2013年11月30日  ”引地山・皿ヶ嶺”

 早過ぎる冬の訪れに戸惑う、ブナの山


GPSトラックログ (カシミールソフト使用)
この地図の作成に当たっては国土地理院長の承認を得、同院発行の数値地図50000(地図画像)、及び数値地図50mメッシュ(標高)を使用
承認番号 平18総使 第582号


A 県道23駐車地点  B 鉄塔No.155   C 鉄塔No.154  D 鉄塔No.153
E 赤柴峠  F 迂回路分岐  G 十字峠  H 風穴  I 水の元  J 瞽女石

駐車地点・鉄塔No156(8:05)〜(9:10)鉄塔No153〜(10:00)赤柴峠引地山往復赤柴峠(10:15)
(10:50)
迂回路分岐(11:00)〜(11:25)尾根道合流〜(12:00)十字峠〜(12:15)皿ヶ嶺(12:40)
(13:05)
愛大小屋〜(13:45)風穴〜(14:05)水の元〜(14:50)駐車地点     (6時間45分)


紅葉に浮かれる気持ちを引き締めるかのように、一昨日(28日)松山に初雪が降った

例年より23日も早く、11月に降雪が観測されたのは35年振りだとか!

昨夜(29日)の冷たい雨は、また山に雪を降らせた事だろう

先日来、右足の付け根が痛く、今朝もこむら返りを起こしたから、ちょっと心配なんだけど

真っ白い雪道の誘惑には勝てない ゆっくり歩けば大丈夫よと、ブナ林散策も兼ねて皿ヶ嶺へ向かう



県道23号を進み、鉄塔No.156側の広い路肩に駐車(事情があって香川ナンバーのレンタカーです) 

寒々とした皿ヶ嶺を眺めながら準備をしていると、通りかかった地元の方が「今朝は冷えるぞね」と心配そうに言われた

ホッカイロを両ポケットに入れ、県道を少し引返し、「赤柴峠100分、水の元55分」と書かれた道標に従い農道を歩き始める

10分弱で、鉄塔No.155の分岐 下山時歩く予定の「瞽女石経由皿ヶ嶺近道」を左に分け、赤柴峠(右)を目指す



あらら、昨夜の雨で飛び石が水没 ほんの少しの距離だけど、この冷たい日にザブザブという訳にもいかず

石を何個か積んで足場を確保、少し靴を濡らしたものの無事通過です

舗装道路に出て暫くすると、赤柴峠登山道入口の標識 

目指す皿ヶ嶺は遠いなぁ、稜線付近は冬の装いだけどこの辺りはまだ秋が残っている  

鬱蒼とした植林帯の中、早速のジグザグ坂を気合を入れて登ってゆく

 

標識から10分で鉄塔No.154が建つ開けた台地に出る 奥の尖った所が赤柴峠

よく踏まれた植林の急坂を頑張り、道がトラバースし始めると四電が設置したステンレスの橋が架かる

この鉄塔巡視路が無ければ、このコースは歩けない 有り難いことだ

 

鉄塔No.153からは松山の市街地が一望出来る

鉄塔巡視路を右に送り、尾根から分かれ急斜面につけられた狭い登山道をゆく

上から雪の塊が落ちてくるし、下からは鉄砲の音が聞こえて来て何となく落ち着かない 早く峠に出たいわぁ

862pで枝尾根に出て、積雪が次第に増して来た急尾根をひたすら頑張ると、右が自然林になり明るくなって来た

 

2時間近くかかって、やっと赤柴峠に飛び出す ヤレヤレ

此処が上林から久万へ越す最短路である

当時は、上林の人たちが久万町へ、山仕事に使う土佐の打刃物を買うのによく通っていたそうだ

折角だから、引地山を往復して来よう 西に高い所は見えないけど?と思いながら4分も進むと引地山(1026.8m) 

その昔は道後平野も良く見えていたそうだけど、今はカラマツやクロマツが成長し視界を遮っている

展望の無い頂上は、即Uターンし赤柴峠で小休止



赤柴峠から20分程進んだ笹藪で、大ブナが呼んでいるではありませんか!

ウエストを測らずに通り過ぎる訳にもいかず、スズタケに乗った雪を叩き落としながら側へ 4m65cmでした

根元近くは裂け始め、枝を覆う寄生木が気になりますが、久々に4m超ブナとの出会いです

所々で寄り道しながら、ルンルン気分で明るいブナやカラマツの林を進んで行く

 

1058pを過ぎたところに立ちはだかる急尾根 迂回路もあるが、さてどうしよう

古地図には、面白嶽と興味をそそる記載もあり、グランパは行きたそうだけど・・・

でも、ちょっと足が心配  雪も深そうだし、岩は冷たいだろう やっぱり止〜めた

迂回路を進み崩落しそうな大岩の側を抜ける  右下は、久万スキーランド(12月1日オープン)です

作業道が交わり、登山道を雪が隠しているが、とにかく尾根に向け斜めに登って行く

 

分岐から25分で尾根ルートと合流 再び北面のブナ林を覗きながらゆっくり高度を上げてゆく 

風穴への道を左に分け進むと、十字峠手前で雪化粧された株立ちブナ(3m80cm)

