2013年03月03日  ”寒 峰”

妖精が目覚める前に 大ブナを求めて大展望の名山へ


GPSトラックログ (カシミールソフト使用) (電池切れでブナから頂上は手書き)
この地図の作成に当たっては国土地理院長の承認を得、同院発行の数値地図50000(地図画像)、及び数値地図50mメッシュ(標高)を使用
承認番号 平18総使 第582号


P出発(8:20)〜(8:40)福寿草群生地〜(9:25)栗枝渡三角点〜(10:10)大ブナ(10:50)〜(11:10)頂上(11:50)(12:20)コル
〜西寒峰北斜面のブナ探索〜(12:50)栗枝渡三角点(13:05)〜(13:30)福寿草群生地(13:45)〜(14:00)P着    (5時間40分)

寒峰と言えば福寿草 でもまだちょっと早いんです 

中旬頃には、雪の中から覗くカナリヤ色の輝きを求めて登山者で賑わうんでしょうが・・・

2日前に春一番が吹き一時的に冬を呼び戻したけれど、3月にも入れば冬型も根性はありません

今日は早速気圧配置も弛み登山日和♪  寒峰峠付近の大ブナの薄化粧に期待して、2週続けて祖谷へ



早朝は冷え込んだだろうし、未だ誰も走って無い林道は嫌な気分 助手席に座っていても肩が凝る

登山口手前の路肩に無事駐車 住吉神社付近も停まってなかったから、今日は一番乗り〜

3月に入ったばかりで福寿草には早いけど、誰も来ないって事は無いよねぇ

20分程で福寿草群生地 

雪がたくさん残っており咲いている気配は無い、下山時に覗いてみることにして通過

やや緊張する急斜面をトラバースすると直ぐ尾根に出る



ガチガチに凍った急な尾根は滑りそうなので、少し道を外して適当に締まった残雪の中を歩く

傾斜が緩やかになると栗枝渡三角点(1415.1m 南寒峰)

