11月13日  ”高越山”

小学生から修験者まで、幅広く県民に親しまれている阿波の名峰「オコーツァン」

GPSによるトラックログ(カシミールソフト使用) 
「この地図の作成に当たっては、国土地理院長の承認を得て、同院発行の数値地図50000(地図画像)及び
数値地図50mメッシュ(標高)を使用したものである。」(承認番号 平18総使、第582号

 
登山口(7:40)〜(8:50)中ノ郷(9:00)〜行場往復〜(10:20)高越寺〜(10:35)山頂(10:50)〜(11:05)奥ノ院

高越寺地蔵平途中往復下山口(11:35)〜(12:10)〜(12:30)県道出合〜(14:30)駐車地点 (6時間50分)

 

修験の山・高越山はブナの山

標高が1100mを超えているから、山頂のブナ林はもう葉を落としているだろうけど

裏参道に聳える孤高の大ブナが気にかかる

折角だから、未だ歩いた事が無いふいご温泉から登り

学校登山に使われていたと言う少年自然の家へ下る道を周回して来よう

ちょっと車道歩きが長いけど、えっ!10kmも・・・どうしよう?

7時40分 県道248号線(山川〜奥野井線)高越大橋先の車道脇の登山口を登って行く

整備された鉄塔保線路を一登りで、43番鉄塔

47番鉄塔で北の展望が開けるが、時期外れの黄砂でぼんやり、残念

林道に出て右に進み、明王院からの表参道コースを合わせ 8時50分 中ノ郷着

中前寺の鳥居を潜ったところにベンチが置かれている、折角だからリンゴ休憩

万代池を過ぎれば、左に参道の主の様な巨木マテバシイに護られた七人塚がある

不動明王の石碑の傍らに休憩舎が建つ、お不動さんが「休んでいけ」と言っているようだ

遊びの無い単調な登りが続く道はしんどいけど、結界門まで頑張ろう

標高差1000mは伊達じゃないよね、夏は暑くて疲れるだろうなぁ

紅葉の中に朽ち果てた女人堂が見えた、側には錆びた風呂釜が転がっている

9時55分 煉瓦造りの女人禁制門(赤門)を潜る 小休止後、門の直ぐ上から行場(左)へ向う

古来より女人禁制の修験の山・高越山、昔だったら此処までしか来られなかったけれど

時代の流れか、ウーマンパワーに圧されたのか、伝統習慣は殆ど残っていない

只、役行者供養の「十八山会」が行われる8月18日午前0時〜8月19日午前1時の間だけ

今も女性は高越寺境内には入れないそうだ

ブナやカツラの木を見ながら横駈道を5分弱で、セリ割りの行場 目の前の大岩がスパッと二つに割れている

大岩に架かる梯子は前回(2007年1月20日)下から見上げたただけで引き返したが、ちょっと渡ってみる

「直ぐ上に山門が見えるぞ」 「そんな頼りない梯子渡れんわ、引き返そうや」

苔むした大岩は、ちょっと滑りそうな状態だったそうだ

前に来た時は上からツララが落ちて来そうでハラハラしたけど、今日は落ち葉の絨毯

行場から引き返し、大鳥居を潜り10分弱で山門

10時20分 高越寺、本尊は蔵王権現(高越大権現)、脇仏(千手観音)で

東の大和国大峰山(金峰山)に対して、自らを西上山と呼ぶ、阿波国修験道の発祥地

本堂にお参りして、鐘楼横から高越神社の白い鳥居を潜り山頂を目指す

杉木立の奥に一際立派な大杉が聳える

ウエスト10m程?もありそうな巨木、今度来る時はメジャーを持って来よう

微かに期待していた山頂周辺のブナは、やっぱり冬支度

山頂はもう目の前、そうだ頂上へ行く前に北にある三角点へ寄って来こう

尾根から見下ろせば、明るいシロモジの黄葉に彩られた天日鷲命(あめのひわしのみこと)を祭神とする高越神社

高越山一等三角点(1121、96m) 場所、山川町木綿麻山5−1の標示板が立つ

10時35分 高越山頂上(1133m) 杉林でなく、ブナ林の中に建つお大師さんってちょっと似合わないかな

ちょっと早いけど、お昼休憩

麓から見ればすっきりした三角錐はまさに阿波富士、他に衣笠山、摩尼珠山などの俗称もあるそうだが

地元のみんなからは、「オコーツァン」と呼ばれ親しまれている

折角のお天気なのに、讃岐山脈の大滝山や穴吹の町は黄砂で霞み吉野川の雄大な流れもぼんやり

山頂少し南の展望所から剣山系はそこそこ見える

余談ですが、阿波の民話に残る「高越山と大滝山のけんか」(徳島新聞)

