2011年07月16日  ”天狗塚”

夏山本番 粉ひき唄の里を見下ろす純白の稜線を歩く

 

先日地元で開催された「民謡ふるさとまつり」を覗いてみた

民謡を聴くなんて何年振りだろうか 数ある中でもやはりこの曲に聴き入ってしまった

祖谷の粉ひき唄

祖谷のかずら橋やくもの巣の如く 風も吹かんのにゆらゆらと〜♪

吹かんのに吹かんのに風も 風も吹かんのにゆらゆらと〜♪

祖谷のかずら橋やゆらゆらゆれど 主と手を引きゃこわくない〜♪

手を引きゃ手を引きゃ主と 主と手を引きゃこわくない〜♪

この唄は、祖谷地方で蕎麦、粟や稗などの粉を挽く夜なべ仕事の際に唄われ

そのスローで繰り返しのメロディーは、あたかも外界と隔離されて流れる時間をゆっくり刻んでいるかのようだ

森 昌子が唄う「祖谷の粉ひき唄を何度か聴いていると

 清らかな流れの祖谷川を取り囲むように聳え立つ山々に、唄声が木霊する景色が浮かんで来て

秘境といわれた祖谷地方の谷あいに点在する集落を、稜線から見渡してみたくなった

梅雨も明け季節は夏本番、今日はコメツツジ咲く天空のプロムナードを歩いてみます

 

登山口(7:35)(8:10)1476mコブ(9:15)天狗峠(9:25)(10:05)天狗塚頂上(10:10)〜
(10:45)牛ノ背三角点(11:40)〜(12:25)亀尻峠分岐(12:45)林道      (5時間10分)

西山林道に入り、天狗峠登山口が近付くと林道を歩いている人がいる

もしや? と思ったらやっぱり「てんきちさん」でした 昨年末にはお世話になりました

登山口に着き準備を終えると、てんきちさんも到着された 今日も一緒に歩かせて頂きます

「てんきちさん、改めて天狗塚100回登頂おめでとうございます」 今日は108回目だそうだ

7時35分 さぁ、鉄の梯子を上って出発、取り付きは少し茂っているが直ぐによく整備された道になる

天狗峠までは急勾配尾根に付けられた一本道 植林帯の急坂は最初から堪えます 

早くも汗びっしょり、粉ひき唄を口ずさんでいては足に力が入りません 

てんきちさんがヒキガエルを見つけた、この登山道沿いには多いとか

何とまぁ、私の握り拳の倍ほどもありそうな大物、ちょっと苦手です

   8時10分 モミ林の中の1476mコブで、汗を拭いながら小休止

辺りは地肌が見え笹も目立たない、以前はもう少し茂っていたように思うけど・・・

ダケカンバの大木が立ち並ぶ小さなコルを過ぎ、モミ林の急登の途中で若者が追いついて来た

お話を伺えばなんと同郷でしかもお隣さん 赤石山系や二ツ岳によく登られているとか

若者は急坂をぐいぐい先に進んで行く 「また何処かでお会いましょう」

ダケカンバの小木が目立つようになると 隙間の青空も広くなり間もなく森林限界を抜ける

笹の斜面になると東に西熊山、西に天狗塚から牛ノ背の稜線が見えて来た

寒峰、烏帽子山、矢筈山など祖谷地方を北から取り囲む山々を背負って一歩一歩天狗峠を目指す

9時15分 天狗峠(1800m)、大展望が広がる

誰かに見られているような・・・ひょっとして天狗さんかな?と思っていたら何とろくべえさんでした!

後で判ったけれど、西熊山から周回して下山途中、ライオン岩から天狗峠を眺めていたそうだ

青い空、緑の笹原、夏色に染まった景色を楽しみながら小休止

心地良い風に汗も引いて来た、さぁ、本峰を目指そう

残念ながら、この辺りのコメツツジはほぼお終い、思い描いていた真っ白い珊瑚礁とはなりませんでしたが

鞍部の大岩にイワキンバイが居心地良さそうに揺れている

天狗塚への急坂途中から、天狗峠を振り返えればその向こうに貴婦人三嶺が覗き始めた

頂上手前は満開のコメツツジ〜♪

グランパは純白のプロムナードに埋もれているのか、なかなか上がって来ない

10時05分 天狗塚頂上(1812m)

真下に西山や久保、落合の集落が見える このあたりは東祖谷、冒頭の粉ひき唄の舞台は西祖谷地方

西、東はこの際横に置いといて 嫁が夜なべ仕事で唄いながら粉を挽いた姿は同じだろう 因みに

東祖谷の粉ひき節

嫁じゃ嫁じゃと嫁のなしよ立てなョ 可愛いわが子も人の嫁よ〜♪

うすよ早よ廻え早よ廻うてしまえョ 門に立つ殿待ちかねるよ〜♪

小島峠で菅生見ればョ 相も変わらぬ徳島よの〜♪

いやと言わずに叉来て給れョ 手打ち蕎麦など進ぜやすよ〜♪

灯りが点る家々から、吹き上げる風に乗って唄が流れてくる 粉ひき唄を一番よく聴いたのは天狗さんかな

何時かは歩いてみたいと思っていた南尾根・・・もうダメかな?