山友のてんきちさんが歩いているかなと、三角点で小休止しながら天狗塚、牛ノ背を眺めていたら

何と、エントツ山さんが南面から天狗塚を目指していたそうだ

1424mのコブを越え尾根道を行く 右前方に冬枯れの木々の間に目指す寒峰が見え隠れする



1518mピーク(西寒峰)のトラバース道は、まだ残雪が深いが、適度に締まっているので壺足の感触が心地よい

登山道はもっと下の方だけど、昨夜の新雪が乗った真っ新な斜面に小さな踏み跡を残しながら進んでゆく

だだっ広いコルに出る 寒峰→の大きな標識を過ぎれば大ブナのエリアは近い



登山道沿いにどっしりと構えている大ブナ、貫録です

周りの低木が葉をつけたらあまり目立たないかもしれませんが、胴回りは圧倒されるほど大きいです

大きな瘤と、向こう側は樹肌一面に付けた苔が光り、気の遠くなるほどの年輪を感じます

目通り4m50cm 寒峰の主と呼んでもいいかもしれません



登山道を逸れ左の窪地に下り、二重山稜の尾根に駆け上がると

左4m46cm、右3m35cmの夫婦ブナが

ストーンリバーさんと一緒に歩いた4年前と同じように、霧氷で着飾り歓迎してくれました

今回が4度目の寒峰、いづれも条件抜群 寒峰は相性の良い山です

ただ初回は、二人とも登山靴を車に積むのを忘れて運動靴で雪道を歩いた思い出深い山でもあります



「気の早い登山者が来るから、慌てたわ そろそろ賑わい出す頃だから しゃきっと背筋を伸ばしとかんと」

目を瞑り、耳を澄ますと 大ブナどうしの会話が聞こえてくる様な気がした



元気の良いブナが沢山いるが、勿論これからが危ぶまれるブナも

夫婦ブナの近くで、大岩を抱き朽ちかけた爺ブナ

裏から見たら幹はほぼ空っぽ それでも真っ直ぐ伸びた2本の枝にはびっしり霧氷が付いている

その近くに、雪の重みに耐えかねたのか、無残にも真新しい折れ口を晒しているブナ

いづれ枝から幹へと腐朽が進み大地に還るのだろう 人目に付かない森の奥で、静かに世代が更新されてゆく



特等席で思うがままに枝を広げ青空を独占するブナ 3m75cmのウエスト以上に存在感がある

霧氷で着飾ったブナは、醍醐の桜に劣らず高貴で美しい

一足お先に、白い森の中で花見です 熱燗でもあればいうこと無ですが・・・

開花から葉桜になるまで何日もかかる桜に比べ、

霧氷は一日で開花、満開し、惜しげも無く散ってゆく その儚さが「いとあわれ」です



登山道に復帰して頂上を目指す

振り返れば、手前が大ブナのエリア、西寒峰の斜面を覆う霧氷の森は、吉野の千本桜に負けず美しい



さぁ、あと一息で頂上です

寒峰(かんぽう1604.6m))は、平家の落人が通った山といわれ、その山名の綴りが相俟って

どこか哀しく、寂しい山というイメージだけど今日は違います

頂上からは、これぞ文句無い360度大展望 南東には三嶺(1893.4m)から牛ノ背のたおやかなライン



北東に伸びる白い稜線を辿って行けば、矢筈山(1848.5m)を盟主とする祖谷山系の山々

祖谷山系と剣山系を分けて流れる祖谷川の原流域は勿論、四国山岳の東の雄・剣山(1954.7m)

三方を2000m近い山々に囲まれた祖谷地方は、外部から容易に人を寄せつけない秘境だったというのも頷ける



少し落合峠寄りのコブまで行って頂上を振り返る 日差しは柔らかく、完全に春山の雰囲気です

そういえば木々には霧氷こそ付いているが、心なしか新芽は膨らみ僅かに赤味を帯びているように見える

西を見れば、祖谷入口で睨みを効かす阿吽象の様に聳える兄弟峰の中津山と国見山

空は真っ青だけど、赤石山系や石鎚山系は靄の下 あの靄はひょっとして今話題のpm2.5?

今年の春は、花粉と黄砂にpm2.5が加わり、三本の矢が西から飛んでくる



帰路は周回コースも浮かんだが、大きなブナも無かったと思うし福寿草も気になるのでピストン

気温はあまり高くないのでまだ霧氷が残っている

下山途中高知からだという10人くらいの団体さんとすれ違う 周回をされるそうです

今日会ったのはこの一組だけ 来週あたりから賑やかになってくるのだろう

「あのブナは4mあるなぁ」とグランパが窪地に下りてゆく 惜しい!3m73cmでした

右へ左へと忙しいグランパは、はぁはぁと言いながらも目は生き生きしている

私は勿論ブナは好きだけど、ひょっとしてグランパの方がもっと好きなんじゃない?



西寒峰のトラバース道に入る前に、天気も好いのでもうちょっとブナの森散策

コル周辺にも素敵なミズナラやブナの森が広がっている 日差しをいっぱい受ける仲良し双子ブナ

親ブナの周りにはブナの幼木が何本か育っている

微笑ましい親子ブナを見ていると、この森の将来に不安は無い



吹き溜まりに立つブナ 黒ずんだ胴体をしたブナは雪に映えて美しい

強風が吹き抜けるコルで、力強く大地に根を張る逞しい姿に感動すら覚えます

サイズは? それがあまりの美しさに見惚れて測るの忘れちゃいました また機会があれば・・・


1時前、栗枝渡三角点  時間も早いので、のんびりコーヒータイム

さぁ、後は下るだけと軽快に雪道を駆け下っていたら

急傾斜の尾根道でグランパが木の根に足が乗り、今日も転んだ・・・

「この靴よう滑るわ」 (靴の所為じゃ無いの!足下よく見んからよと、グランマ心の声)



群生地の雪も、朝よりは融けている

奥の方の状態は判りませんが、雪が残る遊歩道近くで数輪咲いていました

一番花を見ると、3年は長く山歩きが出来そう 嬉しい〜♪


今日は、真っ青な空に輝く霧氷、林床では期待薄だった福寿草も彩を添えてくれました

そしてなにより久し振りに4m超の大ブナに出会えたこと 何時になく納得の山行でした

これほどの爽快感や満足感を味わえるのも、 ブナがあるからこそ!

心身ともにリフレッシュ出来る大ブナの森は、魔法の森かもしれません 


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