2015年06月07日 ”針ノ木岳慎太郎祭”

大雪渓を登り詰め、北ア大展望の針ノ木峠に立つ


登山口(7:35)〜(8:10)大沢小屋〜(8:30)お祭り広場(9:05)〜(11:10)針ノ木峠(12:00)
(13:00)お祭り広場(13:10)〜(13:25)大沢小屋〜(13:50)登山口(14:00)〜(14:20)駐車場
                                    (6時間45分)


各地で夏山開きが行われる季節になってきた 伯耆大山や九重山も気になるが

今年は少し足を延ばして、「第58回 針ノ木岳慎太郎祭」を尋ねます

針ノ木大雪渓「お祭り広場」で祭典の後、針ノ木峠までの記念登山もあるそうだ

 峠から残雪のアルプス大パノラマを見てみた〜い


出来れば、前日は八方尾根から白馬三山を眺めたかったけど

低い雲が垂れ込め、おまけに6月とは思えないほど寒い

日中は回復しそうにないので大糸線沿線の観光に切り替え、早々に金熊温泉の宿に入り湯に浸かった

目覚めると、すっきりと晴れた気持ち良い朝に、早くも気分は高揚している



朝食用のお弁当を貰い6時前に旅館を出発 登山口の扇沢を目指す 

昨日は一日中雲に隠れていた鹿島槍ヶ岳が、その秀麗な姿を青空に披露している

扇沢駅下の無料駐車場で準備している間、次々と車が着きあっという間に満車状態



扇沢駅前広場で受け付けを済ませてバスに乗り、2,3分で下車(一般車は入れない)

「歓迎 針ノ木岳大雪渓 慎太郎祭」の垂幕がかかる登山口から、篭川沿いを歩き始める

(此処は閉会会場となり、温かいお汁粉の接待がある 下山時は、バスの接待は無く扇沢駅まで歩く)

道沿いに色んな花が咲き始めている 帰りにゆっくり見てみよう



雪解け水の流れを聴きながら、篭川に架かる橋を渡ると、残雪が現れた

実行委員会の方々が整備して下さった登山道を、気持ち良く歩かせて頂きます



左の視界が広がってくると奥に大雪渓が見えてきた この辺りは、例年に比べ雪が多いそうです

歩き始めて35分、ダケカンバやブナの新緑に包まれた大沢小屋着

思ったより早かったけど、どうも夏道じゃなかったみたい 

花数は少ないもののムラサキヤシオツツジや、ミネザクラも雪渓に彩りを添え、祈願祭を祝っている



小屋前の大岩に、日本近代登山先駆者の一人・百瀬慎太郎(1892−1949)のレリーフが埋め込まれている

大正6年、全国でもいち早く登山案内人組合が結成された大町で旅館を営みながら

中心となって登山ルートの整備や山小屋を建てるなど、その生涯を故郷の「岳」に捧げたそうです

今は慎太郎の孫・百瀬暁さんが小屋を守られており、美味しい湧水コーヒーが頂ける



暫く緑の中を進み、大雪渓に下りるとたくさんの方がアイゼンを付けている

小屋から20分弱で、赤石沢出合付近にしつらえられた祭典会場の「お祭り広場」(標高1800m位?)

慎太郎が晩年良く口にしたと言う 「山を想えば 人恋し  人を想えば 山恋し」の垂幕がかかる

左岸の切り立った崖に早稲田大学の遭難記念碑・梵字が彫られています

昭和2年、早大登山部11名が冬山合宿で山スキー練習中に赤石沢で発生した雪崩に巻き込まれて4名が犠牲

碑文は当時早大で教鞭をとっていた歌人(書家でもある)・會津八一の揮毫

「北アルプスの犠牲 針の木峠に遭難せる若き人々を悼みて」(詩/西条八十・作曲/山田耕笮)

