2013年08月02〜03日 ”蝶ヶ岳・常念岳”


今夏は東北のお山に登り、八重の故郷・会津を訪ねたいと思っていたけれど

太平洋高気圧の勢力が弱く、高気圧の縁を回り込むように南から湿った空気が入り込み

各地にゲリラ豪雨をもたらし、なかなか夏型が安定しない

来週、再来週は行けそうにないので、東北は諦め信州に変更

で、何処にする?

針ノ木大雪渓も歩きたいし、不帰ノ瞼も眺めたい、それに裏銀座も・・・挙げていたらきりがありません

取り敢えず登山ガイドを数冊持ち、天気予報をチェックしながら安曇野まで走る事にする



昭文社・山と高原地図38より

1日目 (8月02日) 三股〜蝶ヶ岳

三股登山口(7:05)〜(8:40)まめうち平(8:55)〜(11:00)最終ベンチ〜(11:40)蝶ヶ岳山頂 (4時間35分)


長野道を走る度気になっていたピラミダルな山容の常念岳、その天辺から安曇野を見てみたい

勿論、常念岳は槍・穂連峰の展望台 南の蝶ヶ岳を繋いで槍・穂の大展望に酔ってみよう

安曇野ICを下り、本沢沿いに烏川林道を遡り、登山口のある三股(みつまた)を目指す

6時半、70台ほど停められる駐車場は既に満杯 林道を引返し広い路肩に停めて準備する



瀬音を聞きながら、ウォーミングアップの林道歩き20分程で三股登山口(1350m) 

(此処まで車は入れない、停められている車は管理棟の方の車)

辺りには僅かながらブナが見られる 

管理棟の方に登山届を出し出発 登山道に入って直ぐの橋を渡った所が分岐

右、常念岳(7.1km) 直進、蝶ヶ岳(6.2km)の道標がある

三股から常念岳・蝶ヶ岳を日帰り周回する人もいるそうだけど、私たちには次元の違う話

 どっちの山小屋で泊まる? 常念小屋だと、翌朝また常念岳へ登り返さないかんねぇ

ちょっとでも楽そうな方ということで、蝶ヶ岳ヒュッテに泊り時計回りとする



本谷に架かる鉄橋を渡り、大カツラが点在する雰囲気の良い沢沿いの道を進む

「力水」 最後の水場らしい 今日は暑さも考慮し、水は十分持って来た



くりくりの眼が可愛い 「ゴジラのような木」 大きな口から火を吹かないでね〜

駐車場を出てから1時間弱(登山口からは30分) ちょっとお腹が空いて来たので、ゴジラさんの側でおやつ休憩 

 登山口から1時間35分で「まめうち平」 今日は蝶ヶ岳までなのでのんびり大休止 

蝶ヶ岳ヒュッテのキャンプ場でテント泊だと、大荷物の大学生のグループが爽やかな挨拶を残し出発した 



頂上へ着く頃は晴れるよと濃いガスの中頑張っていたら、標高2000mを過ぎた辺りからパラパラと雨

程なく止んだのでレインを着るほどでもなかったけど、そろそろ常念岳の稜線が樹間越しに見える筈なのに・・・残念

林床のギンリョウソウやゴゼンタチバナには、嬉しい雨だったようです



最終ベンチ(2500m)を過ぎた辺りから、シナノキンバイ、オオサクラソウ、ハクサンフウロが登山道を彩る

蝶ヶ岳ピストンだというソロの男性が下りて来て「槍穂はガスの中、何も見えんかった」と

ジグザグと高度を稼ぎ、ダケカンバやナナカマドの潅木帯を抜けると、大滝山分岐

大滝山方面に進むと大きなお花畑があり、そこは蝶ヶ岳の由来になった蝶の雪渓が残るそうだ

相変わらず濃いガスに包まれているが、目の前にお花畑が飛び込んで来る♪



コバイケイソウ、アオノツガザクラ、キバナシャクナゲ等々、斜面一面お花畑〜♪



足下のイワカガミ、ハイマツ帯から顔を出すハクシャンシャクナゲが「頂上までもう少しよ」と声援をくれる



キャンプ場に出るとすぐ下に蝶ヶ岳ヒュッテ  左へ少し緩やかに登り返すと、新しい標柱が立つ蝶ヶ岳山頂(2677m)

展望は余り期待していなかったが、雲の隙間が徐々に大きくなりいい雰囲気になってきた



青空の部分が広くなり、槍・穂連峰が全容を現し始めた

暫く展望を楽しんでから、今夜の宿・蝶ヶ岳ヒュッテで受付を済ませ、周辺を散策

長塀尾根、常念岳、三股の三方面から登山者が次々到着し、ヒュッテ周辺は賑やかになってきた

着いた時は二張だったテン場もカラフルになっている (ヒュッテの後ろがテン場、その奥が蝶ヶ岳頂上)

まめうち平で会った大学生の方々も、今夜の寝床は確保出来たかしらん?



