山に想うU


   
最近お天道様がおかしいですね 梅雨だというのに台風が直撃したり

四国や九州北部より早く、中国地方や北陸地方が梅雨明けしたりと、

予報官泣かせの天気が続いています

太平洋高気圧にすっぽり覆われた夏型は、もう期待出来ないんでしょうか?

山歩きを始めて20年、地元の手軽な山からまがりなりにもアルプスをほんの少し経験した

確かにアルプスは大きいし花も雪渓も綺麗です  でもあらためて四国の山の素晴らしさを思う

スケールが小さいながらもお花畑があるし、岩の山やブナの山もある 

それから、笹に囲まれた癒しの稜線はおそらくアルプスには無いでしょう 

また、麓から登ると、人と山との関わりを垣間見ることも出来る

そんなこんな事を考えながら、山への想いを気の向くままに綴ってみました

 
独標



    2001年10月21日 西穂独標

四国の山を一通り登ったら、中央の山に関心が向くのは自然の成り行きです

日帰り山行8時間くらいでアルプスを味わえる山はないかとガイド本を捲ってみた

西穂独標・・・・その名前の響きに憧れた

独標とは独立標高点(・)のことで、西穂に限ったことではない

地形図を眺めれば方々にあるが、独標といえば西穂というように固有名詞化した貫録がある

もう雪が来てもおかしくない10月下旬、その日は幸い天気が好く、右下に上高地

正面に穂高連峰、左にはずっと奥まで続く山並みを眺めながら段々細くなる稜線を辿った

最後のちょっとしたガレ場を登り、独標(2701m)着 怖じるほどでもなく順調にピークに立つことが出来た

洗練された美しさに酔いながら夢は膨らみ、ガラッと山相が変わる奥穂への稜線は無理としても、

奥穂〜前穂の吊尾根はいずれ歩いてみたいと思ったことでした

北ア入門コースといわれる西穂独標 アルプスの扉を叩いた山として記憶に残っている


一万尺



2005年8月7日 仙丈岳

少しグレードアップして南アの北沢峠へ 今なら小屋泊まりで南北二座をまとめて登るのだろうが、

何分重い山を連荘する感覚がピンと来なかったので、とりあえず仙丈岳(3032.6m)のみ

なぜ仙丈かって? 憧れの一万尺峰だからです 甲斐駒も魅力的だけどちょっと足りません

綿毛になったチングルマや、秋の気配が漂うトウヤクリンドウを見ながら

標高差1000m、東赤石山と同じくらいのアルバイトをこなし頂上に立つと、

南に延びる間ノ岳や塩見岳へと続くダイナミックな稜線に圧倒されました

北岳や甲斐駒あわよくば富士山を見たかったけれど、あいにくのガスで遠望がきかない

でも、四国ではなじみのない雄大なカールを抱えた「南アルプスの女王」に大感動

ザックに「アルプス」をいっぱい詰め込んで頂上を後にした


山上池



2008年10月12日  奥又白池

憧れの穂高 前穂東壁直下標高2500m近いところに突如大きな姿見が現れる

真っ赤なナナカマドを水面に落し、遠くには富士山と南アルプス、八ヶ岳 この上ない贅沢なロケーションです

穂高の秘境と言われるエリアへ足を踏み入れるのは少々冒険だったが、秋空が背中を押してくれました

一周250mほどの水辺はもう晩秋の色、冬はもうすぐそこに隠れ忍んでいる

岩に腰掛け、時間の経つのも忘れ癒しの空間に酔いながら

池面に映る北尾根を眺めていると、5・6のコルの向こうから涸沢が呼んでくれている気がした

奥叉白池に限らず、四国の三嶺、御嶽山、白山の山上池や、火打山、苗場山の池塘など

紅葉やあるいは夏花に彩られ、雲の上に静かに佇む神秘の池

山は、登山者の想像を超えた華やかな景色を提供してくれる






2005年10月16日 瓶ヶ森

真っ青な空の下での山歩き まさに至福のときです

でも画像的にはなにか物足りない そうだ雲です 雲が無いんです

雲にもいろいろあるが、独断と偏見で3分類してみた

@良い雲 主役になれる雲

A悪い雲 なにかと邪魔をする雲

B普通の雲 存在感の無い雲

紅葉の頃、瓶ヶ森林道を走ってみた 稜線を越えて雲が流れてきては林道真上で消えてゆく

滝雲だ! 車を停め瓶ヶ森男山に駆け上がる

北から生き物のように雲が押し寄せ、滝となって流れ落ちている 西黒森山も飲み込まれそうだ

西を見ればもちろん石鎚島が雲の海にぽっかり浮かんでいる

何時もは主役である石鎚山や瓶ヶ森、笹ヶ峰は、今日だけは脇役です

雲は偉大なアーティスト 青い大きなキャンバスにその日限定思い思いの作品を披露する

花、花と下ばっかり見て歩いている登山者をじれったく思っているかもしれません

たまには笹原に寝転んで、羊の数でも数えてみてやろうじゃないか


ウグイス



2014年7月12日 伯耆大山(三鈷峰)