とんと昔、あったと。

麻植郡と美馬郡の境にそびえ立ったおこーっあんは、わがままでかんしゃく持ちの山じゃったそうな。

ちょっと機嫌をそこねると、力の強いことをええことにして、大けな岩を、あたりかまわず投げつけた。

ほんで、阿波の国中の山々はだれもかれも黙って泣き寝入りしよったと。

また、ほれをええことにしておこーっあんは「わしが阿波一の山じゃ、わしにかなうもんはおらん」ちゅうて、威張りちらっしょった。

ほのうち、おこーっあんの乱暴がだんだんとひどうなってきたんで、阿波の山々が内緒で集まって相談しおうた。

「みんなで、やっつけたらんか」 ところが、おこーっあんの仕返しがおとろしゅうて、なかなか話がまとまらなんだ。

ほのとき 「よっしゃ。わしに任せとけ」ちゅうたもんがおったそうな。よう見ると阿波と讃岐の国境にそびえとる大滝山じゃった。

ある日、おこーっあんが昼寝しよった。ほのすきに、大滝山は自分の山の岩をとんりゃげるなり、おこーっあんの腹めがけて、力いっぱいぶちつけた。

おこーっあんは、急なことでおぶけて飛び起きた。ほして、岩をぶっつけられたんを知って、カンカンに怒った。

「わいに岩をぶっつけたやつがおる。やっつけたる」ちゅうて、おこーっあんと大滝山の大げんかとなった。

二つの山から吉野川を挟んで何百何千ちゅう岩が大空に円をえがいて飛んでいたそうな。

今まで、おこーっあんがおそろしゅうて黙っとった阿波の国の大けな山もこんまい山もが一斉に大滝山の応援をし出した。

阿波の山々が大滝山の応援をし出したんで、おこーっあんも困ってしもうた。

ほのうち、おこーっあんはようけ岩を投げつけたんで、おこーっあんの岩がのうなってしもうた。

ほれから、おこーっあんは腹が立っても岩を投げることがでけんようになった。投げる岩がのうなってから、おこーっあんはおとなしゅうなったと。

ほれから、山々はほっとして、けんかもせんと静かになった。

今でも、おこーっあんにある岩は、持ち主が大滝山なんで、わんくの山にありながら自分の勝手にでけんちゅうこっちゃ。

阿波郡から美馬郡にかけて田んぼにある小岩や大けなくぼみは、おこーっあんが投げつけた岩の跡じゃそうな。

もの知りがいうには、山がけんかするわけない。ほれは、おこーっあんの神主と大滝山の坊さんの縄張り争いがあったからじゃと。

人間の争いをあからさまにいえんので、人間を山にとりかえたんだそうな。   おーしまい。

じゃ、あのセリ割りの大岩も大滝山から飛んで来たのかな?