「瞑想の丘」で寛ぐグループ 

槍穂の展望やガスの中に浮かぶブロッケンを楽しんでいたら

夕刻になって、やっと常念岳が精悍な姿を現した 明日、お邪魔しますね〜♪


夕食は5時から、70人ずつ3班に分けて

柔らかく炊けている御飯も、お味噌汁も美味しかったので、ついお代わりしました

8時前、早々と就寝



2日目 (8月03日) 蝶ヶ岳〜常念岳〜三股登山口

蝶ヶ岳ヒユッテ(4:30)〜(5:20)蝶槍〜(6:20)2592mP〜(7:10)最低鞍部〜(8:35)常念岳(9:10)
(10:00)前常念岳(10:15)〜(10:55)樹林帯〜(11:30)尾根分かれ〜(13:10)三股登山口 (8時間40分)


3時半頃、外に出ると天の川が流れ満天の星が輝いている 素敵なご来光が見られそう♪

出発準備をして瞑想の丘へ、数人のカメラマンが薄明るくなった東の空を眺めている

日の出を拝んでから出発しようと思っていたけど、じっとしていたら寒いのでヘッドランプを点けて歩き出す

梓川を挟んだ涸沢の方を見ると、小さな光がザイテングラードへ向けて進んでいる



東の空が金色に輝き出すと思わず手を合わせます さぁ 長くてしんどい一日の始まりです

ご来光を楽しんでいたら、若いグループの方が追い付いて来て「ライチョウがいますよ〜」と教えてくれた



槍穂のモルゲンロートに酔いながら、贅沢な稜線歩き〜♪ 二日酔いが心配です

何処までも続く白い海と赤い槍・穂、 昨日の天気予報からはこれ程までの山岳ショーは期待していなかった

ひょっとしたら縦走を諦め、蝶ヶ岳ピストンという選択も頭の隅にあったのに・・・山の神さんありがとう

アサイチの新鮮な空気をたっぷり吸いながら、最高のロケーションに気持ちも足取りも軽い



蝶槍までは小さなアップダウンをこなしながら、だだっ広い二重山稜地形に付けられた砂礫の道を進む

横尾分岐 昨日登ってこられた方が、横尾からヒュッテまで5時間と話されていたが、急坂が続く厳しい道のようです

三角点(2664.3m)から振り返れば、優しい山容の蝶ヶ岳と大滝山



雲上に浮かぶのは南アルプスと、世界遺産♪ 「おめでとう!」

此処で、先程のグループの方は朝食の準備を始めたのでお先に失礼する

目の前に蝶槍のピークが迫って来る 巻くことも出来るそうだけど、当然登ります



ほんの少し登れば、岩だらけの蝶槍ピーク  目の前に常念岳が全貌を現してくる

常念岳から、右へ延びる稜線を辿れば前常念岳、そして雲海に落ち込む急斜面

じぇ、じぇ、じぇ!、あんなところを下るの!大丈夫かなぁ?

夢見心地を切り替えてここからは体力勝負です、蝶槍から砂礫の道を下ってゆく 



槍・穂に落とす蝶〜常念の影を見ながらドンドン下ってゆく 逆コースはこの上りが案外きついだろうな

大きなダケカンバが目立つ鞍部から、2592mピークまで登り返し、頑張ろう!

花を楽しみながら斜面を登っていたら水を湛えた小さな池塘があり、側にサンカヨウが咲き残っていた



段々高度を稼いでゆくと、ニッコウキスゲが咲き誇るお花畑

振り返れば、天を突く蝶槍ピーク、その背後に焼岳、乗鞍、御嶽山が現れる

ハクサンチドリ、テガタチドリ、グンナイフウロ、ハクサンフウロ、エゾシオガマ等々、眼を楽しませてくれる

2592mピークに飛び出しヤレヤレと思ったのも束の間、またまた下ってゆきます



登り返し途中、青年が追い付いてきた 「今日は何処まで?」 「大天井か、出来たら西岳まで」

明日は槍か、いいなぁ 大きいザックの割には足取りは軽い

ソロあるいはグループ テン泊あるいは小屋泊まり 北アの稜線にはそれぞれの夏がある

2512mの小ピークに立つと、厳つい姿の常念岳が迫って来た

鞍部まで下る途中、今日初めて蝶ヶ岳へ向かう登山者とすれ違う

さぁ、登り返し約400m、先ずはあの尖がりまで ファイト!



