2011年01月14日  ”大ボシ山”

霧氷の華咲くブナの山は、平家伝説の残るロマンの山でした

GPSによるトラックログ(カシミールソフト使用) 
「この地図の作成に当たっては、国土地理院長の承認を得て、同院発行の数値地図50000(地図画像)及び
数値地図50mメッシュ(標高)を使用したものである。」(承認番号 平18総使、第582号

 

駐車地点(9:10)〜(9:45)登山口〜(12:05)大ボシ山山頂〜(12:20)26番鉄塔(12:40)

〜(13:45)登山口〜(14:15)駐車地点                       (5時間05分)

 

物部の山といえば三嶺や天狗塚を思い起こすが、脊梁を南西に辿れば

物部川の成長を見届ける様に山並みが並走し、高知平野に流れ落ちている

その稜線上に素晴らしい「ブナの山」があるらしい 

平家伝説も残るその山は地図に山名が載っていない、平家落人に配慮して敢えて伏せているのだろうか?

華やかな「百名山」を横目に、名山の要素を十分持つ(らしい)この山のつつましさが余計に登頂意欲を駆り立てる

今日はヤマガツオさん、ギッチャン、ゆきねえさんお勧めの「物部の隠された名山・大ボシ山」に登って来ました

大久保集落のはずれから大ボシ山方面を望む 左の雲がかかっている辺りが大ボシ山かな?

猪野々林道を奥へと入って行くと道は狭く、途中から舗装は切れる 路面は白いので慎重に

オモ谷に架かる橋奥200m位の所に通行止めのゲートがある

9時10分 ゲート手前に車を停め、仕度をして歩き出す 

登山口までは35分程のウォーミングアップの林道歩き、あれっ? 轍があるよ

先程走り抜けた大久保集落の棚田が朝日に輝く

平家落人敗走の道が入り乱れるこの地にも、様々な平家伝説が残っている

一番左のとんがり山が、安徳天皇と平家一門の武将を祀るお宮がある御在所山(1079.1m)

30分弱で林道分岐、ここは左(柚ノ木林道)へ

9時45分 登山口 「大星山登山道入口」と、「借受使用地」の標識が立つ 

此処から標高差は600m弱、山頂近くの肩に立つ26番鉄塔までよく整備された巡視路が導いてくれる

初めての山はなんとなくワクワク感がある、と言ってもいきなり植林の中のジグザグ急坂

自然林に変わる大岩辺りから、雪が増えて来た

岩面が祭壇のようにへつられていたが、此処に何かを祀っていたのかな?

登山口から25分ほどで最初の鉄塔・20番に出る

この登山道はほぼ尾根通しに付けられているが、雑木がうるさく展望は余り良くない

でも南面ルートだから兎に角明るい、冬場は南面にかぎるわ それよりなにより太陽が背中を押してくれて足が軽い

背丈以上のスズタケが切り払われた道を進み、1217mピークを嫌って巻く辺りからブナが現れ始める

左に主稜線が見え隠れし出し、20番から40分程で22番が見えて来た

何?これ 挿し木? ブナにツツジの花が咲いたりしたら「珍百景」に投稿しよう

24番分岐(鉄塔は登山道を外れた直ぐ右)を過ぎた辺りから、勾配がややきつくなって来る

真っ白い稜線が見える、頂上かなと思ったのはぬか喜び、もっと奥でした

スズタケが雪の重みで垂れ下がり、登山道を塞いでいる

雪を叩き落しながら掻き分けて進むのも疲れるわ 時折頭から雪を被り白兎に、今年は春から縁起が良い(?)

頂上手前の26番に着いたと思って標識を見たら、あらら未だ25番でした

雪もグンと深くなり、霧氷も出て来だした

「此処ですよ〜」と、26番が呼んでいる

見上げれば抜けるような青空に霧氷!早よ行かんと融けてしまいそう

写真的には鉄塔が気になるかもしれませんが、巡視路が無ければ恐らくこの山のピークを

踏むことは無いのだから感謝しなくっちゃ それよりブナ林と鉄塔、このミスマッチが面白い

霧氷と言うより、雪を纏った色白ブナが目立つ

時折、粉雪が舞うように幹や枝先に付いた雪が吹き飛ばされている

不思議とブナの山は雪が多い、イヤ雪が多いからブナの山になるんだろうか?

