2012年07月08日  ”石鎚山”

「石鎚山の夏」到来 白装束の信者さんで賑わう弥山から静寂の御塔谷へ


GPSトラックログ (カシミールソフト使用)
この地図の作成に当たっては国土地理院長の承認を得、同院発行の数値地図50000(地図画像)、及び数値地図50mメッシュ(標高)を使用
 承認番号 平18総使 第582号


登山口(7:00)〜(7:50)東稜分岐(8:00)〜(9:30)南尖峰〜(10:10)弥山・西稜(11:40)〜(12:25)夜明峠(12:30)〜天柱石(13:45)
(14:20)十字路〜(15:25)西之川分岐(15:35)〜(16:25)国民宿舎下の駐車場〜展望園地〜(17:00)駐車場     (10時間)


7月1日、待ちに待った石鎚のお山が開かれ、今年もまた夏山本番の季節が巡って来た

梅雨末期の大雨の時期だけど、明日は北の高気圧が元気を取り戻し、一時的に前線を南に押し下げる気圧配置

太平洋高気圧にすっぽり覆われる夏型安定はもう少し先だろうが、梅雨の貴重な晴れ間はやっぱりお山に足が向く

ということで、東稜からお山開き大祭で賑わう弥山に登り、所属クラブの山行に合流して、御塔谷経由で土小屋に帰ってきます

アケボノツツジが咲き始めた5月に訪れてから、早や一ヶ月半、はたして石鎚はどんな色に染まっているかな?



4時半に自宅を出て瓶林を走る 濃いガスの中から出てきた対向車はなんと大型バス 

お山開き大祭期間中(7月1日〜10日)ならではの光景です 土小屋の駐車場は既に満車状態

一番遠い駐車場になんとか停めて、準備し歩き始める 辺りはガスで真っ白、「たぶん雲海よ」と楽観的です

石鎚神社土小屋遥拝殿で登山切符(500円)を受け、肩に土小屋からの登山者の印・青いリボンを付ける

提灯の明りが灯り素敵な雰囲気だけど日差しも無くちょっと寒い、タカネオトギリも雨に濡れて、寒そう

何度か大祭期間中に登ると、「おのぼりさん、おくだりさん」という挨拶も自然と口から出て来ます 

もう下りてきている人がいる まぁ、雨の中、3時から登ったんですか!それはお疲れ様です



雨に濡れた丸太組みの桟道は歩き難い 特に勾配や微妙な歪があるときは要注意

東稜分岐 展望も無い東稜はあまり気が進まないけど、そのうち晴れるだろうとカッパを着て取り付く



倒木を潜り テンニンソウ(?)の群落を進む 夏の終わりを告げる花だけど、もうこんなに茂って足下が良く見えない

濡れた木の根に乗ると良く滑ります シャクナゲを跨いで急坂を頑張る あぁ しんど



登山道にかぶさる腰の高さ程の笹は、雨上がりで水分も豊富 靴もカッパも泥んこになりました

辺りを覆っていたガスも次第に取れ、奥の方には時折青空も見え始めた

大岩の隙間を覗けば、今日のお目当ての一つシコクイチゲの一叢が風に揺れている

実は、タカネバラ、オオヤマレンゲ、ハクサンシャクナゲの三点セットも秘かに期待していたが

時期が早いのか遅いのか或は裏年か? 見ることが出来なかった 残念



矢筈岩の間の濡れた急斜面を笹を掴んで這い上がる

頭上には青空が広がって来て気分はルンルンだけど、何時もながらしんどい滝登りです

東稜コースの中間点、シャクナゲのテラスで一休み 見上げれば岩の殿堂・南尖峰が待ち構えている

笹も乾いてきたのでカッパを脱ぐ 身体が軽くて気持ち良い



東稜後半戦は尾根も細く厳しくなり、岩場は四輪フル稼働で体を持ち上げる

南尾根とのジャンクションに出て、背後から受ける日差しの先を覗き込めば霧と光のファンタジー・ブロッケン

 

ゴジラの背の様な通称「蟹のヨコバイ」を慎重に渡り、高度感を楽しみながら東稜最終章へ

振り返れば、今渡って来た蟹のヨコバイが真下に見える

 

南尖峰直下に立ちはだかる最後の壁 此処をクリアーしなければ主稜に立てません(他にもルートはある様ですが)
 