頂上からの展望も充分楽しんだので牛ノ背に向かう

急坂を下り、牛の背中に乗る 草原台地に付けられた一本道を三角点に向かう

振り返れば、鋭く天を突く天狗塚が聳える、やっぱりピラミッドはいいなぁ〜

 天狗を写す池は乾いているが、何時か逆さ天狗を見てみたい

もうすぐ牛ノ背三角点 振り返れば天狗塚が遠ざかる これぞ文句無し360度大展望、今日は前後左右忙しい

見上げれば綿菓子のような雲が浮かんでいる、ちょっと背伸びすれば手が届きそう

10時45分 牛ノ背三角点(1757,1m)で天狗さんを眺めながら、の〜んびり

天狗塚山頂に見えていた人影が何時の間にか直ぐ其処に、三嶺から周回して来られた趣深山さんでした

遠くに見える三嶺から、2時間で天狗塚までやって来るなんて!!ひょっとして天狗さんの生まれ変わりかも?

話してみれば気さくな趣深山さん、てんきちさんと暫し山談義に華が咲いている

趣深山さんを見送ってから、11時40分 堰堤へ下り始める

十字路 天狗さんともここでお別れ

今や、牛ノ背〜堰堤は一般ルート、よく踏まれて歩き易い

途中から牛ノ背三角点を振り返る、また来るからね〜

粉ひき唄が聞こえて来そうな祖谷の集落が視界から隠れ出し、間もなく樹林帯に入る

モミ林の中のふかふかの道を下って行く

ジグザグの道を下りきれば分岐点 ここは右へ、まっすぐ行けば亀尻峠

植林帯の中の道を下って行く 谷筋には土石流の跡もあり道が少し判り難い所がある

12時45分 堰堤に下り立ち、林道を駐車地点に向かう

歩き始めて直ぐ趣深山さんが車で下りて来られ、てんきちさんと一緒に駐車地点まで乗せて頂く

ありがとうございました

今日は祖谷の粉ひき唄に誘われて、天狗塚・牛ノ背を周回した

純白のコメツツジに彩られた天狗塚山頂に立ち、開放的な祖谷の山々を眺めていたら

心が一回り大きくなった気がする・・・身体も大きくなったらいいのになぁ

 

いやと言わずに  叉、来て給れヨ〜♪

手打ち蕎麦など 進ぜやすよ〜♪

水捌けの良い急傾斜地の土壌、冷え込み、清らかな水、三拍子揃った条件が祖谷蕎麦を育てている

古老の話を編集した「ひがしいやの民族」(東祖谷山村教育委員会編)に拠れば

焼畑にソバが植えられ蕎麦作りが始まったのは、お大師さんがこの地を巡錫した八世紀頃とされ

来客とか冠婚葬祭の時に、ご馳走として蕎麦が振舞われていたそうだ

帰途、展望所から落合集落を眺める 昔はこの斜面が蕎麦の花で真っ白に染まったのかな?

そんなことを勝手に想像していたらお蕎麦が食べたくなり、京上の「お食事処やなもとさん」へ

先客はてんきちさん、想いは同じですね〜

気持ちの良い笑顔が嬉しいお店の雰囲気と相俟って、美味しいお蕎麦を頂きました

国道沿いの崖に咲くオニユリを見ながら車を走らせ、西祖谷のかずら橋に寄ってみた

祖谷のかずら橋や〜ゆらゆらゆれど〜♪  主と手を引きゃ こわくない〜♪

手を引きゃ 手を引きゃ 主と〜♪  主と手を引きゃ こわくない〜♪

三連休初日のかずら橋は大賑わい、粉ひき唄の唄声をかき消すほどの黄色い声が溢れている

大型バスやマイカーが奥深くまで入り、かつての秘境も今ではメジャーな観光地

祖谷川沿いの集落に住む人々の生活スタイルも、今や夜なべはインターネットかな?

でも一つだけ昔と変わらないものがある、それは・・・・

コメツツジの白い花に包まれた稜線と、そこを吹き抜ける爽やかな風

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