2017年01月29日  ”二上山”


ログはイメージ図です


万葉集に詠われる大伯皇女の歌

うつそみの 人なるわれや 明日よりは
    二上山(ふたかみやま)を いろせ(弟)とわが見む

悲哀の皇子・大津皇子が葬られている二上山

やっと尋ねることが出来ました


山口神社(8:55)〜(9:10)祐泉寺〜(9:30)岩屋峠〜岩屋〜(9:55)雌岳〜(10:15)雄岳(10:25)
(10:40)
馬ノ背〜(11:00)祐泉寺〜(11:15)山口神社              (2時間20分)



奈良県葛城市と大阪府南河内郡太子町にまたがる、二上山

双耳峰の 優美な姿が美しい

県道30号線から左折し、牡丹寺としてで有名な當麻寺へ向かう

當麻寺近くの山口神社駐車場に車を停めて出発

烏谷口古墳 出土した須恵器や土師器により7世紀末に築造と推測される

大津皇子が葬られているのかも?



舗装路の突き当りが祐泉寺 道は「岩屋峠ルート」と「馬ノ背ルート」、二手に分かれている

丁度下りて来られた地元の方が「岩屋峠ルートが良いですよ」 それじゃと、岩屋峠を目指す



祐泉寺から30分で、岩屋峠 先行されていた団体さんが休憩されていた

此処は奈良飛鳥と難波を結ぶ古代の官道「竹内街道」の峠

往時はたくさんの人々が行き交ったことだろう

大阪側に少し下れば、「国史跡 岩屋」がある

岩屋は奈良時代に造られた石窟寺院跡で、中に三重石塔が残っている



 雌岳手前から金剛山系を眺める こんもりした山が、葛城山かな?

雌岳から、薄靄の大和盆地を見下ろす

優美な姿の畝傍山、左に見えるのが耳成山、香具山



日時計のモニュメントがある雌岳山頂(473.9m)

雌岳と雄岳の鞍部(馬ノ背)には、トイレ、売店(不定期)がある

毎年4月23日に行われるという「二上山岳のぼり」の時は、売店も賑わうのかもしれない

江戸時代より続く「岳のぼり」とは、岳(二上山)からの水で稲作を行っている岳郷48ヶ村の人々が

「嶽の権現さん 雨降ってたもれ」と歌いながら登拝し、祈雨を願う年中行事だったが

水の心配が無くなってからはお弁当を楽しむ花見登山、そして今は清掃登山となっているそうだ



鞍部から登り返せば、二上山・雄岳山頂(517m)

戦国時代、河内の守護代・木沢長政によって築城された二上山城跡(楠正成築城とも伝わる)

山頂より東へ数分進んだところに、大津皇子二上山墓(宮内庁管轄)

大津皇子謀反を記した史料は「日本書紀」「万葉集」「懐風藻」があるが

その記述は実にあっけない

赤鳥元年(686)9月9日、天武天皇が飛鳥浄御原宮にて崩御後、皇后・持統が「称制」となる

この時、皇太子である草壁皇子は24歳、大津皇子は23歳で共に朝政に参画いていたが

天皇崩御から1ヶ月も経たぬ10月2日、大津皇子が謀反の疑いで捕えられ、翌3日に処刑された

謀反の疑いによる突然の刑死を心静かに受け入れた大津の、格調高い漢詩が哀れを誘う

金鳥臨西舎 (金鳥西舎に臨み)
  鼓声催短命 (鼓声短命を催す) 
泉路無賓主   
(泉路賓主無し)
       此夕誰家向  (この夕べ誰が家にか向かう)

大津皇子の妃であった山辺皇女(天智天皇の子)は

悲しみのあまり裸足で走って行き、大津皇子の屍に身を投げて殉死したと伝わる

『容姿は立派で、器宇峻遠(度量が深い)、幼い時より学問に精通し、長じては武芸をたしなみ

さらに、小さいことに拘らず礼節をもって接し、多くの者に支持されていた』と、

懐風藻に記されているように大津皇子は人望があったようだ

天武天皇と大田皇女(天智天皇の子で持統の姉)を父、母とする二人の兄弟、大津皇子と大伯皇女

大伯皇女が伊勢斎宮の任を解かれ都に帰って来た時に詠んだ、弟を想う歌に心打たれる

神風の  伊勢の国にも  あらましを
                  なにしか来けむ 君もあらなくに

(伊勢の国にいればよかったものを、何しに都へ来たんだろう 弟はもうこの世にいないのに)

見まく欲り  わがする君も  あらなくに
                 なにしか来けむ  馬疲るるに

(逢いたいと思う弟がもうこの世にいないのに、何しに来たんだろう。馬が疲れるだけなのに)

大津皇子の屍を二上山に移し葬る時、大伯皇女の哀しび傷む御歌

うつそみの 人なるわれや 明日よりは
                   二上山(ふたかみやま)を いろせ(弟)とあ(吾)が見む


鞍部まで戻り、沢沿いの馬ノ背ルートを下りながら

大津皇子が詠んだ今生の別れの歌を口ずさみ、その潔さを想った

  ももづたふ 磐余の池に 鳴く鴨を
                     今日のみ見てや 雲隠りなむ 


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