2011年08月15日 ”櫃石島&岩黒島”
潮風に吹かれながら瀬戸大橋橋脚の島を歩く
「この地図の作成に当たっては、国土地理院長の承認を得て、同院発行の数値地図50000(地図画像)及び |
与島FWバス停(9:55)〜(10:10)櫃石島(12:39)〜(12:46)岩黒島(15:21)〜(15:30)与島FWバス停 |
岡山県側から瀬戸大橋を渡ると、最初に通過するのが櫃石島
先日、下津井電鉄跡「風の道」を歩き、鷲羽山から眺めた時、間近に見え気になった島です
岡山県かと思っていたら香川県、下津井瀬戸大橋が跨ぐ海峡にその県境がありました
今日は、巨大な橋脚が建つ島・櫃石島と岩黒島を歩いて、島のロマンを探して来ます
9時55分 与島フィシャーマンズワーフ発の下電バスに乗り、櫃石島を目指す
ちょっと珍しい名前の櫃石島、櫃とは蓋のある大きな入れ物という意味、果たしてその由来が見つかるでしょうか
島内に一般車両は乗り入れられないけれど、昭和63年4月の瀬戸大橋開通以後路線バスが走っている
周囲5,4km、海に囲まれた面積0,85kuの櫃石島は、97所帯、236人が生活している(2005,10)
ループ橋を下り島の中心にある櫃石バス停で下車、日差しは強いが潮風が心地良い
先ずは、がんどの浜の指標に従って進み、下津井瀬戸大橋の下を潜り橋脚の真下に着く
見上げれば、とてつもなく巨大な橋脚が聳え、其処から龍のような鉄の塊が4km先の下津井港に伸びている
屋島の合戦で敗れた平家の落武者が、島民に官女たちの安全を託し宝物を隠したという伝説を思い出し
海原を眺めながらロマンに浸っていたら、そんな想いをかき消すように物凄い音をたててマリンライナーが走り抜ける
引き返しながら、昔大阪城造営時に切出した石を運んだという石切場跡への道を探したけど、それらしき道は見当たらない
車道を南へ下って行くと、宝珠寺と王子神社の標識が並び立つ
真言宗醍醐派 八葉山・宝珠寺への石段を上がりながら長閑な櫃石地区を見下ろす
島の真ん中を瀬戸大橋が通り、バスを降りた所・旧櫃石漁港一帯に集落が固まっている
宝珠寺にお参りして、直ぐ隣の王子神社へ向かっていると「花見山」の標識が立つ
名前からして春の頃は桜が綺麗なのかなぁ、ちょっと大橋に近いのが気になるけれど・・・
王子神社の鳥居を潜ると、雰囲気のある石造りの灯篭が立つ
広い境内では、毎年1月下旬、裃袴姿の男衆が弓を射て家内安全・豊漁を祈願する「櫃石百手祭り」が行われる
江戸時代から600年余受け継がれてきたこの神事は、香川県の無形民俗文化財に指定
世紀の大事業・瀬戸大橋が見下ろす本殿の右側に大岩「キイキイ石」が祀られている
何でも、掌に乗る位の小さな石が年々大きくなってこんなに大きくなったとか!?