何時ものはしたない恰好で済みません スパイダー(ウー)マンの様に岩に吸い付きながら壁を攀じ登る

手足が短いのが悔やまれると親に文句言っても詮無きこと 何時もの事ですが、東稜を歩いた翌日は腕や肩が痛くなる

やっと主稜に立つと、ドウダンツツジが労ってくれている 生憎ガスが飛び展望は今一つ


  

南尖峰で寛いでいたら、若者が天狗岳方向からやって来て、「天狗岳は何処ですか?」 「えぇー???」

すっかり緑色に衣替えした天狗岳に向け天狗尾根を進む 大岩の小さな割れ目に咲くニガナが逞しい



天狗岳には、石鎚大神の御子神である「第三十六 天狗嶽王子社」が祀られている

今日はこの後 「第二十五 御塔石王子社」まで5つの王子社を参拝する予定です 

ガスの切れ間に西に目をやると、弥山では人がこぼれそうだが、此処まで足を延ばす人は意外に少ない



天狗尾根に堂々と立つドウダンツツジ、いっぱいぶら下げた花かんざしが可愛い〜

雲海に隠れていた西の稜線が現れ出し、1866m独標の後ろで鞍瀬ノ頭が三角頭を覗かせている

弥山直下の鎖を手繰り、神事が行われている頂上広場に立つ

「ブォ〜、ブォ〜」法螺貝が鳴り響く中、高らかに祝詞を上げる声が清々しい

奈良時代の役行者開山以来、千三百年に亘って連綿と続いて来た山岳宗教が此処に生きている

大祭中の10日間が女人禁制だったのは遠い昔の事で、今は初日だけ、今日は白装束の老若男女が集う

7月1日雨の中、頂上社に鎮座した三体の御神像も夏山開き大祭が終わればお山を下りられる

明後日(10日)、成就社に還御して一泊、翌11日にはご本社へお宮入だそうだ

一年間元気にお山に登らせて貰った感謝の気持ちを込めて、御神像を両の手でゆっくり撫でると力が漲って来た



ご神体というに相応しい偉観、全国七霊山の一つ石鎚山最高峰・天狗岳(1982m)

大展望が広がる場所に祀られている「第三十五  裏行場王子社」

今は、石積みが頂上広場を取り囲んでいて危なくは無いけれど、眼下は絶壁 何でも、覗きの行場だったらしい

今日は人がいっぱいなので覗いてみようにも後ろの人と接触でもしたら大変・・・・次の機会にとっておきます

だけど、いくら混み合っていても、王子社を御膳代わりにするのは一寸いただけないなぁ



南面で日差しをいっぱい受けて咲く、シコクイチゲとコメツツジ

信者さんの白装束を待ちかねたように、純白で可憐な花をつけた姿が愛おしい

2000m近い稜線にも真夏がすぐそこまで近付いて来ている そんなことを感じさせる天空の使者です



西稜で所属クラブの人達に合流 今日はお山祭りを敬遠してか参加者も8人と小所帯です

その中で平均年齢をぐっと引き下げるお二人 「私たち山ガールデビューで〜す 二ノ森さ〜ん よろしくネ」

久し振りにクラブの皆さんとの話に花が咲き、何時の間にやら1時間以上経ちました

さぁそろそろ下山です 先ずは夜明峠目指し、流れに乗り表参道を下ります



夏花に先駆けて咲く三ノ鎖巻道のミヤマダイコンソウは殆ど終わっている

見上げれば夏雲の下でオクサリをかける人や天狗岳に立つ人 まさしく「石鎚山の夏」到来の雰囲気です



あまりの賑わいに誘われたのか、瓶ヶ森も雲間から顔を出し此方を眺めている

ブナに護られて涼しげな「 第三十四 夜明峠王子社」

明治初年まで、此処で松明銭として参詣者一人につき八文を徴収したとか

もし行方不明者がでたら捜索してくれる・・・現在の登山保護料の前身のようなしきたりがあったそうだ

 

表参道から分かれ、緑の中に吸い込まれるように御塔谷へと下って行く 目の中が緑色になってしまいそうね〜 

動物の食害なのか荒廃が進み緑が少なくなった話も聞かれる昨今、こんなにも緑深い谷を抱えたお山は貴重な存在

改めて、故郷愛媛の山・石鎚の素晴らしさを想う 

 