森のBGMはなんといっても鳥の囀りです

知識が豊かなら鳴き声を聞き分けられ山歩きが一層楽しいんでしょうが 残念ながら・・・・

でもこの鳥は分かります 姿で分かるのは他に雷鳥、ホシガラス、コゲラくらいかな

ウグイスは、笹の多い林下や藪を好み、警戒心が強く 声はすれどもなかなか姿は見えません

囀るのはオスで、「ホーホケキョ」が他の鳥に対する縄張宣言で

「ケキョケキョケキョ」が侵入した者や外敵への威嚇だそうです 

スズタケに囲まれた道を歩いていると、ウグイスが付かず離れず鳴くことがある

友好かあるいは好奇心でついてくるのかと思っていたが、威嚇されているんですね

沢山の登山者を前にし、元谷にこだまする程高らかに喉(?)見世するユートピア君

警戒心も無いその大胆なお接待に拍手喝采でした


山名




2009年11月23日 塩塚峰

陽菜、凛、結菜、葵、結愛

蓮 大翔、陽向、陽太、悠真

2014年度赤ちゃんの名前ランキング(明治安田生命調べ)です

子どもの名に親の想いや期待を込めるのは何時の時代でも同じでしょうが、

最近の傾向を見ると、綺麗な漢字を使っているが読みにくい名前が多い 学校の先生の苦労を想像する

読みにくいといえば、全国にはこんな山があるそうです

一尺八寸山(みおうやま)、爺爺岳(ちゃちゃだけ)、月出山岳(かんとうだけ)、

雲母峰(きららみね)、岨巒堂山(しょらんどうやま)

日本異様難読山名コンテストで選ばれたベスト5です

9位に徳島県の鰻轟山(うなぎとどろきやま)が入っている これも難読です

かっての伊予と阿波との塩の交易路に聳える山・塩塚峰(1043.4m)は、

お椀を伏せた様な山容が、雪化粧すれば塩を盛った塚のように見える

伝説(狭義)や言い伝えを山名に込めて残したいという人々の想いを探りながら歩いていると

山歩きが一層面白くなってくる


テン泊



瓶ヶ森キャンプ場

テント担いでアルプス稜線を足の向くまま気の向くまま 行き先は雲に聞いてみよう 

山小屋の喧騒をよそに、時間と空間を独占できるテン泊は、私には夢の世界でした

写真は50年ほど前の瓶ヶ森のテン場です レトロなテントが並んでいる

テントのほとんどは家型や屋根型、布地はナイロン(?)、色は黄色、支柱やペグは金属

重いテントを担いで上がり、張るのにも一苦労だったそうです

10年前、一度テン泊をしてみたいとテントを買い上高地へ とりあえず徳沢で設営 組み立ても自立式で簡単です

翌日は軽装備で涸沢まで テン場には色とりどりのテントの花が咲いている でもグランドは石ころだらけ 

徳沢は草地で柔らかかったが、こんな所ではよう寝ません 少々窮屈でも小屋泊まりのほうが絶対楽よ

あれっきりテントは物置に仕舞ったまま、未だに出番はない


選択



2010年5月15日 東赤石山

どの山も大抵頂上へのルートは何本かある どの道を選ぶかは登頂の楽しみの一つです

初めての山はガイド本やネットであらかじめ情報をインプットしておくが、それでも分岐の標識はありがたい

一旦山に入ればサバイバル、ギャンブルや人生と同じく標識が無いからこそ面白い

という人がいるかもしれませんが・・・・ 

四国屈指の花の山・東赤石山は、登山口から45分ほどで木組みの橋を渡るとすぐ分岐標識がある

どっちを選択しようか? 何時もの事ですが、その場の気分で決めるお気軽夫婦登山です

たかが登山コースの選択、たいした問題でもないが、ことこの国の重要な選択といえば話が違ってくる

殆どの人が、そっちの道は明らかに危ないと言っているのに

リーダーが、みんなの意見を聞かず、満足な説明も無しに「この道しかない」と言い張っている 

重大事故が起こってからでは遅い 翻意を促すことは出来ないんでしょうかねぇ 


一本道



2011年7月16日 天狗塚

牛の背中に延びる一本のグリーントレイル

道は広いより少しぐらい狭い方がいい 道は真っ直ぐより少しぐらい曲がっている方がいい

道は下りより少し上っているほうがいい 道は見通しが悪いより周りが見える方がいい

登山道もいろいろです 思いつくまま書いてみました

剣山系の三嶺・天狗塚界隈は、四国一ともいわれるミヤマクマザサに覆われた稜線が続いている

とりあえずあの白い雲を目指し、緑の海に漕ぎ出してみよう

中央の山に比べて四国の山が誇れる事は多くは無いが

石鎚山の鎖とこの笹原は、何処にも負けないと(一人で)思っている

「いちずに一本道 いちずに一ッ事」(相田みつお)もいいけど、時間もたっぷりあるし

たまには登山道を外し、日本一の笹原を牛さんの様に道草を食いながら歩いてみませんか?


里山



2008年1月19日 梶ガ森

登山の第一の目的は頂上に立つこと これにはおそらく異論はないでしょう

四国の中央部にある梶ガ森(1400m)は、電波塔の山となり、頂上まで車道がつけられている

足を地につけないまま頂上というのも味気ないので、

登山というドラマの起承転結をじっくり楽しもうと、麓のJR太田口駅から登ってみた

通勤風の方と挨拶を交わし、鎮守の森やお堂を見ながら生活の匂いのする坂道を上がって行く

徐々に集落がまばらになり、棚田の間を抜け振り返ると日本のふるさととも言える原風景が広がっている

私的には、この奥山(深山)に入る手前の人と動物が共生している里山エリアが好きです

耕作放棄地や荒れた植林地を見ると時代の流れを感じ、寂しいこともありますが・・・・・・

時間を忘れてゆっくり眺めていたいけど、虚空蔵菩薩が待っている頂上はまだ遠い

麓から歩けば、1200m近い標高差の中に、里山、奥山のロマンがいっぱい詰まっている


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