いずれにしても、我儘で癇癪持ちはいただけませんね〜

冬枯れの明るい尾根を奥ノ院に向う

11時05分 奥ノ院  後ろに高越大権現が祀られている

尾根伝いに道は続いているようだが、引き返し左の林道に下り高越寺本堂を目指す

登山者で結構賑わっている境内を抜け一旦山門を潜り、裏参道を駐車場(地蔵平)へ向う

裏参道入り口付近に立つ説明版

「霊峰高越山は海抜1122米、太古より山伏の修練の道場として1300年の昔役行者が開基して

本尊蔵王権現脇仏千手観音を祀り以来吉野川に沿いて住む住民はオコーツアンと仰ぎ

弘法大師若き頃登り修行の遺跡あり、叉天下の武将は向一倍の力を授かるとの信仰があり

国守の祈祷所として叉庶民の信仰を集め今日まで法燈が続いている」

説明板から、駐車場(地蔵平)までは1、1km20分くらい

黄葉で、まるで灯りが点っているような燈明杉、別名千年杉、天狗杉と呼ばれているそうだ

紅葉を愛でながら、落ち葉の積もった快適な道を歩く

折角の展望台なのに、使用不可の標識

山門から300mくらい歩いて来たところに、少年自然の家への下山道分岐がある

もう少し先の、お目当ての大ブナまで足を延ばす

十二神将に護られた薬師如来さまにお参り

おやくしさんが祀られているやくしだけ行場、お鎖がかかる岩場の上が気にかかる

あらら、此方の大ブナもすっかり葉を落として冬支度だわ、残念

11時35分 大ブナの所から分岐まで引き返し、急坂を下り始める

こんなに歩き難い道、本当に学校登山に使われてたの?と思いながら滑りそうな道を下っていると

「元気出せ!あと300m」に続いて「中間点だ! あと400m」の標示板

何処と何処の中間点なのかよく判らんけど、多分、沢まであと400mくらいかな?

それにしても急傾斜の尾根道、引率した先生方は大変なご苦労だっただろう

あまり展望は無いけれど、黄葉したカラマツ林が明るい!

突き出した絶壁から眺めると 少年自然の家が見える

生憎黄砂で霞んではいるが、緑の中に色とりどりのパッチワークが点在する

12時10分 やっと沢に下り立ち、倒木を乗り越えて対岸に渡る

高越渓谷(奥野井谷)は紅葉真っ盛り、でもこんなに荒れているんじゃあまり見物人も居ないかな?

沢沿いのトラバース道はそんなに傷んでいないが、多少崩れたり藪いたりで道幅が狭くなって来ているようだ

人が歩かなくなったら、いずれこの道も消えてしまうかもしれない

再び沢を渡ると石積みが在り、凍豆腐製造場あとの看板

冬になると、高越山にはたくさん雪が積もるそうだけど、谷筋も厳しい寒さなんだろう

シロモジのトンネルを抜けると、広い廃林道に出る

ブルーの花?なんだろうかと思いながら近付いたら、初々しいアジサイ!!晩秋だと言うのにどうなっているの!

下りて来た尾根を振り返る 作業小屋が建つこの辺りまでは車が入れそう

12時30分 県道に飛び出す 右のコンクリートの法面に案内板が貼ってある

県道を右へ少し上った所に建つ少年自然の家が、2005年に閉鎖して以来

「オコーツァン ありがとう」の声も聞かれなくなっただろう

子どもたちに比べればオクタープ低いけど、久し振りの「オコーツァン ありがとう」が届いたかな?

さあ、此処から車道歩き2時間、頑張るぞ〜!

でも、展望が開け遥か遠くに鉄塔が見えた時は、あまりの距離にぞっとしたわ

車道下に廃屋、地図ではこの辺りにショートカットがある筈なのに・・・何処にも見当たらない

使われなくなったので、道も死んでしまったんだろう

車道から見上げれば植林された杉木立がまだ若い、畑跡の石積みかな

歩けば普段見えないものが見えて来ると言いながら、道沿いの紅葉や景色を楽しんでいたけれど

またまたショートカットが藪いていて歩けそうに無いと解った途端、正味の車道歩きにうんざり

ちょっと、休憩 コーヒータイムにしようや

休憩後、元気を取り戻してピッチを早める

対岸に見える車道をドンドン下って行けば登山口、まだ鉄塔は遥か彼方

ハァー、大きなため息「見えんでもええから車でさっと走りたいわ」

トンネルを抜け、奥野井谷川に架かる橋を渡るとようやく尾根の鉄塔も段々近付いて来た

2時30分 やっと駐車地点着、足が棒になりました

 

期待していたブナの黄葉は終わっていたけれど、紅葉に染まる修験の山を満喫

それにしても、下りとはいえ車道歩き10kmは長かった〜

これから、ザックにスニーカーを入れとこ

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