本格的な冬を前にブナ林は越冬準備の時期だけど、早過ぎる根雪に少々戸惑っているかもしれない

辺りには同じような姿のブナが何本か見える 雪の華が咲き、素敵〜



十字峠 此処から皿ヶ嶺山頂までは、あと500mほど

名前の通り、左から竜神平からの道が合わさり、右に六部堂への道が続いている

今年初の霧氷や、深くなってきた雪の感触を楽しみながら、山頂へ向かう

確か山頂手前のこの辺りに三角点(1270.5m)があったと思うんだけど、雪に隠れて見えない



面白嶽の急登は敬遠し、のんびり歩いたので汗もあまりかかずに皿ヶ嶺山頂(1278m)

でも、予定より1時間近くオーバーしてしまい、何時の間にか雲が広がっている

雪が乗ったベンチの側で、立ったまま食事休憩

十字峠手前でお会いした方が、畑野川コースを下り竜神平に出られるというのを見送り

下山しようとしていたら、入れ替わりに3人の方が到着され登山者が絶えません  

皿ヶ嶺は、市街地の郊外にあり手軽に雪山気分に浸れる山です

山頂直下の森に入り、ブナ散策〜♪ 大ブナ(4m20cm)の向こうには、ほっそりした美人ブナが並んでいる

石鎚が見えれば言う事無いんですが・・・残念!雲の中です



吹き溜まりの谷筋を慎重に下り、広々としてお皿の様な竜神平に出る 日が差して明るい〜 

ブナ林を背に愛媛大学山岳会の竜神小屋が建っている

一般登山者の便宜をはかるため、昭和34年10月に建てられた小屋は、山岳部員30人が10日間かけて

六部堂から資材4トンを背負って運び上げるなど、1年半かけて造られたという(2010年夏、リニューアル)

ストックが2本入り口付近に見える、何方かが休まれているようだ

予定では竜神平を横切り、急階段を下って上林峠経由で水の元へ下りる積りだったけど

時間は既に1時を回っている  3時には駐車地点に帰りたいので、風穴経由で下ることにする 



八大龍王が祀られている祠 龍は水の神様、昔は雨乞い行事が行われていたそうです

思い思いに両手を振り上げ、まるで阿波踊りを踊っている様なブナを見上げながら森を抜ける



ベンチの側には、役目を終え土に還ろうとしている通称「ブナ爺」と「ブナ婆」

誇らしげに枝を伸ばし木陰を作っていた頃の姿を思い浮かべ、その長い年月に想いを巡らした



上林の棚田がスポットライトを浴びて輝き、綺麗〜♪

呑気に歩いていたら、ちょっと危なげなところも出て来ました

トラロープが渡されているけど、朝一で歩かれた方は大変だっただろうな



ジグザグと下り手摺が見え出したら、間もなく綿帽子を被ったパワースポット・風穴です

駐車場まで下りて来たら、お祖父さんに連れられた幼い子がそり遊びに興じていた いいなぁ〜



三叉路(右は上林トンネルへ)に水の元への下山口(白い看板の裏)がある

ここからよく整備された登山道を下りてゆく ずっと植林の中で展望は無い

取り付きから10分、夏場にソーメン流しで賑わう水の元に出る

この後は、5回県道を横切りながら駐車地点まで登山道を下ってゆく



1回目、 水の元の車道を横切る(広場に2台駐車)               2回目、下り口はガードレールの右端です



3回目、雪が融け出した車道を横切る    その直ぐ下が4回目、近くの路肩に2台駐車 (写真省略 )

4回目に車道を横切ってから登山道を7分下り、そのままコンクリートの広い作業道に出て5分歩けば5回目(右上の写真)



登山道に入って直ぐ、哀しい言伝えが残る「瞽女石(ごぜいし)」がひっそりと佇む

石碑に刻まれた由来に拠れば、平家ノ残党多田蔵人ノ妻女 ソノ夫ヲ慕イテ此処ニ来タリ
 泣キ暮シテ盲目トナリ遂ニ泣死化石セシト云フ 
尓来此石ヲ瞽女石と称ス (伊予温故録)

地元に残る別の言い伝えでは、昔、上林部落で行き暮れた瞽女が何処にも泊めて貰えず
仕方なく
上林峠を越えようとしたが、此処で飢えと寒さのため倒れ石になったと伝えられる

その当時は、馬も通る街道だったそうだが、今は石ころだらけの狭い道  登山者ぐらいしか通らないのだろう

程なく鉄塔No155の側を通り抜け、農道に出た所が赤柴峠コースとの分岐

後はのんびり歩いて、予定通り3時前に駐車地点に帰り着く

心配していた足は不思議と痛みも無くなり、程よい疲れがあるくらい


登山口までのアクセスが楽で、コースも多様 道標も設置され、雪も楽しめる 

どの山に登ろうか?と迷った時は、皿ヶ嶺 そんな気軽で勝手のいい山でした

(参考文献 「愛媛の山と渓谷 中予編」愛媛大学山岳会編 & 「東温アルプスガイド」東温市観光協会発行)

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