櫃石小学校児童七名記と書かれた「キイキイ石の伝説」の案内板に拠ると
昔、島の人がおいせ参りでかわいい小さな石を見つけ、着物のたもとにいれて持ち帰ったのが大きくなったということです。
大きくなる時、きいきいとなきました。櫃石ではねずみのことを「キイキ」といいます。
ねずみがいると言う事は櫃石がゆたかだということで、このキイキ石を祭ることになりました。
今でも、このキイキ石は少しずつ大きくなっているということです。(平成十三年十月)
境内に、櫃石の里の要所要処に祀られていた古来よりの御神・五社様が御遷座されていた
時代と共に島の様子も大きく変わり、参詣し易いようにと一箇所に祀られたのだろう
神社を後にし海水浴場の指標に従って、歩道橋を渡り西へ行くと舗装が途切れ・・・まさか藪漕?「引き返そう」
一旦神社まで帰り車道を南に下って行くと、10分ほどできちんと整備された櫃石新港に着く
波止の先端から眺める穏やかな海原、その向こうに下津井瀬戸大橋の橋脚が聳える
防波堤沿いを南に進んで行くと、「櫃岩」の指標があり茂った急斜面にトラロープが掛かる
ロープを手繰りながら、6,7分ほど登れば、大橋の真下に鎮座する巨岩が現れる
これが、島名の由来となった櫃岩で、平家の落人の財宝が眠っているという謂伝えもあるそうだ
角度によっては獅子の様な風貌だけど、どう見ても蓋つきの入れ物には見えないなぁ
昔から神様が宿る巨岩として崇められて来たんだろう、側に祠が祀られていた
数羽の白鳥が海に舞い降りたかのような斜張橋・櫃石島橋
橋で繋がる先を見れば岩黒島、ほんの一泳ぎで行けそうな距離だわ
島の南端に浮かぶ歩渡島(ぶとじま)は、ひょっこりひょうたん島みたい〜
しっかりした道がつけられ文字通り歩いて渡れるが、時間も迫っているので上陸は諦めて途中で引き返す
漁を終えて帰港した船が、整然と繋留されている
櫃石新港を抜けた所に鎮座する櫃石恵比寿神社、お参りしてから先を急ぐ
バスの時間まで後30分弱、2時間半近くもあるからゆっくり回れると思ったけど案外時間がかかってしまった
櫃石小学校のフェンスに、幼、小、中学校共同制作の櫃石の歌(平成21年5月)が掲げられていた
我らが住める櫃石は 景色をもって名も高い 瀬戸内海の中ほどの 塩飽諸島の内にあり
瀬井 沙弥 与島 岩黒と ともに一つの村となり 北は備前の下津井港 呼べど答えんばかりなり
島のめぐりは一里半 600人のおりどころ かまどの煙100あまり 朝な夕なに立ちのぼる
北は航路の帆前船 あたりの海は幸多く チヌ ハモ メバル タイ サワラ 打ち出す黄金 一萬円
どんなメロディーなのかなと思いながら坂道を上り、下って行くと旧港側の櫃石バス停が見えて来た
旧港に遺米咸臨丸と塩飽水主の顕彰碑が建つ
以前、本島を巡った時、塩飽諸島の水夫が咸臨丸で活躍した書付を目にしたけれど
郷土の誇りとして語り継がれるのは、素晴らしい
秀吉の時代に自治を認められた人名(にんみょう)制の、「札場(ふだば)」が残っているかと探したが見つからなかった
そんな大昔の事とは関係無さそうに、穏やかな海に浮かぶ釣り船
何が釣れているんだろうかなと思いながら眺めていたらバスがやって来た
12時39分 櫃石島を後にする
12時46分 高速道路沿いにある岩黒島バス停に下り立つ
円を描くループ橋越しに、周囲1,7km、面積0,16kuの小さな小さな島・岩黒島の集落が広がる
バス停から、先程歩いた櫃石島方面を眺める、上から見ると歩渡島まではほんの一跨ぎの距離だ
与島方面の背後には、讃岐富士・飯野山がくっきり
あれ、ループ橋は上り車線側にしか無いけど、坂出方面に向かうには、どうしたらいいんだろう?
(島の人にお聞きすると、一旦与島に渡り其処からUターンするそうです)
エレベーターで島に下り、海岸線を回って行く
心地良い風が吹き抜ける岩黒島橋の真下で冷たいゼリーを食べながら、綺麗な三角錐の大槌島を眺める
気になる島が此処にも一つ、あのピークに立てるんかなぁ?
漁港では、子どもたちが気持ち良さそうに港で泳いでいる
もう夏休みの宿題は終わったのかな?
海の神様・恵比寿さまが、子どもたちを見守るように海に向かって建っている
波止で、のんびり釣りを楽しむ人たち 「何が釣れるんですか〜?」
漁港から坂道を上がって行くと、右手に石段が有り奥に鳥居が見える
漁の安全を見守る大天狗神社(だいてんぐじんじゃ)、ご祭神は猿田彦神で島の人たちから「大天さん」と親しまれている
失せ物、失せ人があれば狛犬の足に紐を結んでお祈りすればご利益があるとか
折角だからお願いしてみよう、何か無くなったものがあるかなと考えてみるが???
