2012年04月01日 二並山(石鎚東遥拝所)

石鎚、古の参拝道を歩く 足跡を探しながら石鎚神社本社から一の鳥居まで



GPSトラックログ (カシミールソフト使用)
この地図の作成に当たっては国土地理院長の承認を得、同院発行の数値地図50000(地図画像)、及び数値地図50mメッシュ(標高)を使用
承認番号 平18総使 第582号


加茂川河口(7:00)〜(7:50)石鎚神社社務所〜祖霊殿前登山口(8:25)〜(9:35)二並山(9:45)
(10:25)
58番鉄塔(10:40)〜(11:15)一の鳥居〜(13:10)加茂川河口      (6時間10分)



二並山って? そうなんです、余り馴染みの無かった山なんです

先週 王子社参拝道を歩いて初めて知りました 石鎚神社本社の後ろに聳える大切な山だってことを

二並山は、石鎚神社から天狗岳に至る長い参拝道の最初の試練であると同時に 石鎚山の東遥拝所でもある(正確にはあった)のです

参拝者はこの聖地に立ち遥か彼方の石鎚山を眺めた時、敬虔な気持ちを抱くと同時にこれからの旅程に一抹の不安を感じただろう

かつては多くの参拝者が歩いたこの道も、交通機関の発達とともに歴史の中に埋もれようとしている

道の状態に多少不安はあるが、今日は本社から二並山に登り、一の鳥居まで歩いてみます



何時もは国道11号線加茂川橋を渡り南に曲がるけど、今日は北へ向かいます

堤防の車道脇に車を停め、加茂川河口の水面にタッチしてスタート

石鎚山北面に降った雨は、県下有数の清流となり28kmを流れ此処に辿り着く

200余年前西条藩により造成され、以降何度か整備された禎瑞地区大干拓地の中の真っ直ぐな道を歩く

正面の山麓に石鎚神社 その奥が今日目指す二並山 天気が好ければ後ろにどっしり構えた石鎚山が見えるのですが・・

穂が出始めた麦畑や、道端が肌色に染まるほどの土筆を見ながら進んでゆく



長い農道歩きの終点はJR石鎚山駅 昭和4年7月2日に開業したこの駅から天狗岳を目指した人も多かったのだろう

駅前の国道11号線を横切り、朱塗りの大鳥居を潜って石鎚神社の境内に入ってゆく

参道脇には咲き始めたばかりの桜の古木が並んでいる 4月5日がさくら祭りだそうだ

大天狗、小天狗に迎えられ、神門を潜る



社務所で参拝道の状況をお訊ねすると、権祢宜 十亀雅史さんが丁寧に教えてくれた

「417.8mの三角点があるところが東遥拝所の二並山です

祖霊殿前の鳥居を潜り、横駆けしながら尾根に出て本殿裏からの道に合わされば

尾根通しに白いペンキ印を辿り、笹が出て来だしたら間もなく小高い丘が見え、其処が頂上です

尾根に出るまでに一か所分かり難いところがあるが、右に振れば本殿裏からの道(こちらの方が良いらしい)に逃げられます

この26日に歩いたばかりなので邪魔な小木は伐ったけど、バラが隠れているので気を付けて下さい」

お礼を言って、いざ、鳥居を潜れば心は修験者の気持ち



早速、腰くらいまでの木を払いながら歩く 道はなんとなく判る

平成16年の災害で崩壊した所は左側が切れ落ちているが、歩くのに支障は無い



自然林に入ると、段々踏み跡が不明瞭になり、蔦やバラが絡み合って道を塞いでいる

背をより低くしてバラに引搔かれながら潜り抜けると、真下に松山道のトンネル



日当たりの良い所は草が茂って道を見失いそうだけど、兎に角尾根を目指して前進あるのみ

尾根手前で薄い道を横切る 本殿裏からの道はこれかな?



尾根に出て木に塗られた白ペンキを辿って行くと、右に分かれる分岐

何処へ行くんだろう? 気になるが尾根を外さないように真っ直ぐ進む



段々道が荒れてきて、あらら、倒木が通せんぼ  よっこらしょっと跨いで行く

身体が隠れそうな羊歯の海を泳ぎながら「ハックション」急いでマスクを取り出す こんな埃っぽい道は好きじゃない



十亀さんたちが開いてくれた道 鎌は持って来たけれど、こんなに茂っていたらとてもじゃないけど歩けんわ

聞いた通り笹が出てきた、頂上はもう直ぐかな?