緑の絨毯が途切れると、ブナ、モミ、カエデなどの混合林に入る 

道ははっきりしているが、時折石鎚三十六王子道を示す小さなプレートが木に括られている

10年程前、クラブ山行に参加して西之川まで下った時、生憎の雨だったが、燃える紅葉が未だに目に焼き付いている

道は徐々に斜度を増し険しくなってくる 大剣、小剣の岩峰直下のガレ場は慎重かつ急いで抜ける

 

王子社を示す白いポール横から登山道を少し逸れ、グラグラと頼りなげな鉄梯子を上ってゆく

今にも折れそうだけど・・・キティーさん大丈夫かな? 三人立てばいっぱいの小さなテラス

その奥の岩屋に祀られた「第二十六 窟の薬師王子社」 今日是非お会いしたかった薬師如来様が鎮座する

 

「第二十五 御塔石王子社」 見上げれば天を突く天柱石

愛媛面影に「鬼工神造というべし」と記されている通り、高さ二十五丈八尺、周囲二十二間(実測は谷から30m位の高さ)もある岩塔

この深い谷間で、自然に造られたとはどうしても思い難い、修験者たちに「あめのみはしら」として崇められて来たのだろう

1964年8月28日、愛大山岳部員 山内 徹氏が約2時間でピナクルに立ったそうだ

 

御塔石王子社の傍に「第二十七  祈滝王子社」が並んでいる

この王子は祈り滝、行(ぎょう)の滝、行(おこない)の滝などと言い十二所権現を祀っていて

滝は此処から御塔谷へ標高差100m位(?)下りたところにあるが 嶽にして至って峻嶮で常人は行くことが出来ないそうだ

ならば今日はせめてここでお参りし、何れ機会があれば滝まで下りてみよう

小休止の後、再び下り始めて10分 先達の足が止まる ルンゼに架けられた橋が飛んで無い

リーダー松さんがザイルで支えを作り、なんとか全員無事に渡り終えました

 

尚もドンドン下って行き、人工林の中にやっと十字路 そう此処は登山道の交差点

此処から土小屋に向けて谷を拾いながら標高差約360mをゆっくり稼いでゆく

ガスが無ければ、樹間に向かいの大森山や瓶ヶ森が時折見えるんだけど、今日は足下に神経を集中して歩きます

 

御塔谷本流を流れる水音がだんだん大きくなる 心配した通り足場は水没

リーダー松さんとグランパが、両側から流れに石を投げ込んで足場を作り出したが

水しぶきの掛け合いでお互いびしょ濡れ・・・もう 水遊びなら他所でしてよ 何か恨みでもあるん?

全員無事渡渉出来てほっとしたのも束の間 今度は苔むした丸木橋、一人ずつゆっくりね

 

単調な横駆け道と、緊張する丸木橋が続くが、時折ヤマアジサイの群落に癒されます

西之川分岐、左はツナノ平(なる)の緩傾斜地を経て岩原で御塔谷の道と出合い西之川へ下る

小休止後、指標に従い土小屋目指してゴー、後はルンルンよ〜

 

・・・・・・と思いきや あらら! 鶴ノ子ノルンゼから落ちてくる谷も水量が多い

小さな沢を何度か横切りながら、快適なブナ林の道を進む キティさんと比較したらブナの大きさが判りません

デ〜ンと構える瓶ヶ森が見えないのはちょっと残念だけど、ガスが流れる幻想的な雰囲気もまた良し

 

「国民宿舎石鎚」下の駐車場に飛び出せばゴールは近いが、ちょっと展望園地に寄り道 

可愛いフクリンササユリが咲き始め、モモイロペリカンも沢山スタンバイしていました〜

スカイライン横の駐車場に帰って来たら5時、何と10時間の山行でした

 
誰にも会わない急峻な岩の稜線、お山開き大祭で賑わう参道、深い緑に包まれた静寂の御塔谷

御塔谷の緑がこれほど綺麗だったとは・・・・・ささやかながら新たな発見でした

今日は三様の石鎚を体験しましたが、石鎚の表情は勿論これだけではありません

海岸から一気にせり上がる2000mは伊達じゃない 標高に相応しい谷、岩、植物、稜線等はもとより

その神秘的な姿故に、石鎚山は人との長いかかわりの歴史を持っている

「趣味は?」 と聞かれたら即 「石鎚です」

と答えられる位、これからもこのお山と長く、そして深くかかわっていきたいと思っています

今日は夏山本番を思わせる空と雲の下で、クラブの皆さんと一緒に「石鎚」を楽しむことが出来ました

また何処かで交ぜて下さいね  皆さん、ありがとうございました

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