2012年11月16日  ”駒 背 山”

伊尾木川源流域に聳えるブナの山


GPSトラックログ (カシミールソフト使用)
この地図の作成に当たっては国土地理院長の承認を得、同院発行の数値地図50000(地図画像)、及び数値地図50mメッシュ(標高)を使用
承認番号 平18総使 第582号



市道崩壊地手前駐車(11:45)〜(12:30)登山口〜(13:30)大ブナ〜(13:50)頂上(13:55)
(14:45)登山口(15:00)〜(15:40)駐車地点                   (3時間55分)


「面河山の大ブナ」との対面は来年に持ち越しとなったが、想いを温めているだけでは何ともすっきりしない

どこかに未だ見ぬ大ブナはいないものかと思い巡らせていると・・・・そうそう

安芸市と物部村との境にある駒背山(1311m) 余り聞き慣れない山名だけど

「山と渓谷」2003年10月号に

「高知県東部では貴重なブナ天然林で、4mを超えるブナの巨木がある」と紹介されていたのを思い出した

この辺りは未踏のエリアで興味深く、コースタイムも2時間20分ほど ということで早速会いに行って来ました


安芸市でR55から分かれ伊尾木川沿いに県道207を北上、別役公民館、土居集落を過ぎると通行止め

手前の広場に駐車し、歩き始める 直ぐ先の橋が登山口だとの思い込みで左岸やら右岸やら道を探して

うろうろ歩いてみるがどうもおかしい 入口には案内板があると「ヤマケイ」に書いていたけれど・・・

多分大雨で道が無くなり案内板を外したんだろう、と勝手に解釈

もうヤッコソウ鑑賞に変更しよう、と車に帰ったところに上がって来たのが四電の車 

駒背山登山口を聞いたけれど「知らない」という事で

諦めて帰っている所へ四電さんが引返して来て、通行止め地点から4km程上だと教えてくれた(感謝)

地図持ってないの?と言われそうですが 勿論持ってますよ 確認したら確かに登山口はまだずっと上

無意味な1時間を過ごしてしまったわ 「地図係、しっかり仕事してよ!」

11時半を過ぎていたけれど、この機会を逃したらもうよう来んかもしれんと、仕切り直しでした



今夏の大雨で道路が欠壊、山側に人一人が歩けるぐらいの幅のアスファルトが残っているだけで大きく抉れている

沢筋は道を隠してしまう程の大量の土石流 想像を絶する傷みようだ 復旧出来るのかしら?

 

かなり上がって来たところで車を停めた方を眺めると、紅葉の向こうに最奥の集落・土居集落が見える

大雨の時はさぞや怖い思いをされた事だろう

地図で見れば30分くらいかなと思ったけれど、結構長い 歩き疲れた頃、登山口に立つ案内板が見えて来た



「ヤマケイ」の説明に拠ると、「長年にわたり大切に守り継がれてきたブナ林を

一昨年(2001年)、所有者の林業家がそっくり市に寄付したもので、あまり知られていなかっただけに

登山者、とりわけブナ愛好家の注目を集めている」と紹介されている

案内板には、ブナ林探訪や子どもたちの体験学習の様子、四季折々に咲く花々が載せられている

木々の息吹を感じながら歩いた子どもたち  お山から貰った大きなお土産は一生心に残る事だろう

 

お目当ての大ブナはチャレンジコース沿いにあるそうだ 今日は、チャレンジコースからゆっくりコースへと周回してみます

登山口辺りは、真っ青な空をキャンバスに目にも鮮やかな紅葉、黄葉で光り輝いている

ここから頂上まで標高差僅か420mの間に、季節は錦秋、晩秋、初冬と移ろい、それぞれの色合いを楽しみながら上って行く

早速、急斜面に取り付く 木段を敷いて整備されていたのだろうが

沢沿いの道は傷みやすい上に、一面落葉が敷き詰められ、登山道はかなり薄くなっている

両コースの分岐からチャレンジコースに入って直ぐに橋を渡ると「ヤマケイ」には書かれているが

それらしき橋は見当たらない 適当に谷を渡って対岸の自然林に入り、微かな木段を見つけ、登山道を確信する

 

しんどいジグザグ登行が続くが、高度が上るに連れブナが目立つようになる
 
あらら、砂礫が流れて道が消え、すり鉢の様な急斜面が目の前に現れた 
 
下の沢までは30mほど(怖) 手掛かりになる木々も無いし、滑り落ちれば上がっては来れないだろう

高巻も難しそうなので、一歩一歩慎重にステップを切りながら進む ちょっと緊張でした

 

緊張の後は目にも鮮やかなブナの黄葉〜♪

最近は訪れる人も少ないのか、久し振りの登山者に眩しいほどの姿を精いっぱい披露してくれている

高度を上げるにつれ、秋がだんだん小さくなってくる  振り返れば、山名の特定に自信は無いが高ノ河山だろうか?