前方に小高い丘が見え、最後の急斜面を駆け上がれば、二並山(417,8m)

石鎚東遥拝所として賑わったのも遥か昔の話、今は周囲の植林が成長し残念ながら展望は無い

「石鎚山旧跡三十六王子社 十亀和作著」に拠れば、頂上からの展望を次のように記している

「いまし方あえぎ乍ら登ってきた北方をふり返ってみる時、このなだらかな丘陵の麓に石鎚本社の社叢を

みいだすことが出来る 十一号線を東西する車の動きも手にとる様だし、・・・・・・・

内海は凪いで青い、はるかにむかいの広島や岡山の山容まで見える程の快晴である

むきを変えて東方に峰を数えると、川向う遠くから八堂山、伊曽乃の丘、高外木山、丸山など・・・・・」

昭和46年11月26日に歩いた時の記録です

今日は、展望を余り期待してなかったが、ただ一つ東側の兎之山地区を一周してして流れる逆様川を、真上から見てみたかった

西條誌に、「この兎野山の逆様川は、黒瀬山より来る水、当村の西北をめぐり、また、めぐり南に流れる

南が高いとは、総体の地勢をいう事にて、一所については、北が高い地もあるべし・・・・」と記されている



暫く休んで一の鳥居の建つ黒瀬峠を目指す、植林の中はあまり日も差し込まず藪は薄い

頂上から7分で分岐 此処を右折して下って行く



378mピークは南を巻く

やっと鉄塔保線路と合流したのに、スイッチバックしている箇所で、近道かなと薄い踏み跡のあるトラバース道を直進

ところが、次第に道が消え藪も濃くなり四苦八苦、急斜面を掻き分け掻き分け登ってやっと鉄塔保線路に復帰する

やれやれ何時ものことながら、急がば回れでした



四電四国中央中幹線58番鉄塔 道中唯一の展望所、折角だからちょっと休憩しようや

黒瀬ダム湖の向こうで「風の森」が、頂稜を雲に隠した石鎚を従え悠然と構えている

のんびり展望を楽しみながら筍ご飯を食べていたら、何処からか話声が聞こえ下の保線路にヘルメットが動いている

突然現れた人に驚いたが、「こんにちは〜」 相手の方がもっとびっくりしたかもしれない



MTBを楽しむ親子と暫し談笑、スタイルも決まった兄弟は今度5年生と3年生だとか 

お兄ちゃんが勢いよく漕ぎ出し、そのあとを追いかけるように弟が、そしてお父さんが颯爽と走っていった

その後、また若者のグループとすれ違う 登りは大変そうだけど、此処はMTBの人気コースなんだろう

鉄橋を渡り直進すれば一の鳥居 左斜面に付けられた道は正面尾根の向こう側にある光昌寺と森岡神社へと続いている



11時15分県道に出た 左が黒瀬峠 狭い県道はお遍路さんを乗せた大型バスやマイカーが行き交っている

石鎚神社から此処まで3時間足らず 多少の藪と格闘しながらもなんとか歩き通すことが出来た

先週、此処から今宮道の登山口河口(こうぐち)までの王子社を巡ったばかり

また、河口から今宮道を経て天狗岳までは6年前に歩いたから、これで加茂川河口から天狗岳まで繋がったことになる

さて、帰りはどうしよう 何時までも石鎚方面を眺めながら満足感に浸っている訳にもいけない

予定では、路線バスでJR西条駅へ、其処からスタート地点までタクシーで帰ろうと思っていたけれど、黒瀬峠発は12時29分

 「歩こうか」 そんなに疲れてもいないしという事で、県道を歩いて加茂川河口を目指す



緩やかな下りなので快適な車道歩きだけれど、松山道の向こうに見える海までは遠いなぁ

先週みたいに後ろから来た車が停まってくれるなんていう偶然は・・・無いよね

高速道路手前で、遍路道に逸れ国道11号線を渡ると、目の前に黄色い川が流れている

風は未だ冷たいが、心がほっこり温かくなる景色に包まれて暫しコーヒータイム

堤防の桜が咲きだせば、お弁当を広げる人で賑わいそう



振り返れば、石鎚神社本社の上にお椀を伏せたような二並山が見送っている

あら、 畦道に早くもレンゲ〜♪  いつの間にか雲が退き、石鎚が雄大な姿で聳え立つ

この辺りの人は、毎日石鎚を眺められて何とも贅沢な風景の中に住んでいるんだなぁ  



水の都西条名物「うちぬき水」 市内の何処を掘っても加茂川の伏流水が湧いてくる

雄大な石鎚山に見守られ、そして豊富な美味しい水、羨ましい環境だわ

加茂川河口に駐車した車に帰ってから石鎚神社社務所にお礼に伺い、無事に下山した事を告げて帰路につく



霊峰石鎚山の別当寺として開創された 四国八十八ヶ所霊場第六十四番札所石鉄山前神寺 

真言宗石鉄派総本山で、石鉄修験道の根本道場でもある 石鎚大権現様にお参りしてから帰ろう

今日の暖かい日差しで開花したのか、参道沿いの桜がやっと1分咲き

これから暫くは、お遍路さんの疲れを癒す事だろう


藪漕ぎ覚悟でいざ来てみれば、思ったほどは酷く無くて一寸拍子抜け(内心はホッですが)

もう歩く信者さんもいなくなって遥拝所の役目を終えたとはいえ、二並山から全く展望が無かったのが心残りでしたが

ともあれ、2週続けて古の石鎚参拝道、車道歩きも多かったけれど充実の山行でした

今まで何気なく聞いていた太鼓の音も、十亀さんが打ち鳴らしていると思えば

これからは親近感が湧いてくる ありがとうございました

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