探しものは何ですか? 見つけにくいものですか? カバンの中も つくえの中も 探したけれど見つからないのに・・・
ウ、ウ、ウ〜ン
最近は、物忘れ症候群状態、考えていたら何時の間にか「夢の中へ」だった
神社から暫く進むと「夢に挑戦」と書かれた坂出市立岩黒島小中学校がある
花いっぱいの花壇を見ていたら先生が出て来られたので、お断りして暫く休ませて頂く
手入れの行き届いた綺麗な学校だなと思って校庭を眺めていたら
「環境美化教育表彰校」として文部科学大臣奨励賞の石碑が建っていた、
ふるさとの 未来を担う 夢をもて すくすく伸びよ 明日創る子ら
現在小学生6人、中学生5人が通っている
学校の直ぐ下が島名の由来となった黒浜海岸ですよ、と先生に下り口を教えて頂く
「ありがとうございます」
道路から4、5分ほどで、黒浜海岸に下り立つ、波打ち際に陣取る黒光りしている岩が、閃緑岩かな?
目の前に聳える斜張橋は、優美な姿で大自然の中に違和感なく溶け込んでいる
空の青と海の碧を分かつように走る瀬戸大橋を見て、人間がこんな物を造っていいんだろうかと
畏敬の念を持ったのも、20年余りも前の事、すっかり見慣れてしまった
海岸から道路に戻り緩やかに坂道を登って行くと、京都から勧請した火伏せの神様を祀る愛宕神社
神社を過ぎた辺りに26,2mの三角点が有る筈なんだけど・・・いくら探しても見つからない
道路脇に刈った草を積み上げていたけど、その下かもしれない
2時 1時間弱で島内を一周してループ橋の所まで帰って来た
道沿いに岩黒小中学校児童が作成した「わたしたちの岩黒島」の表示板が建つ
里美 まき 未来 銀次 萌子 友太 豊 英次 寛大 ゆか 平成18年3月と署名がある
時間もたっぷり有ることだからと、島の産土神を祀る初田神社へ向かう
橋脚の島となって神社の場所が変わったそうだが、鳥居を潜れば広い石段が続く
石段の両側には桜が植えられ、春はピンクのトンネル、秋には桜紅葉が楽しめる
十月に行われる秋祭りには御神輿とともに、小中学生全員が獅子舞や浦安の舞いを奉納するそうだ
地神様や寛政九年岩黒島開発当初に掘削された井戸を見ながら
瓦屋根の上に巨大なループ橋が聳える集落を一回りして、再びエレベータの所へ戻って来た
ループ橋を見上げながら日陰で涼んでいたら何時の間にかうつらうつら夢の中
「こんにちは〜」の声にはっと目が覚めると、自転車に乗った男の子が近付いて来る
「こんにちは〜」と、気持ちの良い挨拶に気分も爽やか〜♪
時計を見ると、バスの時刻まであと15分
エレベーターでバス停まで上がって行くと、先程の男の子もバスを待っている
中学1年生だと言っていたから、あの表示板を作った頃は未だ小学2年生、銀次君かな?
下を覗くと、JR瀬戸大橋線が轟音をたてて走り去った
3時21分 定刻通り、与島行きのバスがやって来た
約9年の月日と約1兆1300億円の工費を費やして昭和63年4月10日開通した世界最大の瀬戸大橋
全長9368m、優美な多島美を誇る瀬戸内海の島々を6つの大橋が結ぶ
初めて目の当りにした時は畏敬の念を抱いたものだが、何時しか当たり前のようにその上を走っている
今回初めて、橋脚の島となった櫃石島と岩黒島を歩いてみて
島の何処に居ても見える壮大な人工物が、回りの自然に上手く調和しているように思えたけれど
ほんの数時間滞在しただけで言うのも憚られるが、真上から落ちて来る轟音は耐え難かった