2012年11月02日  ”野地峰〜黒岩山” 

大ブナロマンを求めて 予土国境に聳える黒岩山へ


GPSの調子が悪くログが取れていませんでしたので、仙ちゃんが2009年に歩いた時のログをお借りしました

山村広場駐車場(8:40)〜(9:40)野地峰(9:50)〜(10:50)黒岩山三角点〜(11:15)八方ブナ(12:00)
〜(12:50)
野地峰(13:05)〜(13:40)山村広場駐車場                     (5時間)


若木が林立するブナの森に入ると心が休まり、 どっしり構える大ブナの前に立つとパワーが漲って来る

ブナがもたらす癒しと活性の効能は、どんなに医学が進歩しても人の手では作り出すことが出来ません

とか何とかいろいろ理屈を並べていますが、要は「山へ行きた〜い」と言えば済む話ですねぇ

ということで今日もブナ林散策、静かに佇む大ブナを目指します でも、今日はもう一つ目的があります

黒岩山の「八方ブナ」と呼ばれている大ブナのウエストを測ってみようと思うんですが、はたしてどの位あるのでしょうか?



別子山筏津から太田尾越経由で大川村に入り、「自然王国・白滝の里」最奥の山村広場を目指す

広場には何張りもの大型テント設営の準備中 明日は大川村の一大イベント「謝肉祭」が開催されるそうだ

山村広場駐車場に車を停めて出発  右下に水気耕団地の白い建物を見ながら

広い林道(トロッコ道跡)を5分程歩き、指標に導かれて登山道(左)に入る

此処が既に標高850mですから野地峰頂上までの標高差は430m 約1時間の素直な登りです



いきなりのジグザグの急坂を頑張れば、伐採地に出て視界が開けて来る

歩き始めて40分程で、この時期余りあてに出来ない水場 設置されている樋は乾いている



水場辺りから、木々が色付きカラフルな登山道になって来た

今日は今季初めての冬型気圧配置、稜線のむこうから低い雲が流れて来て時折黒岩山を隠す 

高知県側はもう少し天気が好いと思っていたけれど、嫌な予感

再びジグザグ道を稜線手前で左に大きく振り戻し、反射板の下を過ぎると頂上に飛び出す



野地峰(1279.4m)は、四国山脈主稜線の中央部に位置する余り特徴の無い山ですが

伊予と土佐を結ぶ生活道として人々が行き交った峠で、伊予側からは朝谷峰と呼ばれていた

かつては白滝鉱山で掘り出された銅鉱石が、索道で野地峰を越え瀬戸内側に運ばれたそうです

殆ど実を落としたマユミの木の側に鎮座するのは、文化12年に建立された三界万霊のお地蔵さん

発起人が城師の人で、施主は三島仁尾の商い人となっているが

山賊も出没したという峠で、古人の悲喜こもごもや鉱山の盛衰を見つめて来た事だろう
 
北側を見下ろせば、富郷ダムと四国中央市の水がめ法皇湖

銅山川と宇摩平野を隔てる法皇山脈には厚い雲がかかっている



小休止の後、稜線を東に辿り2基の反射板の間を抜け、黒岩山を目指しゆっくり下ります

以前は藪漕だった道も整備され、スズタケを掻き分ける所もあるけど足下は確りしている

登りに差し掛かると、ぼつぼつ紅葉したブナが現れ良い雰囲気の道になって来た

 

尾根の北側はブナ、南側は真っ赤に色付いたドウダンツツジと、稜線を挟んで棲み分けている

南面は風も強くて、ブナの様に大きくなる木は育ち難いのだろうか?

益々濃くなるガスの中、山頂(黒岩山最高点1350m位)手前の急坂を頑張る

 

山頂直ぐ手前に左に下る道がある これが主稜線の縦走路だろう (左の写真は振り返って撮っています)

山頂はガスが濃く辺りが見えない上に、スズタケが道を隠している

三角点は何処よ?と、急坂を下りて行ったけど何処にも見当たらない 一寸方向感覚が鈍ってたみたい

ぜーぜーと登り返して尾根を進み、スズタケを潜り抜けた高知県側に有りました

まぁ三角点をこんな所に置かなくても、最高点に置いたらいいのに

 

