2011年 04月17日 ”伯耆大山(振子沢)”

大山春山バリエーション・振子沢から宝珠沢

GPSによるトラックログ(カシミールソフト使用) 
「この地図の作成に当たっては、国土地理院長の承認を得て、同院発行の数値地図50000(地図画像)及び
数値地図50mメッシュ(標高)を使用したものである。」(承認番号 平18総使、第582号

 

鍵掛峠登山口(6:45)〜(7:50)鳥越峠付近〜(8:20)駒鳥小屋〜(10:40)1636mピーク手前稜線

象ヶ鼻発(10:55)〜(12:00)上宝珠越〜(12:50)元谷大堰堤〜(13:20)大山寺橋  (6時間35分)

 

雪が多い大山で最も遅くまで雪渓が残るのが、東面の振子沢だそうだ

3年前の5月に川床から象ヶ鼻を歩いた時、振子山からみた白い振子沢が忘れらず

あの白い帯の上を何時かは歩いてみたいと思っていた(いつもこのパターンです)

振子沢上部を歩ける期間は短い

今冬の大山は何年か振りの豪雪だったが、4月も半ばになりそろそろ雪も締まって来ているだろう

今日は鍵掛峠登山口から入り、振子沢の源頭部へ這い上がり存分に春山を楽しみます

御机から朝焼けの大山南壁を眺める まだまだ雪が多いなぁ

それにしても寒い 昨夜からの冷え込みで畑一面霜が下りている 雪面はどんな状態だろうか

今季の雪の多さでは、大山環状道路は未だ閉鎖されているかもしれない

奥大山スキー場から歩く覚悟をしていたが、14日に解除されていた ラッキー

登山口にはすでに4台の車が停まり、 スキーヤーが板にシールを貼って準備をしている

スキーを履いて振子沢を上るそうだ 歩くだけでもしんどいのにスキーを履いて? 想像しただけで溜息が出ます

6時45分 鍵掛峠登山口(健康の森遊歩道入口)を出発 スタイルの良いブナ林の中を歩き始める

雪は深いが適度に固く、緩斜面だから歩き易い 靴やスキーの跡が薄っすらあるけれど、何処でも道状態です

いつの間にか文殊越は過ぎ、鳥越峠よりかなりキリン峠寄りの尾根に出たみたい

斜面をジグザグ登らずに鳥越峠目指して直線で来たらよかったのに 後からログを見たら無駄な歩きをしてました

7時50分 尾根の鞍部で小休止後、急斜面を直滑降で滑り降りる 早い早い 

あのコルが鳥越峠よ、地図を見て歩かなくっちゃ! あらら、どうしましょう 穴があったら入りたい

という事でもないのですが、根回り穴に入りました

鳥越谷を下り、地獄谷出合の手前で左に上がり、8時20分 駒鳥小屋

地獄谷へは小屋前の急崖を下りるが、覗いてみるとシュルントが出来て下りられない

再び鳥越谷に戻り、少し下ると地獄谷に出合う

駒鳥小屋は一段高い所にあり、河原からはちょっと見え難い 

小屋を背に200m程進むと振子沢(右)分岐

真っ直ぐ行けば本沢、正面に屏風のように槍ヶ峰、天狗ヶ峰それから1636mピークが光っている

さぁ、地獄谷から分かれ振子沢に足を踏み入れる はたして目的地まで辿り着くことが出来るかしらん

今日は狭い谷にも春の日差しが降り注ぎ明るいが、木々が繁る夏場はうっと暗いだろうな

凸凹の無い雪渓の遡行は、夏場に比べて道を探す苦労が無く楽だけど

時折、何処からか水音が聞こえてくる 落ち込まないようスノーブリッジに気をつけ沢芯を外しながら歩く

振子沢の枝沢から落ちて来た底雪崩のデブリを踏み越えて上って行く

烏ヶ山を背負って一歩、一歩、それにしても落石が多いなぁ

夏場はV字谷だが今日はU字谷の狭い沢を何度か右左折を繰り返し詰めていく、思ったより長い

「今度こそゴールが見える」と、最後のコーナーを左折すれば前方の視界が一気に開け、感動の一瞬!

 夏道はこの辺りから、右の象ヶ鼻への稜線に駆け上がる

ここから先はこの時期歩く者だけの特権、あの青空の下にユートピアが待っている

奥が振子沢の源頭部、此処まで来たら振子沢が生まれる所まで頑張ろう

山スキーヤーが何人か見える でも歩いているのは二人だけ 目の前に広がる贅沢な空間に足跡を残す

春の日差しの下、雪がこれほど白く、空がこれほど青いとは! 自然の作り出す芸術にただただ大感動!

カール状地形のこの沢は、振り子の軌跡にも似た優しい曲線を描いている ひょっとして振子沢の名前の由来だろうか?

高度を上げるにつれ傾斜がきつくなるが、なんとかキックステップで歩を刻むことが出来アイゼンの出番は無い

スキーヤーが、「ごくろうさ〜ん」と声をかけシュプールを描きながら側を滑り下りて行く 気持ち良さそう〜 

振り返れば、すり鉢状の谷からせり上がる振袖山 見飽きることが無い景色のど真ん中で、ちょっと立ち休み

高度を上げるにつれ、谷が狭まり傾斜も急になる

10時40分 歩き始めて4時間弱、1636mピークすぐ手前を右に振り稜線に這い上がる

 天気も好く、快適そうな雪渓歩きに見えるけど かなり疲れて足はヨロヨロ、膝はガクガクです

穏やかな振子沢に比べ、稜線北側を覗き込めば墓場尾根を蝕み続ける上宝珠沢(砂すべり) 怖っ!