堂々と聳えているブナの巨木も、よく見るとコブが出来たり枝が折れたりねじれたりしている

長い年月、強風や大雪に耐え頑張って生き続けて来た痕なのだ

ゆきねえさんが凍える寒さだと言ってた26番に近付くと、電線の唸る音が大きくなった

ヤッケの下に一枚重ね、フードを目深に被り風対策をしてから歩き出す

吹き溜まりでは雪の深さは太腿まで、普通の人なら膝までかな?

歳は化粧で少々ごまかすことが出来るけど、足の長さは一目瞭然

11時45分 主稜線に立つ26番 大ボシ山は左、右は奥神賀山(1442.9m)方面

空は青く暖かそうだけど冷たい風が吹き抜けとても寒い、急いで頂上を目指す

グランパ、たまには先に歩いて道作ってよ!ブツブツ  「よっしゃ、任しとけ」

新雪の下は凍った滑り台で歩き難い 誰よ? ここでシリセードしたのは?(笑)

雪が沢山乗ったスズタケが行く手を阻む

全身白一色に凍りつきながら立ち尽くすブナたち、静かに芽吹きの時を待つ

どんなに雪が降っても寒風が吹きすさんでも身を隠すことは出来ない

凍てついたブナ林の隙間に白い嶺が覗く、27番が立つ1429mピークだろうか?

ブナの霧氷が青空に向かって背伸びする、満開の冬の桜みたい!

稜線の周りはブナだらけ、「驚くほどすばらしいブナ林にうっとり」の評判を超える空間が拡がっている

静まり返った白い林の中で、新雪を踏み抜く音を打ち消す風が稜線を吹き抜ける

小さな風紋が出来ているまっさらな雪の道、足を取られ大穴を開けながら進む

風に煽られ雪煙を上げて舞い上がる雪が、直ぐに踏み跡を隠してしまうだろう

樹間に見える中都山(なかつやま 1440m)は物部村、香北町、大豊町の交わる境界線

この山も安徳天皇伝説の山で「竜の駒」という巨大な馬が山頂を駆けるという伝説が残り

頂上には「天保七年申年と刻字された重厚な石殿が建っているそうだ

遥か向こうに三嶺や天狗塚などの奥物部の山々が一際白く光っている

それにしてもここは南国高知、1400m程の山にこれ程爽快なブナ林があるとは、大山辺りと見紛う風景だ

太陽の光が降り注ぎ宝石を散りばめた様にきらめいている雪原に、ブナがくっきりとした影を落とす

新雪を被った笹は優しくまろやかな曲線を描いている

空は何処までも青く、霧氷や雪の華を咲かせた木々が美しい

12時05分 やっと、大ボシ山山頂(1431,7m、山頂標識は大星山)

この山は安徳帝終焉の地として伝えられ、王没山、王亡趾山と言われていたそうだ

大ボシ山山頂から尾根を辿れば、平家伝説の残る山、御在所山(1079,1m)や鉢ヶ森(1270m)に続く

悲哀の天皇・安徳天皇の伝説地は数えればきりが無い

屋島や壇ノ浦の戦いに敗れた平家が四国山地の奥深くへ逃げ込んだのは間違いないとしても

果たして、幼い帝が土阿国境を越えて来たのかどうか・・・

現在、正治2年8月8日、御年23歳で崩御されたとされる地・横倉山が

宮内庁により「安徳天皇御陵墓参考地」として指定されている

12時20分 26番まで下り、風が当たらない所で食事、温かいものを食べてほっと一息

鉄塔碍子に付いた雪が風で飛ばされるのを見上げていたら、あっという間に直撃を受けて雪だらけに

27番の道を見に行ってたグランパが帰って来て一言、「何しよったん?」

12時40分 そろそろ下りようか

厚化粧したブナの白く光る枝先を見上げていたら、芽吹きの頃の姿が見たくなった

雪道の下りは超特急、あっという間に20番に着き

大岩を過ぎれば植林帯をジグザグ下って、1時45分に登山口

後は展望を楽しみながらのんびり林道を歩いて

2時15分 駐車地点に帰って来た

 

気温は高く無いが、日差しがある分霧氷が融けるのが早い

復路ではかなり枝肌が見え出していた、次の寒波でまた枝いっぱいに華を咲かせるのだろう 

平家伝説の眠る山は、深い雪に包まれ今も静かに冬のドラマが繰り広げられている

好過ぎる天気に霧氷は期待薄、青空だけでも充分満足と思っていたのに、日頃の行いが良いのか(笑)

青空と新雪と霧氷と展望と二兎どころか四兎までも得るという、嬉しい山行になりました

 

参考文献 「土佐の道 その歴史を歩く」 山崎清憲著

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