天空の稜線に遅い春、霊峰を彩るツツジとサクラ土小屋
(7:05)〜(8:05)東稜分岐
〜(9:25)南尖峰
(10:20)〜(10:50)弥山
(11:20)〜(13:15)土小屋
5月も半ばを過ぎ、梅雨の足音が聞こえそうになって来ると
スプリングエフェメラルで目覚めた春の山は、そろそろ緑濃い初夏の山へと衣を替えてゆく
ところが石鎚山は標高2000mの貫録か、やっとツツジやサクラが咲き始め遅い春を迎える
今日は久し振りに東稜から天空の稜線を目指し、西日本一遅い「石鎚山の春」に浸って来ます
瓶林を走り、7時前土小屋着 早朝のお山の空気にはどんなサプリメントも敵わない 深呼吸すれば5歳は若返り、身も心も50代
駐車場にはまだ10台程だが、今日は天気も好いし石鎚や岩黒、筒上、手箱を目指してどんどん上がって来るだろう
準備をして、7時過ぎに歩き始める 足に優しいなるい道をゆっくり高度を上げてゆく
鶴ノ子ノ頭頂上直下に鮮やかなアケボノツツジが見える 期待出来そう〜♪
鶴ノ子ノ頭を右に巻き、芽吹き始めたブナ林をゆく
見上げれば、爽やかな青空〜♪
グリーンシャワーが降り注ぐ登山道をルンルンランラン、足取りも何時になく軽い
少し勾配を増した笹斜面を過ぎ、見上げると尾根がピンクに輝いている ちょっと寄り道
朝の柔らかい光を全身に受けて咲き誇るアケボノツツジ 突如、フランス民謡 「踊る少女」の曲を思い出す
朝の光〜♪ 浴びて少女は〜♪ 花よりも美しい頬の輝き〜♪朝の光〜♪ 浴びて少女は〜♪ らららららら らららららら 踊る〜♪あちらこちらのアケボノに誘われて寄り道ばかりしていたらなかなか歩が進まない
歩き始めて1時間で、やっと東稜分岐に到着 ベンチで小休止後、尾根に取り付く
相変わらずの急登を頑張れば、何時しか岩黒山を超える高さになり
瓶ヶ森を背負って、朝日を浴びながら笹原をゆく
ゆく手を見上げれば、初夏を思わせる爽やかな青空〜 気温は思ったほど低くない
1500m付近は、春過ぎて 夏来るらしの風情か・・・春のみならず「初夏石鎚」も体感
剣山を背に咲いたばかりのアケボノが、朝日をいっぱい受けて初々しい
岩だらけの厳つい霊山の登山道でほんのり柔らかいピンク色は、一服の清涼剤です
矢筈岩の間のU字底の急斜面・通称笹滝を、笹を掴んで滝登り
途中で振り返れば、石鎚山系の名峰・瓶ヶ森が手招きしている
「そんなにしんどい目をせんでも、こっちは駐車場から20分 雄山周辺の稜線は、サクラで真っ白よ〜」
「後からお邪魔しま〜す」
笹滝を登りきり、シャクナゲのトンネルを潜れば目の前に岩の塊・南尖峰が迫って来る
此処は東稜コースの中間点 大好きな場所で展望を楽しみながら、暫し休憩
どれどれシャクナゲの按配は? ウ〜ン、蕾はあまり付いてないなぁ
でも、白骨樹を取り囲むシャクナゲはまずまずの蕾〜♪ 今年も楽しめそうです
さぁ 此処からが後半戦 高度感たっぷり急傾斜の岩尾根が始まります
左は、南沢に落ちてゆく笹斜面 南尾根(鋸尾根)とのジャンクションを目指して東稜を詰めてゆく
ジャンクションに飛び出せば、正面に中沢を挟んで墓場尾根 奥には二ノ森や五代ガ森が顔を出す
見上げれば、鬼面のような岩塊が威圧感をもって目の前に立ちはだかる
十数年前、初めてここに立った時は、「こんな所登れるん?」と、只々圧倒されながら眺めたのを思い出す
ゴジラの背の様な岩尾根から成就コースを眺める
荒々しい尾根も、斜面を彩るシャクナゲが咲き出せば少しは華やかで優しい感じになるだろう
さぁ このコースもそろそろクライマックス 気合を入れて東稜終点・南尖峰に向かう
中沢(左)に吸い込まれないよう慎重に蟹のヨコバイを渡り、木の根や岩角を掴みながら直上すればゴールだが・・・
終点直下に最後の難関、垂直に立ちはだかる3m程の壁・蟹のタテバイが待っている
まぁ、此処が無かったら面白くないけど・・・
短い手足を思いっきり伸ばしながら、僅かな岩のデッパリを頼って攀じ登ってゆく
続いて上がって来たグランパが、「墓場尾根のアケボノの様子見てくるわ」 「未だ咲いてないんじゃない パ〜ス」
南尖峰最高点は東稜分かれからもう少し天狗岳寄りだが グランパは墓場尾根目指し急斜面を下ってゆく
墓場尾根より大砲岩 アケボノツツジは、かなり咲いてはいるが未だ蕾のほうが多い
尾根がピンク色に染まるには、もう少しかかりそうだ
大砲岩の上を通り、尾根末端近くまで下りて来た
墓場尾根の名の由来となった柱状節理の岩柱に上がり、巨大なエンペラの様な南尖峰の壁を見る
岩黒、筒上、手箱をバックに咲き始めたアケボノ 二ノ森を従え得意げなアケボノ
ルンルン気分で墓場尾根を歩いたが、南尖峰への登り返しはかなりきつい
一方、二ノ森と対峙し哲学的思想に耽っていたグランマー(笑)