濡れた笹を掴みながら歩いたのでフリースの手袋はびしょ濡れ、指先が悴んで冷たい

 未だ身体が寒さに慣れていないので余計に堪えるんだろうが

手袋を取り換えても、暫くは感覚が戻らない  そろそろホッカイロ必携かな

三角点から引き返し、最高点(左写真の正面のコブ)を越え主稜線を右へ 途中のブナの木に赤い矢印が有る

急坂を50m程下ると、右下の窪地へ緩やかに流れ込む斜面に大ブナが見えて来た



うわぁ〜、聞きしに勝る巨大ブナ! 「八方ブナ」の名前通り、四方八方に手を拡げ広い空間を独占している

100年?200年?それとも300年? 以前、ブナの寿命は長くて300年くらいと聞いたことがあるけれど・・・

悠久の時間の試練を経て、辺りに凛とした気を放つ

大きいだけでなく、肌に艶があり勢いを感じさせるその存在感は抜群だ

(角館町和賀山塊の日本一のブナは推定樹齢700年以上だとか)



何処から見たら全体が撮れるのかと、ブナの周りを回ってみたけれど

あまりの大きさに、どうしてもレンズからはみ出してしまう

 ちょっと怖いが、お酒に酔った八岐大蛇が居心地の良い場所を謳歌しているように見えなくもない



あれ、何時の間にかガスが晴れ、空が少し明るくなって来たよ〜♪

見上げれば、今が盛りの黄葉が薄日を受けて黄金色に輝き出した

もう葉っぱは落ちて冬支度かなと思いながら来たのに、嬉しい誤算

落葉を踏む音しか聞こえない静寂の森で、大ブナの息吹を感じながら大きく深呼吸してみた



そろそろ今日の目的、八方ブナの身体測定にかかります

 木のサイズは、H(高さ) W(葉張り) C(目通り)で表記するそうです

特にC(目通り)は、木の大きさを決定づける一番大事な要素だと思います

目通りとは、国土交通省の基準(環境省は別基準)に拠ると、地面より1,2mの幹まわりのサイズで

八方ブナのような「株立ち」の場合は、地上1,2mの幹まわりの合計の70%を言うらしい

ちょっと失礼して メジャーで測ってみると、8本ある幹まわりの合計は15m80cm 7掛けで、ざっと11mとなります

(因みに根元まわりは6m15cmでした)

日本最大のブナ・秋田県角館町和賀山塊のブナは10,1m

勿論、今回の測定は少々アバウトですが、日本一のブナより大きいの!? 

八方ブナに関しての公式な記録は無いんでしょうかねぇ?

そうそうこの辺りは県境尾根、この場所が四国中央市側だというのなら、大ブナは「市の宝」

何となく嬉しいけど・・・ まぁ、そんな小さい事どっちでも良いじゃない 「四国の宝よ!」


 
八方ブナに圧倒されっぱなしで、暫くは周りを見る余裕が無かったけど

落ち着いてよくよくまわりを見渡せば、北面にも立派なブナ林が広がり眼を楽しませてくれる

大ブナに充分パワーを貰って十万馬力、鉄腕アトムになった気分で下山です 

分岐までの急坂途中で振り返れば、端正な姿の大登岐山(1477m)



ガスが晴れ見晴らしが良くなった尾根に、白い反射板が光っている

 右後方の赤石山系は相変わらず雲の中、回復にはまだまだ時間がかかりそう

左の大座礼山(1587.5m)の頭が白く見えるのでズームしてみたら、霧氷!

 季節は巡り、お山はそろそろ冬が近い

振り返れば、黒岩山上空に雪雲崩れのような分厚い雲が流れてゆく



野地峰頂上直ぐ西の展望場から山村広場を見下ろすと、設営が終わったテントが整然と並んでいた

それにしても、沢山のテント! 明日は天気も好さそうだし大賑わいだろう

さぁ、のんびり下りようか


富郷ダムから県境に聳える山々を見上げ、何時か「八方ブナ」に会いたいと思っていた

今秋、権田山の大ブナに続けて大座礼山の大ブナに会い、その想いが一層強くなる

何時かじゃなくて、今しか無い! と、出かけた黒岩山で感動の出会いが待っていました

神秘の世界に迷い込んだ錯覚にとらわれそうな妖しいまでの姿で、霧のベールから突然現れ

そして、スポットライトに照らされて黄金色に輝き出した大ブナ 、これ以上の演出があるでしょうか!

そう、まるで宮崎駿のファンタジーの世界に浸っているような温かい気持になりました

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