花崗岩の岩礫の道が続き 歩き難いけど、岩が乾いているので踏ん張り易い

尖がりに立つと、う〜ん 頂上まではまだ遠いなぁ



今度はあの岩までと目標を定めて イ〜チ、ニイ〜、サ〜ン と一歩一歩重い足を運んでゆく

天気が好いのが救いです これで、ガスに巻かれ雨でも降ってたら地獄の山行よ

歩幅が狭くなり、あと100歩、あと80歩と目標の歩数が減ってくるにつれ頂上が近付いてきた



山頂手前から歩いてきた稜線を振り返る

ヤッホー、常念岳山頂(2857m)  常念山脈の盟主に相応しい高度感と大展望です

山頂に常念坊の祠が祀られており、昔は、常念岳ではなく常念坊と呼ばれていたそうだ

その由来には諸説あるが、日本百名山(深田久弥著)には

経を唱える勤行の声と鐘の音が頂上から風に乗って谷間に聞こえてきたので、常に念じている僧がいる山という説と

麓の酒屋に現れて奇跡を現したという素性の知れぬ僧を人々は山の精の化身として常念坊と呼んだという説が載せられていた

春になれば、常念坊が徳利を下げた姿にみえる雪形が現れ、安曇野に田植えの時期の知らせる



槍・穂の前衛・常念山脈(北部)と、燕岳から槍ヶ岳に至る表銀座

背後には、立山、剱岳、後立山連峰、さらには鷲羽岳、水晶岳などの黒部川源流の山々



狭い山頂から少し離れて、槍・穂の大展望に酔う

大キレットから頭を覗かせているのは、霊峰白山!

 欲を言えば、安曇野を眺めてみたかったけど 東側はまだ一面の雲海

そろそろ下山 三股登山口まで標高差約1500mを一気に下ります



常念乗越への道を左に分け、前常念岳を目指す(左写真は振り返って撮っています)

常念岳を振り返る 足下には綿毛になったチングルマ



雲海に浮かぶ前常念岳への緩やかな下り 道は確りしているけど、ガスが出たら分かり難い箇所もある

ぼつぼつ登山者に会い始める お聞きすると、三股を4時に出発されたそうだ

暫くすると、道と反対方向から若者二人が現れた

道を間違えたらしく、岩角を掴みながらのサバイバルだったとか

「訓練、訓練」「オレ、訓練は要らん」と言いながら、爽やかに登って行った



前常念岳(2661.8m) 三角点のすぐ下に、熊でも潜んでいそうな雰囲気の石室(避難小屋)

ヒュッテで作って貰ったお弁当を広げ食事休憩 これからの大下りに備えます



前常念岳から樹林帯までがこのコースの核心部分

巨岩が折り重なる急斜面を慎重に下る

ソロの男性が岩を掴みながら上ってくる 「下りも大変だけど、登るのはしんどいですねぇ」

「分かり難い所もありますので、岩に付けられたマークを見落とさないようにして下さい」

「ありがとうございます」「お気をつけて〜」と、擦れ違う



樹林帯までに、30人位の方とすれ違う

気温が上って来たので、背中に日差しを浴びながらの急登はかなりきついだろう

「ここは北アルプス3大急登に入って無いん? 燕岳よりきついわ」と、言いながら賑やかに登っている



前常念岳から50分弱で低い梯子を下り樹林帯  冷んやりとした空気に、ほっと一息です

念のため熊避け鈴を鳴らしながら樹林帯を進む ぬかるんだ道で靴は泥んこ状態

緩やかな尾根道を30分強で尾根との分岐 指標は落ちているが堀金村が設置した標柱がある 

 木に付けられた指標は、4.1と3.1以外の文字は読めない 多分、常念岳と三股への距離だろう

ガイドに拠れば、樹林帯にコンクリートの土台が残る標準点櫓跡(2207m)があるが・・・よう見つけんかった

 ともあれ、後800mほどの下りだから2時間弱で登山口へ着けるかなと、一服してから下り始める



急斜面だけど、登山道は小さい雷光状につけられ歩き易い

ただ、一面に笹が茂る針葉樹だけの同じような景色が延々と続き少々退屈です

本沢の瀬音が大きくなり、やっと蝶ヶ岳迂回路指導標 ここは直進



大きなトチの木を見て、蝶・常念分岐点に下りて来た あと橋を渡れば登山口、ヤレヤレです

の〜んびり本谷の流れを見ながら歩いて駐車場に着くと、タクシーが一台停まっている

常念小屋からだという方を急斜面で追い越したけど、あのご夫婦を待っているんだろうか? 

駐車場は相変わらず満杯、其処から駐車地点までも所狭しと車が停められている

今日の山小屋は大忙しだろうなぁ、と言いながら登山靴を脱ぐ

足裏がフヮーっとして来て、なんと気持ちの良いこと! この感触は登山する人にしか味わう事が出来ません

車を走らせると、道路脇に駐車の列が延々と延び、ゆうに昨日の倍は超えていそう

山小屋がパンクするかも!

渓谷入口にある「ほりでーゆー四季の郷」で2日分の汗を流しさっぱりし、安曇野へ

道祖神の里から見上げる常念岳は雲の中、器量良しの姿は見られませんでしたが

標高差約1500m、歩き堪えのある面白い山でした

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