古代インドでは、人生百年を「学生期」「家住期」「林住期」「遊行期」の4つに分けて考えられている
其れに当てはめてみるならば、今は「林住期」 登山に例えれば、そろそろ山を下り始める頃に当たるのだろう
そんな事を思いながら目の前のアケボノツツジを見やっていたら、ふと、先日読んだ本の一節が浮かんで来た
八ヶ岳が好きな男がいた。59歳になったある日癌が発見され手術をしたが厳しい状況に陥っていた。
厚生施設で指導員をしている彼は言った。 「毎年、施設の子どもたち十数人を連れて八ヶ岳に登るんです」
うざいといってなげやりになる子どもたちを鍛え、山歩きの準備にとりかかる。
数か月の特訓で無くなっていた筋肉が強化され若者らしい身体が戻って来る。
そして、決行。ぶうぶう文句を言っていた子どもたちが急峻な山道を登るにつれ、次第に口数を減らし黙々と歩き出す。
自分の人生を振り返っているのかもしれない。足もとの険しい道を見つめながらこれまで歩んできた十数年を省みる。
文句を言わなくなった子どもたちの額から汗がしたたり落ちる。いい汗だ。
そしてクライマックス、頂上から見える景色は雄大である。大きな自然の中で生かされている自分、大きな宇宙の中に存在する自分を感じる。
大きな自然の中で、人を傷つけたり、人に裏切られたり、これまで繰り返されてきた事がちっぽけな事だと気づく。
「子どもたちが変わる。でも・・・三割かな。下山してまた勉強しなおして自分を変えられる子は三割。
だけど、この山で感動したことは立ち直れない子どもたちの心にもきっと残る。そう信じます。」子どもたちのために闘ってきた男の顔は厳しく、ストイックな空気を持っていた。 (いいかげんが いい 鎌田實著)
人と人の繋がり、人と自然の繋がりの中で、いい汗をかけば心も身体も元気になれる
小一時間も経った頃、岩陰からひょっこりグランパが現れた
天狗岳へ向かっていると、前方からやって来たのはFさん 「お久し振りです」と、暫く立ち話
「東稜かね 何時も元気やねぇ 墓場はどうやった? 昨日の朝はガスで何も見えんかったんよ」
今日も泊りなのかな?・・・近々、写真集を出されるとか、楽しみです
石鎚山天狗岳(1982m) 岩の上には「第三十六 天狗嶽王子社」が祀られている
頂上直ぐ下のアケボノツツジは開花待ち
早く咲いて新芽を出さなくちゃ、あっという間に夏が過ぎ秋風が吹いてくるよ
そうなんです 5月下旬に芽吹いた天狗稜線の木々は、4ヶ月を待たずして9月下旬には紅葉が始まる
歳をとったら一日が、一ヶ月が、一年が早く過ぎ去ると言っても、今から錦秋の心配はちょっと気が早いですが・・・
天狗岳を後にして弥山に向かう
花芽は少ないものの登山道傍らのアケボンがチラホラ咲き出して、可愛い〜♪
石鎚山から西の山並みを背に満開のイシヅチザクラ うつむき加減の小さく白い花が愛らしい
イシヅチザクラは、タカネザクラとキンキマメザクラとの自然交雑種、愛媛県の絶滅危惧2類に分類されているそうだ
ユキワリザクラで始まった桜の季節も、ソメイヨシノ、エドヒガン、ヤマザクラと高度を上げ
このイシヅチザクラでフィナーレを迎える 桜巡りも早や3ヶ月近く、狭い四国も縦に長いです
えっ? まだ桜があるって? 銅山峰のツガザクラ あれは桜ではないでしょう いや〜、桜かなぁ?
待ちかねた春の日差しを謳歌するように咲くサクラやツツジを楽しみながら細い岩稜を行く
弥山直下の大きな鎖を手繰れば、沢山の登山者が寛ぐ弥山の頂上広場
弥山から見れば天狗尾根はやや赤味を帯び始め、遅い春を迎えようとしている はたしてピンク色に染まるのかしらん?
山頂小屋の方の話では、先週の季節外れの霧氷でアケボノの蕾がかなり落ちたとか まぁ、勿体ない!
山頂小屋でおでんを頂き弥山を後にする 二ノ鎖巻道のアケボノも、ちょっと淋しそう
剣山を背に咲くアケボノをズーム
折角の青空が、何時の間にか薄雲に覆われている
登山道沿いのアケボノツツジやイシヅチザクラをのんびり見ながら、土小屋に帰って来た
今日は、天空の稜線のアケボノには少し早かったけれど、サクラは十分満足〜
ツツジやサクラが盛期を過ぎると次はシャクナゲが咲き
続いてイワカガミ、ユキワリソウ、ミヤマダイコンソウなど林床も賑やかになって来る
自然が作ったシナリオに従って、短い夏が終わるまでハードな日程で其々が役柄をこなしてゆく
ツツジやサクラの開花とともに今年も又、標高2000mの舞台でドラマの幕が開けられた
今日のもう一つの目的は、「サクラと霊峰」
石鎚を従えて咲く瓶ヶ森のイシヅチザクラに期待して、緑に染まる瓶林を走る
満開でした〜♪ 欲を言えば日差しが欲しかったけど・・・贅沢、贅沢
十分満足して、帰路に着きました
歩いた道 ホーム