ヤッホー! 振子沢の源頭部に立ちました〜♪ 振子沢の産声が聞こえてきます

烏ヶ山、蒜山 写真中央下の白い所が地獄谷、そのすぐ右上に駒鳥小屋

あんなに遠い所から、小さな本当に小さな小さな一歩を繋いで此処まで辿り着いたんだと思うと

感動が湧き上がり、先程までの疲れも一瞬にして吹き飛びました

最後の傾斜はかなりきつい「登って来られるものなら、どうぞ」とでも言うように立ちはだかっている

ピーク手前で横に逸れ、中央の少し黒ずんだ所から稜線に出たけれど、「充分満足」

象ヶ鼻へ向かいながら振り返れば、先程尾根ですれ違った方だろうか、なんとも軽快に滑り降りている

ドロップインの場所が1636mピーク、怖くないんだろうか

その昔、リフトでゲレンデの最上部まで上がったものの、あまりの急傾斜にスキー板を担いで下った事を思い出した

象ヶ鼻手前のピークから甲ヶ山、矢筈ヶ山を眺めながら、大休止

帰り、どうする? 地獄谷までグリセードやシリセードという訳にもいかないし 

スキーヤーが颯爽と滑り降りる側をテクテク下るのも・・・それに鳥越峠への登り返しもしんどいな

という訳で、申し訳ないけど大山を串刺しにして北側に下りる事に

大山寺集落から鍵掛峠登山口まで、横手道を歩けば2時間位だろう

10時55分 三鈷峰を見ながら下山開始

地肌が見え出した稜線に、出て来たばかりのコイワカガミの茶色い葉っぱが光っている

ショウジョウバカマの葉っぱもあちらこちらに、稜線一面お花畑になるのが、楽しみ〜

折角だから三鈷峰も寄りたかったんだけど、雪の状態によっては剣谷源頭部のトラバースを諦め

引き返さないといけない事も考えて体力温存、後ろ髪を惹かれながらパス

大山主稜線を眺める この好天気、弥山には登山者が溢れているんだろうな

ひょっとしてと思ったら、やっぱり山友のreikoさんご夫妻が今季最後の雪山を楽しまれていた

三鈷峰への分岐から剣谷のトラバースに入ると、ダイセンキャラボクや雑木が頭を出して歩き難い

トラバースするより象ヶ鼻の上辺りから強引に真っ直ぐ下りたほうが良かったのかも

傾斜が急でステップも作り難いので、アイゼンを取り出す

アイゼンを付ける時の姿勢が悪かったのか、突然グランパの足が攣る「痛ったたた」

まだ先は長い ファイト! 足の痙攣が治まるまで休みながら

遥か下方を覗き込めば、なんと剣谷を遡行して来るパーティーが!

勝間ケルン 夏道はもう少し下だったと思うけど・・・ 剣谷のトラバースは緊張の連続 

ピッケルでバランスをとりながら、キックステップで一歩一歩慎重に核心部を渡りきり

やれやれ、最後の小さな沢を渡れば宝珠尾根だわ

と思った途端、夏道を行ったグランパから「もっと上の方を横切れ!」と声がかかる

12時 上宝珠越、砂すべりを下ろうか?宝珠尾根を下ろうか?思案しながら小休止

春先に多い「ドーン、ガラガラ」という崩落の音が今日は聞こえない

この静けさが余計に不気味に感じるが、取り敢えず取り付きまで下りてみよう

ところが、距離は短いものの垂直に近い急坂の下りで、思いっきり滑り肝を冷やしました

運良く木に引っかかり沢まで一直線にならずに止まったけど、今日一番の難所でした

地獄谷から振子に揺られながらユートピア、そして墓場尾根と目まぐるしいバリエーションが今日の山行の魅力

雪の上を沢山の石や砂が覆っているけれど、今春崩落したものだろう 

時折、カラカラと乾いた音が小さく沢に響く

それにしても墓場尾根とはよく言ったものだわ 見上げれば崩落予備軍がいっぱい構えている

拳大の石が加速度をつけて転がっていくが、宝珠尾根の根元の雪の上を下れば大丈夫そう

兎に角、早く抜けなければとヨーイドンで下り始める グランパは逃げ足が速い あれ? 足は大丈夫なの?

12時45分 元谷のケルン 此処まで下りて来れば、もう大丈夫 北壁を眺めながら、の〜んびり休憩

元谷大堰堤からは、沢山の雪が残る治山林道を歩く

この分だと、横手道も雪が多いだろうな、「車道もあるし何とかなるよ」とグランパ

林道途中で、二俣〜下宝珠越への登山道に出合い、二俣(左)に下る

下り切った所で、大堰堤から佐陀川沿いを下って来る道に合わさると大神山神社奥宮は間もなく

以前より辺りが明るいと思ったら、豪雪で傷んだ大杉の枝が沢山折れ、登山道に落ちている

1時05分 大神山神社奥宮、境内にはまだまだ沢山の雪が残っている

雪の掘割の参道を下って、1時20分 大山寺橋

さあ、どうやって鍵掛峠まで帰ろうか?

2時間の車道歩きは絶対パス、じゃ選択肢は一つ、タクシーよね

 

雪解け水の音、カラカラと小石の転がる乾いた音、そして忙しげな小鳥の囀り

雪が未だたくさん残っているとは言え、春の音が聞こえだした大山に冬の厳しさはもう無い

今日は、雪の温もりを感じながらの雪渓歩き、充実した山行に心も春色でした

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