北アルプスの 雪の峰々  解けて流るる 春とならば
咲けよ駒草 紅にもえて  若き4人の 霊のために




「お祭り広場」に注連飾りが張られ、祭壇の準備中 

この後、若一王子神社の宮司さんが来られて9時半から安全祈願祭が行われる

神事にお神酒は欠かせません 祭壇に「白馬錦」の一斗樽が供えられます

金蘭黒部の村山杜さんと、大町のネパール料理店「ヒマラヤシェルパ」のラマさんが歩荷されたそうです



辺りをウロウロしながら待っていたけど、祈願祭が始まるまで未だ30分もある

登って行ってる方もいるので落ち着かないが、お祭りも気になる

でも、山の天気は気まぐれ  午後から雲が広がるかもしれないし・・・

やっぱり、青空が広がっている間に針ノ木峠から展望を楽しみたいと、アイゼンを付けて峠を目指す

「のど」を過ぎれば、もう「お祭り広場」が見えなくなるので、その前にズーム  どうやら祭壇も出来上がったようだ



残雪と青空、芽吹き始めたダケカンバの淡い緑 もう言葉もありません

梅雨前線が一時南に弛み、小さいながらも高気圧帯に入った 

梅雨時の晴れ間は特に美しい 昨日の天気を補っても十分余りある文句なしの天気です 

振り返れば、黒部川を挟んで霊山立山に対峙する赤沢岳、鳴沢岳、岩小屋沢岳ら後立山の主稜線

時折雪渓を吹き抜けるひんやりした風が気持ち良い



山スキーの方が気持ち良さそうに滑り降りて来て、あっという間に小さくなった

それにしても、凄い急斜面 転げたら下まで止まりそうにない

雪渓が厚いこの時期は迷わずひたすら直登 ちょっとしんどいけど確実に高度を稼げるので勝負が早い

見上げれば蟻地獄のような斜面の先に青空が近付いて来た  後少しで峠、頑張ろう!



やれやれ、お祭り広場から2時間登り詰めてやっと針ノ木峠(2536m)です

ここは、1584年12月、越中守護大名・佐々成政が家康に会いに行くため秘かに越えた峠と伝えられている

凡そ、登山者しか寄りつかないと思えるこの雪と岩だけの峠が、400年以上前の歴史の舞台になっている・・・ロマンですね

針ノ木岳(2820.7m)から北に延びる稜線の鞍部をズームすれば新越山荘、右に岩小屋沢岳 

奥に白馬鑓ヶ岳、白馬岳 旭岳が覗く もう少し右に、鹿島槍ヶ岳、爺ヶ岳と後立山連峰が勢揃いです



蓮華岳(2798.6m)から南に、北葛岳、七倉岳、船窪岳、不動岳、烏帽子岳と厳しい稜線が続いている

七倉岳のすぐ南の船窪小屋はランプの山小屋らしいです なんともロマンチック、一度尋ねてみたい

馴染みの薄かったこの稜線の遥か先を辿れば北アのシンボル・槍ヶ岳が尖がり、後ろに重鎮・奥穂と前穂が仲良く並ぶ



針ノ木岳か蓮華岳どちらかのピークを踏む時間はありそうだけど、今日中に四国まで帰る予定なので無理せんとこ

小屋南側のベンチに腰掛けのんびり展望を楽しんでいたら、お腹が空いていたのを思い出した

グランパはしんどそうにしていたけどシャリバテだったようだ サンドウィッチでも食べようか



12時、名残惜しいですが、針ノ木岳とスバリ岳に見送られ、峠を後にする

何時もの如くグランパは雪渓の下りは早い 滑るように下りて行く

シリセードの若い女性や、走って下りる子供たち それぞれ雪渓を楽しんでいる



安全祈願祭を終えた針ノ木峠組が列をなして登ってくる (雪渓周辺で植物観察の組もあります)

20人ずつのグループに別れて総勢80人! 今年は天気も好く、例年に無い参加が有ったそうだ

「登りも下りも、しんどいですね〜」

お祭り広場では、残った方たちが宴会中 お顔がいい色です

遠慮なくお相伴にあずかって、「平武漬け」「山姥揚げ」を肴にお神酒を頂きます

 大町山岳会に伝わる塩らっきょうの浅漬け・平武漬けは、慎太郎祭に欠かせないものだとか

冷え取り効果もあり、一粒食べたら300mの馬力が出るそうです

道理で、下山までの足が軽かった事!



大沢小屋手前でアイゼンを外し、登山道沿いの花を楽しみながら下って行く

イワナシやヒメイチゲは、もう終盤かな



蕾をいっぱい付けたサンカヨウがあっちにもこっちにも、全部咲いたら素敵だろうな〜

まぁ可愛いノビネチドリが、早くも咲いています



篭川に架かる橋を渡り閉会会場が近付いてくると、ニリンソウが一面に広がっている 

「お疲れ様〜」と、スタッフの方々の笑顔に迎えられ無事ゴール 

記念のスタンプを押して貰い、美味しいお汁粉を頂いてから、扇沢駅の駐車場へ向かいます

大町温泉郷「薬師の湯」で汗を流し、安曇野「道の駅・松川」でお蕎麦を食べ、「白馬錦」を抱えて帰路につき

日付が変わる前には帰宅出来ました 今回ピークは踏まなかったけど、満足満足の山行でした

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