高ノ河山は、アケボノツツジやゴヨウツツジが綺麗だと教えて頂いたことがある

春から初夏にかけて四国のいたるところで可愛いピンクの花が咲く 改めて山国四国の魅力の厚みを感じます



周りの木が殆ど葉っぱを落とした林の中で、鮮やかに着飾ったブナ 思わず笑みがこぼれます

環境省の基準では、地上約1m30cmの位置での幹回りが3m以上の木を巨木というそうだ

この木は、巨木と呼ばれるのはまだまだだけど 人で言えば脂がのりきり始めた30代、団塊Jrくらいかな?



冬枯れ間近のブナ林を わくわくしながら歩いていると 登山道に大きい根を晒したブナが現れた

日差しを浴びて両手を広げているこのブナが一際でかい 周りをぐるっと一回りしてみる



これが「駒背山の大ブナ」だろう 登山口に有った案内板には樹齢400年と書かれていた

三菱財閥創業者岩崎弥太郎が、安芸に生まれて約180年 ひょっとしたらこのブナを見たかもしれない

いや、弥太郎は山より海、ブナには関心が無かったかも?・・・・ 

余談でしたが、そんなことを考えるだけでも楽しくなってくる

メジャーを回してみると4m50cm どっしり構え、何事にも動じない大将の様な貫録が有る

この地に生まれ、春には若葉を飾り、夏には日差しを遮り、秋には枯葉を落とす

気の遠くなる年月大地を守り、養分を与え続け、豊饒の森を創って来た

ブナが葉っぱを落とすエネルギーは、芽吹きの時の数倍必要だと聞いたことがある

一年の仕事を終え冬待ち姿の大ブナに、思わず「ごくろうさん」と声をかけたくなってくる



少し上のブナも大きい 4m60cmありました 辺りを見回して大ブナと思えるのは、この2本

「若いもんも逞しゅうなったき、ぼちぼちバトンタッチせんかえ?」 大ブナ同志のそんな会話が聞こえて来そうだ 

大ブナの上には、肩の重荷を下ろし来るべき年金生活に備える団塊世代のダンディーブナ 

そんなにのんびり寛いでいる場合じゃありませんよ 森の大将の仕事が待ってま〜す

何cmもの厚みの腐葉土が敷き詰められた、スポンジの様な道を登って行く

樹齢200年のブナ1本の保水力は10トンというのも頷ける

 

避難小屋がある広場の直ぐ上が、頂上稜線  一歩一歩落葉を踏みしめて登ります

稜線手前がコース分岐点 帰りはゆっくりコースにしようかと思っていたが、どうも道が分かり難い

秋が深くなり、未だ2時前だというのに木の影も長くなってきた 大ブナにも会えたし周回に拘らず無難な道を選ぼうか

この辺りが一番高いようなので、此処が駒背山(1311m)頂上だろう 薄っすら雪が残っている 

確かに馬の背中のようになだらかです 再来年の午年にはブレイクの予感がする

三角点や山頂標識など何も無い 後からログを見たら頂上はもう少し東だったかもしれません

 

冬支度した木々の間に北を見れば、青空の下に薄化粧した気高き山・三嶺

小休止して来た道を引き返す 私有林を登山者に解放してくれたからこそ大ブナに会うことが出来た

地権者に感謝しつつ、明るいブナ林の落葉道を下ってゆく 右写真は登山口間近の両コース分岐点 

頂上から50分で登山口 軽い食事をして駐車地点に向かう 

車道歩き途中何度も振り返り、駒背山を探すが外見的な特徴が無くどれだかよく分からない

大ブナの山という魅力を持っているにも関わらず、その寡黙さがいじらしい

車道歩き40分で駐車地点に帰って来た

駒背越隧道を抜け木頭村へ出れるのなら、高ノ瀬峡と別府峡の紅葉巡りもと思っていたが止む無し

名勝に引けをとらない伊尾木川沿いの紅葉を楽しみながら、安芸市へと引返す

今日は4時間足らずでしたが、天気も好く、期待以上の大ブナに会え十分納得のお山でした


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